おはようございます。マクガイヤーです。
ゴールデンウィークも完全に終わったわけですが、皆さん如何おすごしでしょうか?
自分は布団を干したりシーツを洗ったりするタイミングがつかめず、このまま梅雨になったらどうしようと考えております。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇5月26日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2025年5月号」
・時事ネタ
・岸辺露伴は動かない 懺悔室
・ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング
・英雄傳
・サスカッチ・サンセット
・ノスフェラトゥ
・かくかくしかじか
・ガール・ウィズ・ニードル
・リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界
・クィア QUEER
・パディントン 消えた黄金郷の秘密
・サンダーボルツ*
・KIDDO キドー
・今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
・爆上戦隊ブンブンジャーVSキングオージャー
・異端者の家
・片思い世界
・アマチュア
・ベテラン 凶悪犯罪捜査班
・サイレントナイト
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇6月14日(月)19時~「『MaXXXine マキシーン』と『サブスタンス』とエイジズムと80年代女性映画(仮)」
映画『MaXXXine マキシーン』が6/6に公開されます。『X エックス』『Pearl パール』に次ぐ3部作の完結編であり、前2作に続き、タイ・ウェスト監督、ミア・ゴス主演のホラー映画です。前2作と同じく、女性の生きづらさをテーマとしている映画になっているようです。
また、映画『サブスタンス』が5/16に公開されます。『REVENGE リベンジ』でレイプ・リベンジ・ムービーというジャンルに新風を吹き込んだコラリー・ファルジャ監督が送るボディ・ホラー映画です。女性監督が撮るボディ・ホラーということで、ルッキズムやエイジズムを批判する内容になっているそうです。
両作とも2020年代の諸問題を映し出すような映画であることは間違いありません。
そこで、『MaXXXine マキシーン』と『サブスタンス』二作について語りあうような放送を行います。
ゲストとして映画ライターの竹島ルイさん(https://x.com/POPMASTER)と編集者のしまさん(https://x.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
〇6月30日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2025年6月号」
・時事ネタ
・ヴァージン・パンク Clockwork Girl
・フォーチュンクッキー
・かたつむりのメモワール
・LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族
・MOON GARDEN ムーンガーデン
・F1 エフワン
・28年後...
・メガロポリス
・ルノワール
・JUNK WORLD
・殺しの分け前 ポイント・ブランク
・リライト
・ドールハウス
・フロントライン
・プレデター 最凶頂上決戦
・リロ&スティッチ
・We Live in Time この時を生きて
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、本日のブロマガですが、ニコ生でもお話したリブート版『新幹線大爆破』の問題についてまとめさせて下さい。
●リブートとは?
そもそも何故Netflix版『新幹線大爆破(2025)』はリメイクではなくリブートと銘打たれているのでしょうか?
一般的な解釈では、映画のリブートとは「過去の作品を基に新しい解釈や設定で物語を語りなおし、全く新しい映画として構築し直すこと」を意味します。この意味で「過去の作品の設定やキャラクターなどを(ほとんど)そのままとして、改めて映画化する」リメイクとは異なります。リメイクの場合は、モノクロフィルムがカラーになったり、俳優が変わったりしますが、設定やキャラクターだけでなく物語もほぼそのままという場合が多いです(旧作を鑑賞済みの観客に訴求するためにラストのみ変更したりします)。
たとえば劇場版ドラえもん第1作『映画ドラえもん のび太の恐竜』と『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』とはリメイクの関係性にあります。声優が変更されたり、最新の学説が取り入れられたり、終盤の展開が若干異なったりする(のび太たちが自分たちの力だけで日本にたどり着く)等の違いがありますが、物語はほぼそのままです。
一方で、『バットマン』や『スパイダーマン』といったアメコミ人気作品は何度も映画化されていますが、それらはリブートの関係性にあります。どの『バットマン』映画もバットマンやロビンが登場し、ゴッサムシティを主な舞台としていますが、それらの解釈や語られる物語は作品ごとに異なります。言い換えれば、作品の核となる、最も大事なテーマやコンセプトのみを活かして、時代や状況に合わせた形で映像化するのが映画のリブートです。
リブート版『新幹線大爆破(2025)』は旧作『新幹線大爆破(1975)』と同じく新幹線に一定速度を下回ると爆発する爆弾が仕掛けられますが、それ以外は全く異なります。舞台は東海道・山陽新幹線ではなく東北新幹線で、下りではなく上り線あり、出てくるキャラクターは全員別人です。
更に、リブート版『新幹線大爆破(2025)』は旧作の続編でもあり、前作登場人物の関係者も出てくるのですが、これは『ゴジラ(1984)』や『ゴジラ2000 ミレニアム』が第1作の『ゴジラ(1954)』の続編であるのと同じ構造であるといえます。また、リブート版の監督である樋口真嗣は『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』といった過去の有名特撮作品のリブートである『シン』シリーズに多数参加していますが、リブート版は『シン・新幹線大爆破』であるともいえます。
●オリジナル版『新幹線大爆破(1975)』の魅力
この『新幹線大爆破(2025)』、リブートとしては大きな問題があると考えるのですが、その前にオリジナルである『新幹線大爆破(1975)』の魅力について説明させて下さい。
実録路線に行き詰った東映が、新たな路線としての日本産パニック映画として企画したのが『新幹線大爆破(1975)』でした。当時、ハリウッド製作の『大地震』や『タワーリング・インフェルノ』といった限界状況でのパニック大作映画が世界的にヒットしており、その日本版として日本にしかない新幹線を舞台にしたパニック映画として企画されたのです。この時点では純粋なエンターテイメント大作を目指していた筈でした。
様々な事情により高倉健がキャスティングされた頃から企画が変質していきます。60年代の任侠映画ワンパターン量産体勢を経て、ヤクザ役に辟易していた高倉健(1972年には「高倉健蒸発騒動」を起こしています)が『新幹線大爆破』の脚本をみせられ、運転手役ではなく犯人役ならギャラ半分でもいい(ただし成功報酬契約をプラス)と出演を決めたところから話が変わってきます。
スター中のスターである高倉健が演じるならと、犯人の人間像が膨らんでいき、高度経済成長から取り残された町工場の社長が時代に反撃を試みるという濃厚な背景が付け足されました。二人の仲間は沖縄から集団就職で上京した若者と学生運動くずれです。第一次オイルショック、沖縄の本土復帰、連続企業爆破事件、売血、ドヤモンの戸籍……当時の空気を濃厚に反映していたわけです。
「おれたちは見苦しい、みっともない、どうしようもない生き物だからこの仕事始めたんじゃなかったのかい?」
という台詞で結びつき合う犯人グループの三人に、時代が詰まっています。
また、当時の東映といえば「不良性感度」でお馴染み反権力・反体制の映画ばかり作っていたわけですが、「大爆破」というタイトルに難色を示した国鉄から撮影協力を断られたことが東映スタッフの士気を高めたと共に、反権力・反体制意識をよりいや増していったのではないでしょうか。新幹線運転司令室の資料を得るために日本で無名の外国人俳優をドイツの鉄道関係者に仕立てて見学させ、司令室を盗み撮りしてセット作製用の資料を得たエピソードは今や伝説(のコンプライアンス違反)ですが、このようなスタッフの雰囲気がフィルムに影響を与えないわけがありません。
結果として出来上がったのは、新幹線が爆破するかもしれないというサスペンスが次第に犯人が捕まってしまうかもしれないというサスペンスにスライドしていき、最終的に爆弾を仕掛けた犯人を演じる高倉健が捕まって欲しくないと観客が念じてしまう、奇妙な、しかし圧倒的に面白い映画でした。
映画の前半では千葉真一演じる青木運転士が「新幹線を停めるな」という理不尽な指令を出した宇津井健演じる倉持指令長に不満を爆発させます。昔のSLなら話は単純で、飛び降りれば済む話だったと嘆息する青木に対し
「その通りだよ青木君。いま、新幹線の科学技術と管理方法が試されているんだ。つまらん感情に動かされるんじゃない」
と説得する倉持ですが、この台詞は象徴的です。
高度経済成長を経て、日本は確かに豊かになりました。その代わり、人間はより体制に管理されるようになりました。豊かさから零れ落ちる人たちも少なからずいます。
前半では運転士を管理していた倉持も、後半ではより上位の存在に管理されていることが明白になります。爆弾がもう一つ仕掛けられている可能性を無視し、て新幹線を停めたり、新幹線は停まっていないことにして犯人をおびき出す作戦に不満を爆発させた倉持は、最終的に国鉄を辞職します。辞職により体制に反旗を示したわけです。
観客が目撃することになる青木や倉持の変化は、最終的に犯人グループ三人への共感に繋がっていくことになります。最後の最後で父をかばう息子や、あろうことか警察という権力に射殺される展開に、映画を面白くするためならなんでもやる作り手の迫力すら伝わってきます。
つまり、当時の日本の繁栄の象徴だった新幹線が爆破するかもしれないというパニック・サスペンスと、爆弾を仕掛けるしかなかったはぐれ者たちへの哀悼という、相反する二種のテーマの両立こそが、『新幹線大爆破(1975)』最大の魅力です。
押井守が『映画50年50本』で「日本映画が日本の戦後にケンカを売った最後の映画」と評しているのも、納得というものです。
●リブート版『新幹線大爆破(2025)』の問題
それでは、リブート版『新幹線大爆破(2025)』はどうなのかというと、新幹線のサスペンス部分はよくできています。よりサイズの大きい模型とCGを併用し、迫力満点の新幹線アクションは見ごたえたっぷりです。
また、新幹線に関わる者が立場を越えて協力し、職業人としての責任を全うする姿も美しいです。
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(スポーツ等で)才能豊かな主人公を見るたび「自分にはできない」ともやもやするんです(笑)。それに対して、「仕事」は才能に依存せず、真面目にやれば誰でも結果を残すことができ、誰もがヒーローになることができる
(キネマ旬報 MAY 2005)
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と樋口真嗣はインタビューで語っていますが、おそらく中高生時代から特撮現場を見学し、職業人と関わることで熟成された価値観が、遺憾なく披露されているといって良いでしょう。
問題は、何にケンカを売っているのかという点です。もしかすると、ケンカを売ることを放棄してしまったのではないかという疑念さえあります。
以下ネタバレ
リブート版には沢山のご都合主義がありますが、そのほとんどは問題ではありません。旧作も大量のご都合主義がありましたが、それでも映画の迫力で押し切る力がありました。
たとえばリブート版では、犯人がどうやって爆弾を仕掛けたのか分からないという問題がありますが、映画のテンポが速いので大半の観客は気づかないのではないでしょうか。
犯人が女子高生という点も、自分は問題ではないどころか慧眼だと思いました。当時四十代半ば、男盛りを越えて哀愁が漂いだした高倉健に匹敵する俳優がいない以上、犯人を年配の男性としても仕方がありません。最も遠い女子高生とするのは、これ以上ないというくらいのナイスアイディアです。
しかし、その犯人の動機を「DV父親への恨み」のみとするのは、かなり厳しいです。「新幹線は憎き父親の象徴」という台詞がありますが、父親を殺せばそれで済む話ですし、実際殺します。この時点で犯人の動機は解消はずです。もっといえば、爆弾を新幹線に仕掛ける理由がありません。友人たちは皆優しそうですし、彼女が学校で疎外されいじめられているような描写もありません。
おそらく、事件を支配する最重要人物が女子高生という設定は、同じく樋口真嗣が関わった『ガメラ3』やドラマ版『MM9』を継承しているのでしょう。女子高生の内面が理解不可能な一種のモンスターとしての表現は『ダークナイト』のジョーカーを参照しているのでしょう(最後、一種のトロッコ問題をつきつけるのも『ダークナイト』と同様です)。
しかしこれが上手くいっているかというと、まったくそうではありません。女子高生に共感する観客は誰一人いないのではないでしょうか。『ダークナイト』のジョーカーが、「モンスター」でありつつ現実で事件を起こす人間まで現れたのとは対照的です。
押井守の『勝つために戦え!〈監督篇〉』は『ローレライ』と『日本沈没』後に上梓された語り下ろし本ですが、樋口真嗣に対し、日本のリドリー・スコットになれるのに周囲に気を使いまくった結果「自分の映画」を作れないという指摘がなされています。
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もちろんそれは大人の事情ってやつなんだけれど、言ってみれば役者の事務所に気を使い、配給会社に気を使い、スタッフにも気を使い、気を使いまくった映画なわけだ、二本とも。
なのに、監督自身が納得していない。わかりやすさを優先したために、絵のリアリティを、映画としてのリアリティを失った。作り物に絶対必要な、やってはいけない地雷を踏んじゃったってさ、本人も認めているんだから。
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リブート版は旧作と異なりJR東日本の協力を得られました。車両基地での撮影や、実際に新幹線を走らせての撮影が可能になったわけですが、これと引き換えに脚本面での「気づかい」や忖度が、本作が抱える問題の遠因になったのではないでしょうか。
●犯人の動機
本作は4/23に配信されました。自分は勝手に、リブート版は福知山線脱線事故(2005年4月25日発生)を何かの形で取り入れるのではないかと思っていました。犯人は脱線事故の家族で、日勤教育やJRや公共交通システムに対する疑問を爆弾テロの動機とするのではないかと。見知らぬ者が職業人として協力し責任を全うする姿は美しいが、その犠牲になった者がいる――というような話になるのではないかと思ったのです。
JRには様々な問題があります。リニア新幹線は未だ実現していません。ちょっと古いですが、国鉄民営化では様々な「犠牲」が出ました。JR各社のセクショナリズム――不仲にまつわる諸問題も、最終的に乗客が引き受けています。
これら諸問題をリブート版が反映しても良かったはず、いや、反映するべきでした。JRが協力した結果不可能となったということであれば、国鉄が協力しなかった結果名作となった旧作の志をリブート版は捨ててしまったということになります。
昨年、テレビ局製作にも関わらずAmazonにケンカを売った『ラストマイル』という映画がありました。制約が多かったであろう『ラストマイル』の方が良く出来ていたのは、作り手の覚悟や志が違っていたということになるのではないでしょうか。
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