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マクガイヤーチャンネル 第429号 2025/4/30
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おはようございます。マクガイヤーです。

いよいよゴールデンウィークですね。皆さまいかがおすごしでしょうか?

自分はついこの前御蔵島に冒険旅行に行ってきたので遠出する予定は無いのですが、せっかくなので飯能のハイパーミュージアムかゴジラTHEアート展のどちらかに行ってみようかと考えています。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇5月5日(月)19時~「リブート版『新幹線大爆破』は何にケンカを売っているのか?」

4/23より『新幹線大爆破』がNetflixで配信されます。1975年に公開された同名作の「リブート版」で、監督を樋口真嗣、主演を草彅剛が務めます。

樋口真嗣は常々「人生の中で3本の映画を選べと言われたら『新幹線大爆破』と『日本沈没』と『太陽を盗んだ男』を挙げる」と発言してきましたが、『日本沈没』に続いて自分のオールタイムベスト映画を草彅剛主演でリメイクすることになります。

オリジナル版の『新幹線大爆破』は押井守が「日本映画が日本の戦後にケンカを売った最後の映画」と評する通り、政府・国鉄・時代……といったものに対する批判精神と、おカネをかけたセットや特撮を駆使したエンターテイメントが両立した傑作でした。果たしてリブート作がどのような作品になっているのか? 未だ発表されていない犯人役キャストや、JR全面協力(オリジナルでは国鉄が協力を拒否)が気になるところです。

そこで、樋口真嗣の過去作を振り返りつつ、リブート版『新幹線大爆破』を解説するような番組を行います。

ゲストとして映画ライターの竹島ルイさん(https://x.com/POPMASTER)と編集者のしまさん(https://x.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



〇5月26日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2025年5月号」

お題

・時事ネタ

・岸辺露伴は動かない 懺悔室

・ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング

・サスカッチ・サンセット

・ノスフェラトゥ

・かくかくしかじか

・リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界

・クィア QUEER

・パディントン 消えた黄金郷の秘密

・サンダーボルツ*

・爆上戦隊ブンブンジャーVSキングオージャー

・異端者の家

・片思い世界

・アマチュア

・ベテラン 凶悪犯罪捜査班

・サイレントナイト

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。





さて、本日のブロマガですが、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』とニュータイプについて書かせて下さい。


●『ガンダム』は最初の『ガンダム』の語り直し

先日の放送で、『ガンダム』シリーズの多くは最初の『機動戦士ガンダム』の語りなおしであり、一種の批評であるということを話しました。

最初の『ガンダム』が聖書なら小説版『ガンダム』は旧約聖書、『ガンダムSEED』は『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』……ではなくて『ライフ・オブ・ブライアン』……みたいなことを語ったのですが、この前『異端者の家』とい映画を観たら、厄介おじさんになったヒュー・グラントがモノポリーを使ってほとんど同じようなことを言っていて顔が真っ赤になりました。

つまりどの「ガンダム」も、幾つかの国や組織の戦争や戦闘を通して少年や青年(時に少女)が成長するビルドゥングスロマンあるいは戦記であり、父や母が作ったロボットに乗り込み、たいてい仮面を被って素性や本心を隠したライバルが登場し、時にその親族である王女と庶民的であるけど快活な幼馴染のダブルヒロインであり、エキセントリックな性格をして巨大なMAに閉じ込められたように乗る女性を通して人生を変えるような体験をし、最後は日常に戻ったり戻らなかったりする……という話のバリエーションなわけです。バリエーションなので多少の違いがありますが、この「差分」によって新しい魅力が生まれたり、誰もがその「差分」を認識するであろうことを前提として批評性が生まれるわけです。


●ニュータイプとは

この視点で『ガンダム』シリーズをみると、ニュータイプ(とそれに類するもの)の描かれ方が大きく変化していることが分かります。

宇宙に進出した人類の認識力や直感力が拡大し、テレパシーや千里眼や未来予知を合わせたような能力が身に着く、時空を超えた非言語的コミュニケーションにより他人同士が分かり合えるが、他人同士が殺し合う軍事兵器としても応用される……というのが最初の『ガンダム』における「ニュータイプ」という能力や概念でした。このニュータイプ、全43話中第38話でいきなり登場し、その後の5話でニュータイプという用語や能力がばんばん使われ、概念や定義が急速に確立されました。どう考えても話をまとめるために生まれた設定なのですが、当時のニューエイジ思想に影響されたSF作品(『デューン』や『スター・ウォーズ』)や、ロボットアニメの主人公が持つ超能力設定(『ライディーン』に顕著)を踏まえると、納得でもあります。高度経済成長と学生運動とヒッピーカルチャーを経て、宇宙での冒険旅行と宇宙戦争と物質文明に対する疑問が出会った……というわけです。

ニュータイプの設定は小説版と劇場版三部作で整理され、続編である『Z』『ZZ』『逆シャア』『F91』では主要なテーマの一つとして扱われました。


●ニュータイプの描かれ方の変化

一方で、初の外伝漫画『MS戦記』や外伝アニメ『0080』『0083』『08小隊』といった富野が参加しない『ガンダム』では、ニュータイプの能力も概念もほとんど描かれず、時には用語すら登場しないということが長く続きました。『0083』はモデルグラフィックスの連載企画『ガンダム・センチネル』のアニメ化が企画の基ですが、そのモデルグラフィックスで「俺たちの『ガンダム』にニュータイプは必要ない!」という大きな見出しの記事やインタビューが載っていたことを鮮明に覚えています。そういえば『オネアミスの翼』のヒロイン リイクニの謎の宗教信仰設定は「『ナウシカ』は好きだけど宮崎駿のエコロジーは理解できない」という一つ下の世代の違和感をキャラクターとして表したものでした。富野や宮崎の一つ下の世代、80年代の若者たちのニューエイジ思想への違和感が「『ガンダム』でニュータイプを描かない」ということに繋がったのでしょう。一方で、富野が監督した『V』では人心掌握するための宗教や大量破壊兵器としてのニュータイプ(サイキッカー)の活用が描かれましたが、まるで数年後のオウム真理教によるサリン事件を予期したかのようです。

富野が参加しないテレビシリーズである『W』ではニュータイプは登場せず、『X』ではニュータイプが否定されるという展開になりました。少年漫画的要素を(再)導入した『G』での「明鏡止水」が最もニュータイプの概念に近かったというのは時代の皮肉と評して良いのではないでしょうか。


その後、『SEED』のコーディネーターや「種割れ」、『00』のイノベイターや超兵、『AGE』のXラウンダーといった設定はニュータイプの再解釈ですが、必ず遺伝子操作やら突然変異やらGN粒子の作用やら人類が進化によって手放した野性的な能力の再獲得やらといった(疑似)科学的説明がつき、ニュータイプとその源流であるニューエイジ思想からオカルトをできるだけ脱臭しようという試みがみられます。最初の『ガンダム』をリスペクトするためにニュータイプ様の設定導入はしたいけど、オカルトからは離れたいというわけです。これは『ガンダム』シリーズにおけるニュータイプの再解釈が新たな段階に入ったことを意味しますが、『UC』でのニュータイプの再解釈が最終的に「オカルト」と評されたことは、これまた時代の皮肉と評するほかありません。


近年、またニュータイプの描かれ方が変化しました。『サンダーボルト(第一部)』のリユース・サイコ・デバイス、『鉄血』の阿頼耶識システム、『水星の魔女』のGUNDフォーマットは、不可逆で外科的な変化を人体に加え、人間性や人間としての尊厳を奪うことで人間を兵器の一部とする技術です。この技術により人類が種として「進化」したり精神的に進歩したり分かり合えるようになったりする可能性は全く無く、単に兵器としての人間の有用性が高まるだけの技術です。

ニュータイプが存在せず強化人間だけが存在するアナザーガンダム世界、と言い換えれば分かりやすいかもしれません。

これら非人間的な技術により搾取される存在は、末端の若年兵士や非正規兵である子供たちです。ここには、ブラック企業に代表される行き過ぎた資本主義や新自由主義に安い労働力として使い潰され、お題目だけは立派な思想やイデオロギーにやりがい搾取され、人間性や人間としての尊厳を奪うまで全人格労働を強いられる現代の若者たち――という時代の空気が込められているように思います。


●鶴巻和哉にとっての「ニュータイプ」

最新の『ガンダム』である『GQuuuuuuX』ではニュータイプそのものが復活しました。最初の『ガンダム』というか本家UC世界とはパラレルワールドの関係にあたり、ニュータイプの研究を行うフラナガン機関は存在するものの、非人道的な人体実験で強化人間を育成する連邦のニュータイプ研究所は(いまのところ)存在しないようです。ニュータイプ同士が出会うことによりゼクノヴァと呼ばれるサイコミュ事故が起きる可能性があるものの、今のところ人間性や尊厳を奪うようなものでは無さそうです。


今後の『GQuuuuuuX』でニュータイプはどのように描かれるのでしょうか?

ヒントとなるのは『フリクリ』の物質転送能力、そして『トップをねらえ2!』のトップレス能力でしょう。

『フリクリ』の主人公ナオ太は興奮したり追い込まれたりすると額から角が勃起した性器のように伸び、ロボットに変化し、敵とバトルします。後にこれは右脳と左脳の差を利用した物質転送能力であることが説明されます。

『トップをねらえ2!』のトップレス能力は一部の少年少女のみがつかえる特殊能力です。その能力は物質転送、遠距離操作、テレパシー等多岐に渡りますが、一定の年齢に達すると能力は失われ、これは「あがり」を迎えると表現されます。能力を発揮しているときは頭が発光し、敵である宇宙怪獣(変動重力源)もトップレスと類似する能力を持っています。

これら物質転送能力やトップレス能力は、言ってしまえば思春期の想像力のアナロジーです。鶴巻和哉は神林長平の少年少女だけがテレバシー能力を使える暗黒青春SF『七胴落とし』に強く影響を受けたことをインタビューで語っています。

そしてトップレス能力は、どうも鶴巻和哉にとってのニュータイプ能力や概念の理解らしいのです。


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鶴巻監督が、トップをねらえ2!の時、トップレスの能力についての説明で、ニュータイプみたいな力 とおっしゃって居た事が

笑 今になって私を混乱させて居ります。


フラタニティっ


https://x.com/yukalyric/status/1886260580350103669

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続く『龍の歯医者』では、「歯医者」たちは戦争における一種の職能集団として扱われます。ガイナックスは常に身の回りの状況を作品世界に導入することで作品のクオリティやリアリティを保ってきましたが、この流れから、龍の歯医者たちは「龍」という作品を扱うアニメーター集団であるガイナックスやスタジオカラーである――という理解に至ります。


マチュがキラキラや地球といった「別の世界」に強く憧れていること、現状の生活に満足していないけれどどうやって抜け出せばいいのかも分からないこと――これらは『フリクリ』や『トップをねらえ2!』と共通するテーマです。一方で、一種の職能集団として描かれ、「裏切者」が出そうなソドンやカネバン有限公司は『龍の歯医者』を想起させます。


おそらく『GQuuuuuuX』ではアニメーターの想像力のアナロジーとしてのニュータイプ能力が描かれるのではないでしょうか。

今後の『GQuuuuuuX』が楽しみで仕方がありません。




番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。

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