記事へ戻る りゃんさん のコメント りゃん 今回の孫崎さんの文章にはいろいろ疑問点があるので、思わず、あさ、スマホから書き込んでしまいました。 さて、米国の戦略家たちは米国の政策を批判しているわけですから、「NATOの東方拡大の責任は米国にある」という結論がそもそもの立論にあらかじめ内包されています。孫崎さんもその立論に依拠しているので、その内包の影響を受けているように思います。 しかしこれは米国の戦略家による理論的なものであり、客観的に検証されたものではないことに注意が必要です。米の戦略家はあたりまえですが、米の政策のために議論しています。米の「敵」は中なので、露とはコトをかまえないようにしよう、という議論などはまさにそういう議論です。しかし日本人が同じ議論をする必要はありません。 実際にどうだったかというと、2019年、当時のポロシェンコ大統領は、NATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に記載する憲法改正法へ署名しました。このときポロシェンコは 「「今日、私たちは、ロシアの顔色を伺うことはしない。私たちは、自分が今後どこへ向かうのかにつき、プーチンに許可を求めることはしない。私たちは、自らの道を歩み、自らの安全保障、主権、領土一体性をどのように確保するか、自分たちで決定を下していくのだ」と強調した。」 ということです。 https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/2643688-poroshenko-da-tong-ling-lu-qin-lue-kai-shinian-jing-guono-te-bie-guo-huinite-jia-meng-lu-xianni-guansuru-xian-fa-gai-zhengni-shu-ming.html こうなる背景には、ロシアによるクリミア侵略(2014年)があったことは明らかでしょう。 また現在、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟が現実的なものとして取りざたされていますが、これもロシアによるいま現在のウクライナ侵略を直接の契機としていることは誰の目にも明らかです。 つまり、客観的には、「NATOが東方拡大してくるからプーチンは仕方なくウクライナを侵略した」のではなく、「プーチンがウクライナを侵略してくるようなヤカラだから、NATOが東方拡大する」のです。宇都宮けんじが「NATO拡大に弾みをつけているのはロシア自身の行動だ」というとおりです。 また、米国の戦略家たちの議論には、小国が出てきません。これは彼らの議論がそもそも大国以外を国際政治のプレーヤーとして扱っていないからです。そして孫崎さんの議論にも小国(たとえばポーランドとかバルト三国)が出てきませんが、これも孫崎さんが戦略家たちの議論に依拠しきっているからです。実際には、NATO加盟は強制されたものではなく、いまのフィンランド等をみても明らかなように、小国のほうから加盟を願っているのです。ウクライナにしても同じで、独仏はウクライナのNATO加盟には賛成していなかったし、米も消極的でした。小国がなぜNATOに加盟したくなるのか。そこが問題なのではないでしょうか。 小国がNATO加盟しなくてもすむような政策を、ロシアはソビエト崩壊後とり続けていたかどうか。まさにこの点の検証が客観的観点からは必要なのではないでしょうか。 No.4で書いた「設定」については、孫崎さんがツイで現在の設定を明らかになさっています。 https://twitter.com/magosaki_ukeru/status/1518007355266715648 孫崎さんは当初と変化がないとおもっていらっしゃるようですが、 「東部」「自決権」「停戦」というあたりは、わたしには当初とは微妙にかわっていると見えます。いや、そういうことを言いたかったんだ、とおっしゃるのでしょうけれども。 しかしそれでも、ウイグルのときにはたかだかと掲げていた「内政不干渉」が今回ひとことも出ない理由のご説明はなさっておられません。 なお、「米に落とし込まれて戦争においこまれたのだ」という議論は、もともと日米戦争について右寄りがしているものです。わたし自身は、欧州での戦争勃発後の「因果関係としては」、その面は多分にあるとおもっているし、そういう趣旨でここに書いたこともあります。 しかし1,因果のはじまりをどこに持ってくるかという問題。たとえば満州事変までさかのぼってみたら米からはどうみえるか。2,たとえ追い込まれていようと、最後は主体的に開戦を決意したのだという、ある意味矜持にも通じる問題。(ロシアの民族性からはこのあたりはあまり問題にならないのかもしれません)。 この二点に注意しないと、陰謀論の泥濘にとりこまれるだけだとおもってもいます。 No.17 31ヶ月前 Post このコメントは以下の記事についています 寄稿:孫崎享「ウクライナ問題―「糾弾・制裁」論の危うさー孫崎享4000字、、執筆了3月9... 孫崎享のつぶやき 元外務省情報局長で、駐イラン大使などを務めた孫崎享氏。7月に発行された『戦後史の正体』は20万部を超えるベストセラー、ツイッターのフォロワーも13万人を突破。テレビや新聞が報じない問題を、日々つぶやいている孫崎氏。本ブロマガでは、日々発信。週1回別途生放送を発信。月額100円+税。【発行周期】日々。高い頻度で発行します。 » このブロマガへ
りゃん 今回の孫崎さんの文章にはいろいろ疑問点があるので、思わず、あさ、スマホから書き込んでしまいました。 さて、米国の戦略家たちは米国の政策を批判しているわけですから、「NATOの東方拡大の責任は米国にある」という結論がそもそもの立論にあらかじめ内包されています。孫崎さんもその立論に依拠しているので、その内包の影響を受けているように思います。 しかしこれは米国の戦略家による理論的なものであり、客観的に検証されたものではないことに注意が必要です。米の戦略家はあたりまえですが、米の政策のために議論しています。米の「敵」は中なので、露とはコトをかまえないようにしよう、という議論などはまさにそういう議論です。しかし日本人が同じ議論をする必要はありません。 実際にどうだったかというと、2019年、当時のポロシェンコ大統領は、NATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に記載する憲法改正法へ署名しました。このときポロシェンコは 「「今日、私たちは、ロシアの顔色を伺うことはしない。私たちは、自分が今後どこへ向かうのかにつき、プーチンに許可を求めることはしない。私たちは、自らの道を歩み、自らの安全保障、主権、領土一体性をどのように確保するか、自分たちで決定を下していくのだ」と強調した。」 ということです。 https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/2643688-poroshenko-da-tong-ling-lu-qin-lue-kai-shinian-jing-guono-te-bie-guo-huinite-jia-meng-lu-xianni-guansuru-xian-fa-gai-zhengni-shu-ming.html こうなる背景には、ロシアによるクリミア侵略(2014年)があったことは明らかでしょう。 また現在、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟が現実的なものとして取りざたされていますが、これもロシアによるいま現在のウクライナ侵略を直接の契機としていることは誰の目にも明らかです。 つまり、客観的には、「NATOが東方拡大してくるからプーチンは仕方なくウクライナを侵略した」のではなく、「プーチンがウクライナを侵略してくるようなヤカラだから、NATOが東方拡大する」のです。宇都宮けんじが「NATO拡大に弾みをつけているのはロシア自身の行動だ」というとおりです。 また、米国の戦略家たちの議論には、小国が出てきません。これは彼らの議論がそもそも大国以外を国際政治のプレーヤーとして扱っていないからです。そして孫崎さんの議論にも小国(たとえばポーランドとかバルト三国)が出てきませんが、これも孫崎さんが戦略家たちの議論に依拠しきっているからです。実際には、NATO加盟は強制されたものではなく、いまのフィンランド等をみても明らかなように、小国のほうから加盟を願っているのです。ウクライナにしても同じで、独仏はウクライナのNATO加盟には賛成していなかったし、米も消極的でした。小国がなぜNATOに加盟したくなるのか。そこが問題なのではないでしょうか。 小国がNATO加盟しなくてもすむような政策を、ロシアはソビエト崩壊後とり続けていたかどうか。まさにこの点の検証が客観的観点からは必要なのではないでしょうか。 No.4で書いた「設定」については、孫崎さんがツイで現在の設定を明らかになさっています。 https://twitter.com/magosaki_ukeru/status/1518007355266715648 孫崎さんは当初と変化がないとおもっていらっしゃるようですが、 「東部」「自決権」「停戦」というあたりは、わたしには当初とは微妙にかわっていると見えます。いや、そういうことを言いたかったんだ、とおっしゃるのでしょうけれども。 しかしそれでも、ウイグルのときにはたかだかと掲げていた「内政不干渉」が今回ひとことも出ない理由のご説明はなさっておられません。 なお、「米に落とし込まれて戦争においこまれたのだ」という議論は、もともと日米戦争について右寄りがしているものです。わたし自身は、欧州での戦争勃発後の「因果関係としては」、その面は多分にあるとおもっているし、そういう趣旨でここに書いたこともあります。 しかし1,因果のはじまりをどこに持ってくるかという問題。たとえば満州事変までさかのぼってみたら米からはどうみえるか。2,たとえ追い込まれていようと、最後は主体的に開戦を決意したのだという、ある意味矜持にも通じる問題。(ロシアの民族性からはこのあたりはあまり問題にならないのかもしれません)。 この二点に注意しないと、陰謀論の泥濘にとりこまれるだけだとおもってもいます。 No.17 31ヶ月前 Post このコメントは以下の記事についています 寄稿:孫崎享「ウクライナ問題―「糾弾・制裁」論の危うさー孫崎享4000字、、執筆了3月9... 孫崎享のつぶやき 元外務省情報局長で、駐イラン大使などを務めた孫崎享氏。7月に発行された『戦後史の正体』は20万部を超えるベストセラー、ツイッターのフォロワーも13万人を突破。テレビや新聞が報じない問題を、日々つぶやいている孫崎氏。本ブロマガでは、日々発信。週1回別途生放送を発信。月額100円+税。【発行周期】日々。高い頻度で発行します。 » このブロマガへ
さて、米国の戦略家たちは米国の政策を批判しているわけですから、「NATOの東方拡大の責任は米国にある」という結論がそもそもの立論にあらかじめ内包されています。孫崎さんもその立論に依拠しているので、その内包の影響を受けているように思います。
しかしこれは米国の戦略家による理論的なものであり、客観的に検証されたものではないことに注意が必要です。米の戦略家はあたりまえですが、米の政策のために議論しています。米の「敵」は中なので、露とはコトをかまえないようにしよう、という議論などはまさにそういう議論です。しかし日本人が同じ議論をする必要はありません。
実際にどうだったかというと、2019年、当時のポロシェンコ大統領は、NATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に記載する憲法改正法へ署名しました。このときポロシェンコは
「「今日、私たちは、ロシアの顔色を伺うことはしない。私たちは、自分が今後どこへ向かうのかにつき、プーチンに許可を求めることはしない。私たちは、自らの道を歩み、自らの安全保障、主権、領土一体性をどのように確保するか、自分たちで決定を下していくのだ」と強調した。」
ということです。
https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/2643688-poroshenko-da-tong-ling-lu-qin-lue-kai-shinian-jing-guono-te-bie-guo-huinite-jia-meng-lu-xianni-guansuru-xian-fa-gai-zhengni-shu-ming.html
こうなる背景には、ロシアによるクリミア侵略(2014年)があったことは明らかでしょう。
また現在、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟が現実的なものとして取りざたされていますが、これもロシアによるいま現在のウクライナ侵略を直接の契機としていることは誰の目にも明らかです。
つまり、客観的には、「NATOが東方拡大してくるからプーチンは仕方なくウクライナを侵略した」のではなく、「プーチンがウクライナを侵略してくるようなヤカラだから、NATOが東方拡大する」のです。宇都宮けんじが「NATO拡大に弾みをつけているのはロシア自身の行動だ」というとおりです。
また、米国の戦略家たちの議論には、小国が出てきません。これは彼らの議論がそもそも大国以外を国際政治のプレーヤーとして扱っていないからです。そして孫崎さんの議論にも小国(たとえばポーランドとかバルト三国)が出てきませんが、これも孫崎さんが戦略家たちの議論に依拠しきっているからです。実際には、NATO加盟は強制されたものではなく、いまのフィンランド等をみても明らかなように、小国のほうから加盟を願っているのです。ウクライナにしても同じで、独仏はウクライナのNATO加盟には賛成していなかったし、米も消極的でした。小国がなぜNATOに加盟したくなるのか。そこが問題なのではないでしょうか。
小国がNATO加盟しなくてもすむような政策を、ロシアはソビエト崩壊後とり続けていたかどうか。まさにこの点の検証が客観的観点からは必要なのではないでしょうか。
No.4で書いた「設定」については、孫崎さんがツイで現在の設定を明らかになさっています。
https://twitter.com/magosaki_ukeru/status/1518007355266715648
孫崎さんは当初と変化がないとおもっていらっしゃるようですが、
「東部」「自決権」「停戦」というあたりは、わたしには当初とは微妙にかわっていると見えます。いや、そういうことを言いたかったんだ、とおっしゃるのでしょうけれども。
しかしそれでも、ウイグルのときにはたかだかと掲げていた「内政不干渉」が今回ひとことも出ない理由のご説明はなさっておられません。
なお、「米に落とし込まれて戦争においこまれたのだ」という議論は、もともと日米戦争について右寄りがしているものです。わたし自身は、欧州での戦争勃発後の「因果関係としては」、その面は多分にあるとおもっているし、そういう趣旨でここに書いたこともあります。
しかし1,因果のはじまりをどこに持ってくるかという問題。たとえば満州事変までさかのぼってみたら米からはどうみえるか。2,たとえ追い込まれていようと、最後は主体的に開戦を決意したのだという、ある意味矜持にも通じる問題。(ロシアの民族性からはこのあたりはあまり問題にならないのかもしれません)。
この二点に注意しないと、陰謀論の泥濘にとりこまれるだけだとおもってもいます。
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