記事へ戻る 中庸左派さん のコメント 中庸左派 最近、サミュエル・シャラップ(Samuel Charap)というランド研究所の政治学者が、Foreign Affairsに「勝てない戦争 ワシントンはウクライナ情勢に終止符を打つ必要がある」という論文を書いている。この人は、ランド研究所の「長期戦を避けるために 米国の政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡」という論文の共著者。 https://www.foreignaffairs.com/ukraine/unwinnable-war-washington-endgame https://www.rand.org/pubs/perspectives/PEA2510-1.html 論文の趣旨は、そろそろ外交交渉を始めるべきだ、ということ。 その意見は当然として、アメリカ帝国側の視点が濃厚過ぎて、必ずしも事実現実に基づく分析とは言い難い。 それでも、米国防省とかCIA系の権威ある研究所の研究員が、もういい加減、戦争ヤメませんか?的意見を述べたのは興味深い。 内容を何点か、引用したい。 「西側諸国の首都の希望は、キエフが戦場で勝利を収めれば、プーチン大統領を交渉のテーブルに着かせることだ。そして、さらなる戦術的挫折が戦闘継続に対するロシア政府の楽観的な見方を弱める可能性がある。しかし、領土支配を失うことが戦争に負けることと同じではないのと同様に、それが必ずしも政治的譲歩を誘発するわけでもありません。」 要は、ロシアがドンバスから追い出されたからと言って、それで戦争が終わるとは限らない、と。 そりゃ、ロシアは戦術核のオプションもあるから、そうだろうな。 だが、事実現実の戦況は、アルチェモフスクの解放や、ウクライナ反攻失敗に見られるように、ロシアが優勢だ。 「むしろ、この紛争の重要な側面は 2 つある。それは、双方が互いにもたらす持続的な脅威、もう 1 つはロシアが併合を主張しているウクライナ地域をめぐる未解決の紛争である。これらは今後何年も固定されたままになる可能性があります。」 ロシアもウクライナも双方戦闘能力が高いから、という理由らしい。 しかし、ウクライナは武器は西側頼みだから、西側の支援疲れをどう見るのか?その点は不明だが「言い換えれば、最前線がどこにあろうと、ロシアとウクライナは相互に永続的な脅威となる能力を持つことになる。」とのことらしい。 とはいえ、ウクライナ軍の苦戦ぶりも、次のように示唆されており、ドッチなんだよ?と言いたいカンジもある。 「ウクライナ軍は予想を裏切っており、今後もそうする可能性がある。しかし、現場でさらなる進歩を達成するには重大な障害があります。ロシア軍は南方の最も可能性の高い前進軸に激しく塹壕を敷いている。オープンソースの衛星画像は、彼らが最前線全体に多層の物理的防御(新たな塹壕、対車両障壁、障害物、設備や物資の護岸)を構築しており、突破するのは困難であることを示している。プーチン大統領の動員昨年秋に発表されたこの政策は、ロシアの防衛線が薄く奇襲攻撃に対して脆弱だったハリコフ地域へのウクライナの進出を以前に許していた人的資源の問題を改善した。そして、ウクライナ軍は、さまざまな能力の統合を必要とする攻撃作戦においてほとんどテストされていない。また、戦争中、最近ではドネツク地方の小都市バフムートの戦いで多大な損失を被った。キエフはまた、大砲や防空用を含む重要な軍需品の不足にも直面しており、受け取った西側の装備の寄せ集めにより、保守と訓練のリソースが圧迫されている。」 それ故だろうか、「しかし今こそ、米国が戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを策定する時期に来ている。15か月にわたる戦闘により、どちらの側にも、たとえ外部からの援助があっても、相手に対して決定的な軍事的勝利を収める能力がないことが明らかになった。」 要するに、ドッチも勝てないよ、と。 「何年にもわたる壊滅的な紛争につながる可能性があります。したがって、米国とその同盟国は将来の戦略についての選択を迫られている。」 「待つことに決めた場合、紛争の基本は同じであろうが、人的、経済的、その他の戦争のコストは倍増するだろう。」 何年もダラダラ死者を増やし、世界経済の不安要素を維持するのは確かに愚かこの上ない。 それに、西側にとっての現実的問題を次のように言っている。 「結局のところ、ウクライナ人に攻撃作戦を成功させるチャンスを与えるという任務は、すでに西側諸国政府のリソースに負担をかけているのだ。しかしたとえそれがうまくいったとしても、反撃は軍事的に決定的な結果をもたらすことはない。実際、前線が大規模に移動したとしても、必ずしも紛争が終わるわけではありません」 やはり、西側とて、打ち出の小槌を持っているわけではないだろう。インフレもヒドイ。 「ロシアとウクライナの間で長期にわたる熱い戦争を引き起こす可能性がある。実際、歴史はそれが最も可能性の高い結果であることを示唆している。ウプサラ大学が1946年から2021年までのデータを用いて行った戦略国際問題研究センターの研究によると、国家間の戦争の26%は1カ月以内に、さらに25%は1年以内に終結している。しかし、「国家間の戦争が1年以上続く場合は、平均して10年以上に及ぶ」こともわかった。10年未満しか続かない戦争でさえ、例外的な破壊力を持つことがある。たとえば、イラン・イラク戦争は1980年から1988年まで8年近く続き、50万人近い戦死者とほぼ同数の負傷者を出した。多くの犠牲を払ったウクライナは、そのような運命を避けるに値する。」 「私が政治学者のミランダ・プリーベと共著したランド研究所が最近示したように、ロシアとウクライナの長期戦は、米国とその同盟国にとっても大きな問題となる。紛争が長期化すれば、ロシアの核兵器使用やロシアとNATOの戦争へとエスカレートするリスクは、現在の高止まりのまま維持される。ウクライナは西側諸国から経済的・軍事的にほぼ全面的な支援を受けることになり、最終的には西側諸国の財政難と軍の即応性の問題を引き起こすだろう。穀物やエネルギー価格の乱高下など、戦争による世界経済への影響は続くだろう。米国は他の優先事項に資源を集中できなくなり、ロシアの中国への依存は深まるだろう。長期戦になればロシアの弱体化も進むだろうが、そのメリットはこれらのコストを上回るものではない。」 ハッキリ、ロシアの弱体化よりアメリカ帝国ら西側のほうが危機的状況になる、と言っているのが面白い。 その上で「決定的な軍事的勝利の可能性は非常に低いため、特定の終盤戦はもはやあり得ません。」 「戦争が長引けば、2014年から2022年までドンバスで起きたような低強度の局地紛争に戻すことも極めて難しくなる。その期間中、ウクライナの紛争地域外の生活への影響は比較的少なかった。」 しかし、今は「2 つの交戦者への影響、即ち現在の前線の長さ(600マイル以上現在の前線の長さ(600マイル以上)、境界線をはるかに超えた都市やその他の目標への攻撃、そして両国で進行中の動員(一部はロシア、合計はウクライナ)は組織的にほぼ存続する可能性があるだろう。 」 そうすると、「例えば、空域が封鎖され、港が大部分封鎖されたままの場合、ウクライナ経済がどのように回復できるかを想像するのは難しい。都市は砲火にさらされ、労働年齢の男性は前線で戦い、そして国に戻ることを望まない何百万人もの難民。この戦争の影響が特定の地域に限定される段階はすでに過ぎています。」 そして、「終止符」はどうなるか? 「話し合いは必要だが、解決は論外であるため、最も考えられる結末は休戦協定である。休戦協定――基本的には政治的溝を埋めるものではない永続的な停戦協定――はロシアとウクライナの間の熱い戦争に終止符を打つことになるが、より広範な紛争は終結しない。」 休戦協定?アメリカ帝国の国防省とCIAはこのあたりを落としどころにしたいのだろうか? もっとも、この見解の前提は、ロシアとウクライナがどちらも優位に立っていない、という誤った認識だ。 ロシアが戦況優位なら、交渉で譲歩しない可能性もある。実際、戦争を長引かせているのは、ロシアで、それによりアメリカ帝国や西側の自滅を待っている、という見方もある。 「ロシアとウクライナの休戦も西側諸国とロシアの対立を終わらせるものではないが、直接の軍事衝突のリスクは劇的に減少し、戦争の世界的な影響は軽減されるだろう。」 「米国はウクライナと、またG7やNATOの同盟諸国との間で、最終局面について非公式な協議を開始すべきである。 並行して、米国は、ウクライナ、米国の同盟国、ロシアを含む戦争に関する定期的な連絡チャンネルの確立を検討すべきである。」 ともかく、停戦に向けた話し合いを促すのは賛成だ。私は停戦を一刻も早くするべき、という立場だ。それには、アメリカ帝国らが武器支援をやめれば良い。 それにしても、サミュエル・シャラップの回りくどさに比較して、ロバート・F・ケネディ・ジュニアはスッキリしている。 「ウクライナ戦争はロシアを弱体化させるためウクライナを利用。つまりウクライナ人は露アに対する米国の代理戦争の餌食ということ。」戦争の本質を喝破した直球発言だ。 ウクライナを餌食にしたアメリカ帝国の不正義の戦争に停戦への屁理屈はいらない。 スグヤメロ!と言いたい。 No.6 18ヶ月前 Post このコメントは以下の記事についています ケネディ元大統領の甥、「バイデンの外交政策は何か?戦争する事だ」ウクライナ戦争はロシア... 孫崎享のつぶやき 元外務省情報局長で、駐イラン大使などを務めた孫崎享氏。7月に発行された『戦後史の正体』は20万部を超えるベストセラー、ツイッターのフォロワーも13万人を突破。テレビや新聞が報じない問題を、日々つぶやいている孫崎氏。本ブロマガでは、日々発信。週1回別途生放送を発信。月額100円+税。【発行周期】日々。高い頻度で発行します。 » このブロマガへ
中庸左派 最近、サミュエル・シャラップ(Samuel Charap)というランド研究所の政治学者が、Foreign Affairsに「勝てない戦争 ワシントンはウクライナ情勢に終止符を打つ必要がある」という論文を書いている。この人は、ランド研究所の「長期戦を避けるために 米国の政策とロシア・ウクライナ紛争の軌跡」という論文の共著者。 https://www.foreignaffairs.com/ukraine/unwinnable-war-washington-endgame https://www.rand.org/pubs/perspectives/PEA2510-1.html 論文の趣旨は、そろそろ外交交渉を始めるべきだ、ということ。 その意見は当然として、アメリカ帝国側の視点が濃厚過ぎて、必ずしも事実現実に基づく分析とは言い難い。 それでも、米国防省とかCIA系の権威ある研究所の研究員が、もういい加減、戦争ヤメませんか?的意見を述べたのは興味深い。 内容を何点か、引用したい。 「西側諸国の首都の希望は、キエフが戦場で勝利を収めれば、プーチン大統領を交渉のテーブルに着かせることだ。そして、さらなる戦術的挫折が戦闘継続に対するロシア政府の楽観的な見方を弱める可能性がある。しかし、領土支配を失うことが戦争に負けることと同じではないのと同様に、それが必ずしも政治的譲歩を誘発するわけでもありません。」 要は、ロシアがドンバスから追い出されたからと言って、それで戦争が終わるとは限らない、と。 そりゃ、ロシアは戦術核のオプションもあるから、そうだろうな。 だが、事実現実の戦況は、アルチェモフスクの解放や、ウクライナ反攻失敗に見られるように、ロシアが優勢だ。 「むしろ、この紛争の重要な側面は 2 つある。それは、双方が互いにもたらす持続的な脅威、もう 1 つはロシアが併合を主張しているウクライナ地域をめぐる未解決の紛争である。これらは今後何年も固定されたままになる可能性があります。」 ロシアもウクライナも双方戦闘能力が高いから、という理由らしい。 しかし、ウクライナは武器は西側頼みだから、西側の支援疲れをどう見るのか?その点は不明だが「言い換えれば、最前線がどこにあろうと、ロシアとウクライナは相互に永続的な脅威となる能力を持つことになる。」とのことらしい。 とはいえ、ウクライナ軍の苦戦ぶりも、次のように示唆されており、ドッチなんだよ?と言いたいカンジもある。 「ウクライナ軍は予想を裏切っており、今後もそうする可能性がある。しかし、現場でさらなる進歩を達成するには重大な障害があります。ロシア軍は南方の最も可能性の高い前進軸に激しく塹壕を敷いている。オープンソースの衛星画像は、彼らが最前線全体に多層の物理的防御(新たな塹壕、対車両障壁、障害物、設備や物資の護岸)を構築しており、突破するのは困難であることを示している。プーチン大統領の動員昨年秋に発表されたこの政策は、ロシアの防衛線が薄く奇襲攻撃に対して脆弱だったハリコフ地域へのウクライナの進出を以前に許していた人的資源の問題を改善した。そして、ウクライナ軍は、さまざまな能力の統合を必要とする攻撃作戦においてほとんどテストされていない。また、戦争中、最近ではドネツク地方の小都市バフムートの戦いで多大な損失を被った。キエフはまた、大砲や防空用を含む重要な軍需品の不足にも直面しており、受け取った西側の装備の寄せ集めにより、保守と訓練のリソースが圧迫されている。」 それ故だろうか、「しかし今こそ、米国が戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを策定する時期に来ている。15か月にわたる戦闘により、どちらの側にも、たとえ外部からの援助があっても、相手に対して決定的な軍事的勝利を収める能力がないことが明らかになった。」 要するに、ドッチも勝てないよ、と。 「何年にもわたる壊滅的な紛争につながる可能性があります。したがって、米国とその同盟国は将来の戦略についての選択を迫られている。」 「待つことに決めた場合、紛争の基本は同じであろうが、人的、経済的、その他の戦争のコストは倍増するだろう。」 何年もダラダラ死者を増やし、世界経済の不安要素を維持するのは確かに愚かこの上ない。 それに、西側にとっての現実的問題を次のように言っている。 「結局のところ、ウクライナ人に攻撃作戦を成功させるチャンスを与えるという任務は、すでに西側諸国政府のリソースに負担をかけているのだ。しかしたとえそれがうまくいったとしても、反撃は軍事的に決定的な結果をもたらすことはない。実際、前線が大規模に移動したとしても、必ずしも紛争が終わるわけではありません」 やはり、西側とて、打ち出の小槌を持っているわけではないだろう。インフレもヒドイ。 「ロシアとウクライナの間で長期にわたる熱い戦争を引き起こす可能性がある。実際、歴史はそれが最も可能性の高い結果であることを示唆している。ウプサラ大学が1946年から2021年までのデータを用いて行った戦略国際問題研究センターの研究によると、国家間の戦争の26%は1カ月以内に、さらに25%は1年以内に終結している。しかし、「国家間の戦争が1年以上続く場合は、平均して10年以上に及ぶ」こともわかった。10年未満しか続かない戦争でさえ、例外的な破壊力を持つことがある。たとえば、イラン・イラク戦争は1980年から1988年まで8年近く続き、50万人近い戦死者とほぼ同数の負傷者を出した。多くの犠牲を払ったウクライナは、そのような運命を避けるに値する。」 「私が政治学者のミランダ・プリーベと共著したランド研究所が最近示したように、ロシアとウクライナの長期戦は、米国とその同盟国にとっても大きな問題となる。紛争が長期化すれば、ロシアの核兵器使用やロシアとNATOの戦争へとエスカレートするリスクは、現在の高止まりのまま維持される。ウクライナは西側諸国から経済的・軍事的にほぼ全面的な支援を受けることになり、最終的には西側諸国の財政難と軍の即応性の問題を引き起こすだろう。穀物やエネルギー価格の乱高下など、戦争による世界経済への影響は続くだろう。米国は他の優先事項に資源を集中できなくなり、ロシアの中国への依存は深まるだろう。長期戦になればロシアの弱体化も進むだろうが、そのメリットはこれらのコストを上回るものではない。」 ハッキリ、ロシアの弱体化よりアメリカ帝国ら西側のほうが危機的状況になる、と言っているのが面白い。 その上で「決定的な軍事的勝利の可能性は非常に低いため、特定の終盤戦はもはやあり得ません。」 「戦争が長引けば、2014年から2022年までドンバスで起きたような低強度の局地紛争に戻すことも極めて難しくなる。その期間中、ウクライナの紛争地域外の生活への影響は比較的少なかった。」 しかし、今は「2 つの交戦者への影響、即ち現在の前線の長さ(600マイル以上現在の前線の長さ(600マイル以上)、境界線をはるかに超えた都市やその他の目標への攻撃、そして両国で進行中の動員(一部はロシア、合計はウクライナ)は組織的にほぼ存続する可能性があるだろう。 」 そうすると、「例えば、空域が封鎖され、港が大部分封鎖されたままの場合、ウクライナ経済がどのように回復できるかを想像するのは難しい。都市は砲火にさらされ、労働年齢の男性は前線で戦い、そして国に戻ることを望まない何百万人もの難民。この戦争の影響が特定の地域に限定される段階はすでに過ぎています。」 そして、「終止符」はどうなるか? 「話し合いは必要だが、解決は論外であるため、最も考えられる結末は休戦協定である。休戦協定――基本的には政治的溝を埋めるものではない永続的な停戦協定――はロシアとウクライナの間の熱い戦争に終止符を打つことになるが、より広範な紛争は終結しない。」 休戦協定?アメリカ帝国の国防省とCIAはこのあたりを落としどころにしたいのだろうか? もっとも、この見解の前提は、ロシアとウクライナがどちらも優位に立っていない、という誤った認識だ。 ロシアが戦況優位なら、交渉で譲歩しない可能性もある。実際、戦争を長引かせているのは、ロシアで、それによりアメリカ帝国や西側の自滅を待っている、という見方もある。 「ロシアとウクライナの休戦も西側諸国とロシアの対立を終わらせるものではないが、直接の軍事衝突のリスクは劇的に減少し、戦争の世界的な影響は軽減されるだろう。」 「米国はウクライナと、またG7やNATOの同盟諸国との間で、最終局面について非公式な協議を開始すべきである。 並行して、米国は、ウクライナ、米国の同盟国、ロシアを含む戦争に関する定期的な連絡チャンネルの確立を検討すべきである。」 ともかく、停戦に向けた話し合いを促すのは賛成だ。私は停戦を一刻も早くするべき、という立場だ。それには、アメリカ帝国らが武器支援をやめれば良い。 それにしても、サミュエル・シャラップの回りくどさに比較して、ロバート・F・ケネディ・ジュニアはスッキリしている。 「ウクライナ戦争はロシアを弱体化させるためウクライナを利用。つまりウクライナ人は露アに対する米国の代理戦争の餌食ということ。」戦争の本質を喝破した直球発言だ。 ウクライナを餌食にしたアメリカ帝国の不正義の戦争に停戦への屁理屈はいらない。 スグヤメロ!と言いたい。 No.6 18ヶ月前 Post このコメントは以下の記事についています ケネディ元大統領の甥、「バイデンの外交政策は何か?戦争する事だ」ウクライナ戦争はロシア... 孫崎享のつぶやき 元外務省情報局長で、駐イラン大使などを務めた孫崎享氏。7月に発行された『戦後史の正体』は20万部を超えるベストセラー、ツイッターのフォロワーも13万人を突破。テレビや新聞が報じない問題を、日々つぶやいている孫崎氏。本ブロマガでは、日々発信。週1回別途生放送を発信。月額100円+税。【発行周期】日々。高い頻度で発行します。 » このブロマガへ
https://www.foreignaffairs.com/ukraine/unwinnable-war-washington-endgame
https://www.rand.org/pubs/perspectives/PEA2510-1.html
論文の趣旨は、そろそろ外交交渉を始めるべきだ、ということ。
その意見は当然として、アメリカ帝国側の視点が濃厚過ぎて、必ずしも事実現実に基づく分析とは言い難い。
それでも、米国防省とかCIA系の権威ある研究所の研究員が、もういい加減、戦争ヤメませんか?的意見を述べたのは興味深い。
内容を何点か、引用したい。
「西側諸国の首都の希望は、キエフが戦場で勝利を収めれば、プーチン大統領を交渉のテーブルに着かせることだ。そして、さらなる戦術的挫折が戦闘継続に対するロシア政府の楽観的な見方を弱める可能性がある。しかし、領土支配を失うことが戦争に負けることと同じではないのと同様に、それが必ずしも政治的譲歩を誘発するわけでもありません。」
要は、ロシアがドンバスから追い出されたからと言って、それで戦争が終わるとは限らない、と。
そりゃ、ロシアは戦術核のオプションもあるから、そうだろうな。
だが、事実現実の戦況は、アルチェモフスクの解放や、ウクライナ反攻失敗に見られるように、ロシアが優勢だ。
「むしろ、この紛争の重要な側面は 2 つある。それは、双方が互いにもたらす持続的な脅威、もう 1 つはロシアが併合を主張しているウクライナ地域をめぐる未解決の紛争である。これらは今後何年も固定されたままになる可能性があります。」
ロシアもウクライナも双方戦闘能力が高いから、という理由らしい。
しかし、ウクライナは武器は西側頼みだから、西側の支援疲れをどう見るのか?その点は不明だが「言い換えれば、最前線がどこにあろうと、ロシアとウクライナは相互に永続的な脅威となる能力を持つことになる。」とのことらしい。
とはいえ、ウクライナ軍の苦戦ぶりも、次のように示唆されており、ドッチなんだよ?と言いたいカンジもある。
「ウクライナ軍は予想を裏切っており、今後もそうする可能性がある。しかし、現場でさらなる進歩を達成するには重大な障害があります。ロシア軍は南方の最も可能性の高い前進軸に激しく塹壕を敷いている。オープンソースの衛星画像は、彼らが最前線全体に多層の物理的防御(新たな塹壕、対車両障壁、障害物、設備や物資の護岸)を構築しており、突破するのは困難であることを示している。プーチン大統領の動員昨年秋に発表されたこの政策は、ロシアの防衛線が薄く奇襲攻撃に対して脆弱だったハリコフ地域へのウクライナの進出を以前に許していた人的資源の問題を改善した。そして、ウクライナ軍は、さまざまな能力の統合を必要とする攻撃作戦においてほとんどテストされていない。また、戦争中、最近ではドネツク地方の小都市バフムートの戦いで多大な損失を被った。キエフはまた、大砲や防空用を含む重要な軍需品の不足にも直面しており、受け取った西側の装備の寄せ集めにより、保守と訓練のリソースが圧迫されている。」
それ故だろうか、「しかし今こそ、米国が戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを策定する時期に来ている。15か月にわたる戦闘により、どちらの側にも、たとえ外部からの援助があっても、相手に対して決定的な軍事的勝利を収める能力がないことが明らかになった。」
要するに、ドッチも勝てないよ、と。
「何年にもわたる壊滅的な紛争につながる可能性があります。したがって、米国とその同盟国は将来の戦略についての選択を迫られている。」
「待つことに決めた場合、紛争の基本は同じであろうが、人的、経済的、その他の戦争のコストは倍増するだろう。」
何年もダラダラ死者を増やし、世界経済の不安要素を維持するのは確かに愚かこの上ない。
それに、西側にとっての現実的問題を次のように言っている。
「結局のところ、ウクライナ人に攻撃作戦を成功させるチャンスを与えるという任務は、すでに西側諸国政府のリソースに負担をかけているのだ。しかしたとえそれがうまくいったとしても、反撃は軍事的に決定的な結果をもたらすことはない。実際、前線が大規模に移動したとしても、必ずしも紛争が終わるわけではありません」
やはり、西側とて、打ち出の小槌を持っているわけではないだろう。インフレもヒドイ。
「ロシアとウクライナの間で長期にわたる熱い戦争を引き起こす可能性がある。実際、歴史はそれが最も可能性の高い結果であることを示唆している。ウプサラ大学が1946年から2021年までのデータを用いて行った戦略国際問題研究センターの研究によると、国家間の戦争の26%は1カ月以内に、さらに25%は1年以内に終結している。しかし、「国家間の戦争が1年以上続く場合は、平均して10年以上に及ぶ」こともわかった。10年未満しか続かない戦争でさえ、例外的な破壊力を持つことがある。たとえば、イラン・イラク戦争は1980年から1988年まで8年近く続き、50万人近い戦死者とほぼ同数の負傷者を出した。多くの犠牲を払ったウクライナは、そのような運命を避けるに値する。」
「私が政治学者のミランダ・プリーベと共著したランド研究所が最近示したように、ロシアとウクライナの長期戦は、米国とその同盟国にとっても大きな問題となる。紛争が長期化すれば、ロシアの核兵器使用やロシアとNATOの戦争へとエスカレートするリスクは、現在の高止まりのまま維持される。ウクライナは西側諸国から経済的・軍事的にほぼ全面的な支援を受けることになり、最終的には西側諸国の財政難と軍の即応性の問題を引き起こすだろう。穀物やエネルギー価格の乱高下など、戦争による世界経済への影響は続くだろう。米国は他の優先事項に資源を集中できなくなり、ロシアの中国への依存は深まるだろう。長期戦になればロシアの弱体化も進むだろうが、そのメリットはこれらのコストを上回るものではない。」
ハッキリ、ロシアの弱体化よりアメリカ帝国ら西側のほうが危機的状況になる、と言っているのが面白い。
その上で「決定的な軍事的勝利の可能性は非常に低いため、特定の終盤戦はもはやあり得ません。」
「戦争が長引けば、2014年から2022年までドンバスで起きたような低強度の局地紛争に戻すことも極めて難しくなる。その期間中、ウクライナの紛争地域外の生活への影響は比較的少なかった。」
しかし、今は「2 つの交戦者への影響、即ち現在の前線の長さ(600マイル以上現在の前線の長さ(600マイル以上)、境界線をはるかに超えた都市やその他の目標への攻撃、そして両国で進行中の動員(一部はロシア、合計はウクライナ)は組織的にほぼ存続する可能性があるだろう。 」
そうすると、「例えば、空域が封鎖され、港が大部分封鎖されたままの場合、ウクライナ経済がどのように回復できるかを想像するのは難しい。都市は砲火にさらされ、労働年齢の男性は前線で戦い、そして国に戻ることを望まない何百万人もの難民。この戦争の影響が特定の地域に限定される段階はすでに過ぎています。」
そして、「終止符」はどうなるか?
「話し合いは必要だが、解決は論外であるため、最も考えられる結末は休戦協定である。休戦協定――基本的には政治的溝を埋めるものではない永続的な停戦協定――はロシアとウクライナの間の熱い戦争に終止符を打つことになるが、より広範な紛争は終結しない。」
休戦協定?アメリカ帝国の国防省とCIAはこのあたりを落としどころにしたいのだろうか?
もっとも、この見解の前提は、ロシアとウクライナがどちらも優位に立っていない、という誤った認識だ。
ロシアが戦況優位なら、交渉で譲歩しない可能性もある。実際、戦争を長引かせているのは、ロシアで、それによりアメリカ帝国や西側の自滅を待っている、という見方もある。
「ロシアとウクライナの休戦も西側諸国とロシアの対立を終わらせるものではないが、直接の軍事衝突のリスクは劇的に減少し、戦争の世界的な影響は軽減されるだろう。」
「米国はウクライナと、またG7やNATOの同盟諸国との間で、最終局面について非公式な協議を開始すべきである。
並行して、米国は、ウクライナ、米国の同盟国、ロシアを含む戦争に関する定期的な連絡チャンネルの確立を検討すべきである。」
ともかく、停戦に向けた話し合いを促すのは賛成だ。私は停戦を一刻も早くするべき、という立場だ。それには、アメリカ帝国らが武器支援をやめれば良い。
それにしても、サミュエル・シャラップの回りくどさに比較して、ロバート・F・ケネディ・ジュニアはスッキリしている。
「ウクライナ戦争はロシアを弱体化させるためウクライナを利用。つまりウクライナ人は露アに対する米国の代理戦争の餌食ということ。」戦争の本質を喝破した直球発言だ。
ウクライナを餌食にしたアメリカ帝国の不正義の戦争に停戦への屁理屈はいらない。
スグヤメロ!と言いたい。
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