ども! イケダミノロックです。
ミカドでやたらとインカムが良い「ビデオゲーム麻雀」についての記事を今回は書いてみる。
『麻雀格闘倶楽部』のリリース以降、脱衣麻雀を代表格とした対CPU戦メインの「ビデオゲーム麻雀」はゲーセンから激減した。脱衣麻雀を見かけなくなった理由には都条例やJAMMAの規約変更も影響してることは明白だが、そんな政治的事情はひとまず置いておく。
俺自身、リアル麻雀はやらない人だ。不純な動機からアーケード版『スーパーリアル麻雀P2』やPC88版『今夜も朝までパワフル麻雀2』を遊び、麻雀というゲームをざっくりと理解。20代後半までは会社の上司や先輩との付き合いで何度か遊んでみたが、いまいちピンとこないというか……勝てねえし、別に上達しなくていいやと感じ、それから一切遊んでない。
……そういえば、当時付き合っていた彼女が大の麻雀好きで、よく「麻雀をやる、やらない」で喧嘩したなぁ(笑)。そんなこともあり、俺はこれからもリアル麻雀で遊ぶつもりはない。
というわけで、リアル麻雀を実際に楽しんでいる高田馬場のアキラさんに話を聞きながら、リアル麻雀と比較したビデオゲーム麻雀の特徴についてまとめてみた。
■当然ながら麻雀牌を積んだりする手間無し。
■基本CPUとの2人対戦。
■なんでもいいから上がれば良い。
■流れとか役とか考えなくていい。
■勝つときは勝つし負けるときは負ける。
■持ち点を計算しなくていい。
■生きてればOK。
だいたいこんな感じだろうか?
先日、ネイキッドロフトにて開催されたトークライブ「アーケードゲーム雑談2」にて、株式会社MOSSの駒澤社長から「リアル麻雀では8割くらい負けない試合を選択せざるを得ない、いわば“オリる”ゲームであることに対し、ビデオゲーム麻雀は8割勝負できるようにデフォルメし、アガる気持ち良さを前面に出さなければならない」という話があった。
それを踏まえてまとめると、 まずビデオゲーム麻雀を遊ぶ動機付けとして「脱衣」だったり「プロ雀士の井出洋介名人と戦える!」などのアイディアを捻り、タイトルや方向性を決め、「イカサマアイテム」「電源・稼働時間によるランク」を実装することで対戦バランスを調整。加えて、「いかに気持ちよくユーザーに遊んでもらえるか?」「連コインしてもらえるか?」「面白いと感じてもらえるか?」というトライアンドエラーを1980年代からメーカー各社が繰り返した結果、ものすごい数のタイトルがゲーセン向けにリリースされ、現在に至るというわけだ。
つまり、リアルの面倒くさい要素をすべて取っ払い、俺みたいな素人でも役満を高確率でアガれて、ついでにおねーちゃんの裸まで見れちゃう――いわば男の欲望とロマンを1コインで叶えてくれるかもしれない娯楽ジャンルがビデオゲーム麻雀なのだ!
……何度も言うようだが、麻雀格闘倶楽部がリリースされるまではね。
『麻雀格闘倶楽部』は、2002年にリリースされた業界初のアーケード用ネット対戦麻雀ゲームだ。エントリーカードを使うことで自分の段位を保存することができ、常に自分と腕前が近い人がマッチングし、ゲームらしいデフォルメからグッとリアルに寄せたイカサマ無しの本格4人打ち麻雀ゲームだ。
PCの世界ではインターネット上で4人打ち対戦ができる『東風荘』という無料の麻雀ゲームが1997年から登場している。自分の周りを含め、かなりのユーザーを集めて大流行していたのは知っていたので、『麻雀格闘倶楽部』はそんな流れをリサーチして開発されたのかもしれない。
『麻雀格闘倶楽部』の発表時、たかだか麻雀ゲームなのに筐体価格も高額だし、PCの『東風荘』なら無料で遊べるわけで、ディストリビューターやオペレーターからの評価は正直低かった。しかし、その予測は見事に裏切られ、設置店舗からの高インカム情報は瞬く間に全国に伝わっていく。それゆえ、実際、『麻雀格闘倶楽部』の設置数が爆破的に増えたのは『麻雀格闘倶楽部2 日本プロ麻雀連盟Ver.』からだと記憶している。最初に導入を見送ったオペレーターがこぞって導入に走った所以だ。
『麻雀格闘倶楽部』の大ヒットはいまさら語るまでもない事実だが、その特徴を列記してみると……。
■タッチパネルによる快適操作
■イカサマ要素を排除した4人打ち対戦麻雀
■全国ネット対戦(マッチングがなければCPUが代わりに入る)
■対戦相手には常に同段位同レベルとマッチングされる
■配牌もリアル志向
■成長要素である段位システム
■戦績、段位などのステータスのカード保存
■さまざまなイベント実施機能搭載
といったところだろうか。
前回のビデオゲーム麻雀の定義とはかけ離れた完全リアル路線であり、いわば麻雀シミュレーターだ。もちろん、ゲームであるゆえ「完璧」とは言わない。そこに多くのゲーマー以外を含む老若男女のユーザーが飛びついたのだ。
俺のような麻雀やらない勢がロマンだなんだと散々語った(笑)今までのビデオゲーム麻雀はゲーセンからは駆逐される傾向になり、その代わりに『麻雀格闘倶楽部』のサテライトが年々着実に増設されていく。ゲームという視点だけで語るのならば、『麻雀格闘倶楽部シリーズ』は名実ともにアーケードゲーム史上最強の麻雀ゲームだ。
あくまでゲーセン店員である俺個人の主観だが『麻雀格闘倶楽部』の全盛期は2003年の『麻雀格闘倶楽部2 日本プロ麻雀連盟Ver.』から2006年の『麻雀格闘倶楽部5』までだろうか? このあと、筐体設置店の増加に伴う売上の台割れ問題が発生し、地域によってはディスカウントで顧客の囲い込みを狙う流れが顕著となる。
また、年一回の有償バージョンアップのコストが日々のインカムと見合わなくなってきたという話も、中小企業オペレーターからチラホラと出始める。それでも『麻雀格闘倶楽部』の売上は水準以上であり、店舗への売上貢献度も2012年の『麻雀格闘倶楽部NEXT』まではまだまだ高かった。
2018年現在、『麻雀格闘倶楽部』の売上に依存していた店舗も、2007年に新筐体へ変わったことを機に従量課金制にシフトし、数々の金銭的足切りの影響によって設置店舗も減少傾向に。PASELIにも対応するようになったことで、1日の台単価10000円近くあった全盛期のインカムも、現状はで全国平均で1000円から2000円といったところだろうか。
インカム低下の理由は熾烈なディスカウントによる台割れ、スマートフォンの普及など様々な要因が考えられるが、ここに興味深いデータが記されている。雀荘の店舗売上などから試算された麻雀人口のデータだ。
「レジャー白書2018」麻雀人口は横ばいの500万人
https://mj-news.net/news/20180809105777
これ見てみると、2006年から右肩上がりに人口が増えたことに対し、2011年以降は右肩下がりとなる。2011年といえば、あの東日本大震災の年だ。災害は着実に人々から娯楽を遠のかせてしまう。また、関連性があるかどうかはわからないが、2011年はapple社のスマホはiPhone4が主力機となっている。機種はさておき、この時期から自分の周りでもスマホを持ち始めた人はたしかに多い。
以上の考察を踏まえ、見方を変えれば、2018年現在『麻雀格闘倶楽部』をゲームセンターでやり続けているプレイヤーは本当にこのゲームを愛するガチ勢といえる。従量課金はあるものの、日々2000円の売上ならば週に14000円。ゲームセンターにとっては未だ大きな存在といえる。
しかし「高田馬場ミカド」にはこの10年間、『麻雀格闘倶楽部』1台分の売上を軽く上回るビデオゲーム麻雀タイトルが存在していた。
――その名も、ビデオシステムの『ファイナルロマンスR』……!!
2006年に「新宿ゲーセンミカド」をオープンする際、俺は『麻雀格闘倶楽部5』を新品で購入。たしか最低4席からの購入で600万円くらいの出費だったと思う。
当時30代前半イケイケ社長だった俺は、新店オープンに際し、当時の大ヒットゲームである『麻雀格闘倶楽部』を購入するために「大丈夫っしょ? いけるっしょ? うぇーい!」と銀行から借金するのになんの躊躇いもなかった。
しかし、「新宿モア」「新宿カーニバル」「新宿ラスベガス」他、競合ひしめく立地で思うようにインカムが伸びず、大苦戦の毎日だった。
リーマンショック前の2006年はITバブルの残り香からか、俺みたいな若い社長に銀行は返済がキツめの融資をバンバンしていた時代で(※のちに銀行も貸し剥がしという批判を受けるのだが)、買うまでは良かったが、あの時のインカムでは月々の返済すらままならない状態だった。
さらに追い討ちをかけるように『麻雀格闘倶楽部6』への有償バージョンアップの案内が届く……。
「え? 1サテライトあたりのバージョンアップ代が25万円!? 償却も融資返済もしてないのに、また追加で100万円とかお金が掛かるの!?」
額面はうろ覚えだが、正直そんな感じだったと思う。当時のうちの会社の体力では『麻雀格闘倶楽部』の運用など最初から到底不可能だったのだ。
そこで俺は決断した。
借金は残るし、店のラインナップはどう見てもしょぼくなるが、『麻雀格闘倶楽部』を売却して「昔ながらのビデオゲーム麻雀に振り切る運営をしよう!」と。
すぐさま中古基板屋からセタ、ビデオシステム、ニチブツ、セイブ開発、彩京、ホームデータなどからリリースされていたビデオゲーム麻雀タイトルを片っ端から購入し、脱衣麻雀コーナーを新設する。台所事情を抜きにするとイカれた選択と運営だが、あのときはなりふり構ってる状況ではなかった。
おそらく当時のブログでも「レトロ脱衣麻雀ゲームにこだわっての路線変更です!」と、強がった告知を書いたと思うが、内心は気が気でない。
さらには『麻雀格闘倶楽部』を売却したロケーションが納品直後に倒産してしまい、売却金を一切受け取れないというアクシデントに見舞われ、目の前が真っ白になり、気がつくと俺の頭には円形脱毛症が4つくらいできていた……。
それでも、やるしかない!
俺は『スーパーリアル麻雀シリーズ』やら『トリプルウォーズ』やら『麻雀刺客』やら『ホットギミックシリーズ』やらを週ごとに入れ替え、インカムを見つつ祈るような気持ちで稼働し、それをブログで告知した。
頼む! この際、一席でいい! 『麻雀格闘倶楽部』1台分のインカムを超える基板はないのか!? あってくれ!!
そして待つこと数週間後。
……
…
超えた……出た……。
その基板こそがビデオシステムの『ファイナルロマンスR』だった!!
『ファイナルロマンスR』は1995年末にビデオシステムからリリースされた脱衣麻雀で、ナンバリング的には初代、2に続く3作品目にあたる。CPU戦はオーソドックスな脱衣麻雀で、勝ったポイントでイカサマアイテムを購入可能。また、前年にリリースの『ファイナルロマンス2』同様、1枚の基板で通信ケーブルを用い、対戦格闘ゲームよろしく筐体2台での乱入対戦が可能、さらに対戦拒否(それぞれCPU戦)もできるという、当時としては画期的なビデオゲーム麻雀だ。
乱入対戦の際は、まず女子キャラ(パートナー?)を選び、こちらが勝った場合は対戦相手の選んだ女性キャラの裸体が強制表示されるし、負けたら負けたで敗戦画面が表示される。勝った側とすれば、大して見たくもない女子キャラ裸体が拝めるわけだが、今思うと「この機能いる?」という仕様が味わい深い(笑)。何にせよ、『ファイナルロマンス2』と『ファイナルロマンスR』は全国のゲームセンターに爆発的に出回り、稼働後も高インカムのタイトルであった。
以前の記事(ゲームタイトル入れ替えについて・その2 )を読んだ人ならわかるが、ミカドのインカム表は売上が良いタイトルほど下に表記されるようになっている。
写真をご覧のとおり、『ファイナルロマンスR』はどれを見ても「高田馬場ミカド」1階タイトルの売上ナンバーワン!(笑)。数名の常連さんと一般客が常に席に座っている状態となっている。これまでに麻雀コーナーの他台には2Dや実写などのさまざまな脱衣麻雀タイトルを何度か稼働させてみたが、インカムは『ファイナルロマンスR』がダントツであった。
「絵師のすぎやま現象さんってそんなに人気あるのかな?」と思い、プレイしている方に質問してみた。すると……。
「上がり方が気持ちいい」
「頑張れば1コインクリアできる」
「プレイしていて楽しい」
「絵はどうでもいい」
絵はどうでもいいんだ(笑)。というわけで、こちらの予想に反し、イカサマアイテムを含めたCPU戦のチューニングが絶妙だという返答が多かった。ちなみに、難度設定は「新宿ミカド」時代に中古屋で買ってきたままでイージー設定になっていた模様。
とにかく『麻雀格闘倶楽部』を売却(※金もらってねーけど!)した2007年から2018年現在まで「新宿ミカド」~「高田馬場ミカド」にて、一週間あたり25000円から30000円代の売上をキープし続けるバケモノで、『上海II』同様に「ミカドが選ぶ夢のマイホーム基板」に文句なしでノミネート(笑)。
これまで『麻雀格闘倶楽部』登場以前・以後では、同じ麻雀ゲームでもゲーム性や遊びの方向性がまったく違うことを説明してきた。『麻雀格闘倶楽部』のようなリアルでヒリヒリする対戦もよいが、脱衣麻雀には脱衣麻雀としての「アガる楽しみ、気持ちよさ」という魅力がある。麻雀を対戦するだけならスマホやPCで無料で遊べてしまう昨今、ゲームセンターでしか味わえない魅力や住み分けとして存在する脱衣麻雀は十分なアドバンテージになるのではないだろうか?
とはいえ、ゲームセンターから駆逐され、脱衣麻雀勢たちはきっと寂しい思いをしていたんだなと、『麻雀格闘倶楽部』の栄枯を見た今だからこそ理解できる! いや、違う!
ビデオゲーム麻雀の逆襲はこれから始まるのだ!!
考えてみれば『ファイナルロマンスR』は、リリースされた年代、拒否を含めた対戦要素など、ユーザー・店舗ともに痒いところに手が届く仕様とデザインセンスが完璧に合致しており、メーカー各社が80年代に切磋琢磨してきたビデオゲーム麻雀におけるひとつの完成形なのかもしれない。
将来的に『麻雀格闘倶楽部』のサービスが終了したとして、その時『ファイナルロマンスR』は「ミカド」をはじめとするゲームセンターで稼働しているだろうか……?
俺は確信する。
「絶対に稼働している!」と。