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標題=未来からの洪水
シリーズ名=人間を考えるシリーズ
掲載媒体=ROCKIN'ON31号(1977年発行)
発行会社=ロッキングオン社
執筆日=1977/11/01
テキスト入力者=深谷健一
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 マンガ・シーンですごいと思うのは、僕たち個人が読む事が出来る許容量を、はるかに越えた数量の雑誌が、書店へタバコ屋へキヨスクへ自動販売機へと次から次へと送りこまれてくる事。読む方もマンガってかなりかさばって邪魔だから読めばさっさと捨ててしまう。まるで電波みたい。マンガ出版の全ライブラリーを作るとしたら、それこそ組織的にマイクロフィルムにでも収録してしまわない事にはどうしようもないだろうけど、でも、そんな事はしなくていいのだ。手塚マンガの全集も、コレクション保存的なものではなく、新たなシャワーとして読むべきだろう。

 読んだ人が「読んだ」という事にこだわらない、使い捨て文化というのは、スタイルとしては正解ではないか。ボウイの映画では、壁に並べたテレビで各チャンネルの番組を同時に見ていたが、しかしテレビとは一画面である。一個人が一画面を見る事の可能性は他の何チャンネルの画面を見る事の不可能性によって成立している。僕たちの貴重な瞬間を一画面に限定するにしては、今はあまりにチャンネル数が少なすぎる。