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あたま山  脚本・底辺亭底辺
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あたま山  脚本・底辺亭底辺

2017-05-07 14:25
    実はこの脚本は「底辺の品格」をテーマに改作した。
    エンターテイメントは木戸銭すらを払えない者こそを救済すべきであると考えたので。
    著者なりに「ケチ兵衛」を救済してみた。

    アニメ版は下記URLリンクにて公開。 
    http://www.nicovideo.jp/watch/1494134302







    【脚本】 底辺亭底辺

    え~
    昔から言われたことですが。
    不景気になると落語屋が流行るそうです。

    いやいや、ここは笑うところじゃないですよ~ww

    今は相当景気が悪いんでしょうか?
    ワタシのつまらん噺が今日も満員御礼です。

    あははは。
    酷い話ですなww

    それじゃあ、一発景気のいい話でもしましょう!
    カラ元気ならぬカラ景気ってやつだww
    わっはっは!!

    桜満開!  花見酒!  飲めや歌えのドンチャン騒ぎ!

    おっ、あんた今嬉しそうな顔したねww
    くふふふ。
    落語の中くらいは派手にパーっと行きましょうや!!
    舞い散る花びらの真下でね?
    可愛い芸者さん連れて、一等の酒を仲間とグイーってね♪

    ん?
    「でも、お高いんでしょ?」
    って?

    かーっ!
    やだよ、旦那~
    銭がなくてもね?
    雰囲気位は味わいに行こうよぉ~www

    ほら、よーく見渡して御覧なさいって
    一文ナシの素寒貧連中だって結構来てるよ~

    あそこなんて、ホラ!
    日本一のケチンボ男のケチ兵衛さんだ!

    おーい、ケチ兵衛さん!
    こっちこっち♪





    珍しいね、あんたが花見で散財なんて


    「いや、散財はせえへんで?」


    またまた~
    酒代も弁当代も、結構掛かったでしょうね。


    「うん。 道すがら売店を見て来たケド。
    アホみたいに高かったワ。」


    あはは、節約家のケチ兵衛さんにとっちゃあ痛い出費だったでしょう。


    「いや、だから。
    酒も弁当も買ってへんで?
    今日は朝から一文も使っとらんし。」


    え?
    いや、だって今日はお花見に来たんでしょ?


    「うん、そやから花だけ見に来たんや。
    金が勿体ないからな。
    ぶらぶら歩きながら桜をぼーっと眺めとった。」


    あ、はい。


    「…桜。  綺麗やな。」


    あ、うん!  
    綺麗だよね!
    あ、ケチ兵衛さん、良かったらこっちで…


    「ごめん。 俺、付き合いとか苦手でな。
    もう行くからみんなで楽しんでくれ。」


    あ、はい。
    た、楽しんで行ってね!
    ケチ兵衛さん!  楽しんで行ってね!




    「…ありがとう。

    ってここからやったら、聞こえてへんやろうな。

    それにしても、腹へったな。
    朝から飲まず食わずはキツいわ…
    ふう、どっかにオニギリでも落ち取らんかな。

    ふふ。
    そんな上手い話はないよな。

    見渡す限り、桜の花びら。
    景色は乙なもんや。

    ん?
    何や?
    ここだけ色が違うけど…

    おっ!  
    サクランボやんけ♪
    地面にサクランボあったわ!

    ははは!
    今日はええ日や!
    花も見れて、サクランボもただで喰える!

    ふふ。
    思ったより、甘いな。
    あ、これ結構イケるかも。

    あはは。」




    なるほど~
    あの後、そんな事があったんですか~
    それは景気の良い話ですなあ。


    「うん、そこまでは良かったんやけどね…」


    で、朝起きたら…
    その~


    「いや、何か頭痛いなって思って
    触ってみたら…」


    木の芽が出てた… と。
    これは… やっぱり…


    「多分、桜やろうな。
    サクランボしか喰ってないし。」


    ですよね~
    サクランボを食べて松や紅葉は生えませんものね。
    あの、どうされるんですか?


    「ノコギリで切るわ。  
    床屋行ったら勿体ないしな。

    って、自分で切るのは流石に難しいな。」


    いいよ、ケチ兵衛さん、アタシが切ってあげるから!
    危ないから自分で切るのはやめなさいな!


    「…ありがとう
    助かります。」


    いやいや、貸しとか借りとか
    同じ長屋の仲間じゃないですか。

    よし、ギコギコギコ。

    切れたよ!
    ちょっと切り株が残ったけど。


    「見事な手際やな。」


    うちは親父が大工だったからね。
    若い頃、色々やらされたんだ。


    「わかるわかる。 
    親に嫌々やらされたことって、年取ったら財産になるよな。」


    ケチ兵衛さんは何かやらされたんですか?

    「…節約かな。」


    なるほどぉ~
    いや、なるほど。


    「ん? 何か頭がムズムズするで?」


    え、言われてみれば…
    ってあれ?
    さっきより大きくなってませんか?


    「ん?
    うおっ!?  ホンマや!!
    ちょ、何? 
    これ、成長止まらんぞ!」


    うわっ!
    グングン伸びてるよ!!


    「あ、やばい。
    妙な伸びしろ感があるで!」


    あっ! あっ! あっ!
    ケチ兵衛さん、大変だ!!
    もう花が咲き始めてるよ!!


    「花って何の!?」


    桜ですよぉ!!!
    しかも、かなり見事な枝ぶりです!

    まさしく名木!!


    「いや、角度的に俺には見えへんねんけどな。」


    あのね、ケチ兵衛さん。
    昨日はいっぱい桜を見たけど…
    ケチ兵衛さんの頭の桜が一番立派だよ!


    「あ、うん。
    ありがとう。
    あんまり嬉しくないけど。」



    群衆 「おー!  ここやここや!  
       桜の名所、あたま山!
       ここの眺めが一番やでえ!
       はい、場所とったww!!」




    ちょ、何ですかあなた達は!!
    何を勝手に入ってきてるの!

    あたま山って?
    え?
    ケチ兵衛さんのことかい?

    ちょ!
    あっちいけ!!!



    群衆 「いや~ 花見の場所を探しとったらな?
        こんな所に最高の桜が咲いとるやん?
        見事な枝ぶりやで~」


    あ、こら!
    仲間を呼ぶんじゃない!!

    あ、そこ!
    人様の家で裸踊りなんかするんじゃない!


    かっ~
    言ってる間に観光名所になっちまった。
    凄い人出だよ。

    おーい!!
    ケチ兵衛さーん!
    大丈夫かーい!!


    「おーう、ここやで~」


    今、どうなってるんだい!!


    「酔っ払い共がな?
    俺の頭の上に登って花見しとる。」


    こら、酔っ払い共!!
    ケチ兵衛さんの頭に勝手に上るんじゃない!!
    そこは私有地だ!!


    「芸者連れてきとる奴もおる。
    勝手に茶店開業しとるアホもおる。」


    こら!
    勝手に店を出すんじゃない!
    せめてケチ兵衛さんに場所代払いなさいよ!



    「あー、俺はええわ。 
    場所代はこの長屋の大家さんに払ってくれ。
    皆に迷惑掛けてもうてるしな。」



    しかし、花見客ってのは
    外から見ると傍若無人だねえ。
    アタシも昨日誰かに迷惑掛けたかもだねえ。


    「これ以上、長屋に迷惑掛ける訳にもいかへんな。
    おーい、みんな。
    今から桜散らすで。」



    おお、ケチ兵衛さんが頭を振ったら…
    うおっ、桜が全部散ったよ。

    おーおー、酔っ払い共がみんな転がり落ちとる。



    群衆 「チキショー!  せっかく盛り上がってきてたのに!
        あたま山の桜が散っちまったい!!!
        ケチケチしやがって!!」


    ちょっとアンタねえ。
    さんざん勝手に楽しんでおいて…
    何だいその言いぐさは!


    「いや、ええよ。
    こんな所で花を咲かせた俺にも落ち度がある。

    もう、根元から引っこ抜くことにするわ。」



    え?
    ケチ兵衛さん、それ…
    抜けるんですか?



    「まあ、ちょっと痛いけど。
    このままにしとく訳にもいかんからな。

    申し訳ないけど…
    そっちを押さえておいて下さい。」



    押さえるって…
    こうかい?
    この辺を持ってりゃいいんですかい?





    「あ、助かります。

    ふうううぅ…

    ふん!!!」




    うおっ!!
    抜けた…

    ってケチ兵衛さん大丈夫かい。



    「っつ。

    ごおおおぉ…

    痛みは生きとる証拠や。」




    なるほど、物は考えようだね。




    「ふ~
    死ぬかと思ったで…」




    ああ、ケチ兵衛さん
    大きな穴が残っちゃったね。




    「かなり強引に引っこ抜いたからな。
    しゃーないわ。」



    普段、我慢した生活してるだけあって
    この人は根性あるよなあ。




    って、ケチ兵衛さん!
    雨だ雨が降ってきちゃった!!




    「おー、さっき屋根をぶち抜いたばっかりやのに…
    あ、冷た!」




    ケチ兵衛さん!
    アンタの頭の穴に水が溜まっちまったよ!!



    群衆 「おー、見つけた見つけた!  丁度いい具合だ!」



    今度は何だい!!
    勝手に入ってこないでくんな!



    群衆 「ずっとね、釣り場を探してたんだよ!
        うっはー、いい具合だ!!
        亀まで泳いでやがる!!」


    こら、こら!
    仲間を呼ぶんじゃない!
    勝手に釣り糸を垂らすんじゃない!




    群衆 「それにしても、このあたま池は最高の釣り場だよなあ♪
        おっ、でっかい鯉が釣れたよ!!!」



    勝手に名前付けるな!
    何だい!  あたま池ってのは!!



    「はーっ、もう滅茶苦茶やな。
    俺も人生疲れたわ。
    いっそのこと、あたま池に身投げしようかな…」



    ケチ兵衛さん!
    馬鹿言ってんじゃないよ!
    身投げなんて勿体ないよ!!



    「しかしなあ。 
    こんな生活がこの先も続くと思うとなあ。
    せめて、もう少しひっそりした頭にしたいわ。」



    よし、ケチ兵衛さん!
    じゃあ、こうしよう!



    ほら、釣キチ共!
    この池はね、参拝所だから!
    殺生禁止だから!
    禁止禁止!!  釣りは禁止!



    群衆 「参拝~? 何の御利益があるのよ?」




    ここはね!
    恋人のいない若い娘さん達の縁結び祈願池なの!!

    この池に人知れず小銭を放り投げると、素敵な出逢いがあるの!!
    だから、おっさんが釣りをしちゃあいけないの!!



    群衆 「は~、何だい。 そうだったのかい。  
       いい場所だと思ったんだが…
       そんな大事な場所で殺生したんじゃ、バチが当たっちまうなぁ…」



    ふー。
    何とか追っ払ったよ。




    「釣り人… おらんようになったな。 
    替わりに、頬を染めた娘さんが集まってきたけど。」




    酔っ払いのおっさんよりマシでしょう?



    「まあ、頭の上で屋形船遊びされるよりマシやな。

    ああ、娘さん。
    小判なんか投げんでええ。
    そんなアホな金の使い方したらアカン!
    賽銭なんて一文でええねん。
    金は自分の幸せの為に遣いなさい。」




    ははは、ケチ兵衛さん。
    大儲けだねwww
    おまけに若い娘さんに毎日囲まれちゃってさwww
    ケチ兵衛さん目当ての娘(こ)も多いみたいじゃないか♪



    「いや、それにしても
    ええ知恵出してくれはったなあ。
    アンタがこんなに利口な人やとは知らんかったわ。」



    はははは!
    アタシのノコギリ捌き、忘れちまったのかい?


    アタシは頭が切れる男なのさ!!



    おあとがよろしいようで。





    原典は吝嗇モノの小噺。
    それを幾人かの名手が肉付けしてきたことにより、現在知られている形の「頭山」となった。

    ケチ兵衛に入水させられるほどの咎があるとも思えなかったので、最後はハーレムend的に締めくくらせて貰った。

    貧乏は恥ではないし、吝嗇は罪ではない。
    それらを笑いものにすることによって富貴感を味わおうとする浅ましい性根こそが罪悪なのである。


    全てのケチ兵衛に救済と一笑あれかし。


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    更新頻度: 鬱時に長文投下します
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