父親が器好きだったり益子の近くに住んでいたこともあって、子供の頃から手作りの食器で食事をすることが多かったのですが、昔はそれが当たり前のような感じであまり気にかけていませんでした。
中学生になって将来のことを考えるようになり、物を作るのがとても好きだった私は、将来はクリエイティブな職業に就きたいなと思うようになったのですが、当時の親友がとても器用でセンスの良い子で、高校に進学せず益子の窯に弟子入りしたこともあり、陶芸は憧れるけれど自分には無理だなぁと無意識に諦めていたところがあったのでした。
大人になりフランスに住んでから、日本が恋しくなったりすることで日本独特の文化の素晴らしさや貴重さに気付くようになり、日本に帰るたびに器屋さんや博物館、窯などに頻繁に足を運ぶようになったのです。
そしてきっかけはやはりNYに移り住んだことで、再び、日本の繊細かつ、大らかで優しい文化を改めて意識するようになったのでした。
また娘にも、自分が子供の頃にそうだったように、丁寧に手で作られた食器で食事をさせたいなぁと思うことが多くなっていったのでした。
NYではハンドクラフトの器は値段が高く、特に良い和食器は手に入りにくいので、それならば普段使い用の器を自分で作ってみようかな、という気持ちになった訳なのです。
マンハッタンにある陶芸教室を探し、とりあえず1日のクラスを取ってみたのですが、案の定ハマってしまい、数ヶ月クラスを受けてその後スタジオのメンバーに。
本当は毎日でもスタジオに通いたいのですが、幼い娘がいるのでそういう訳にもいかないので、電気ろくろを購入して娘を寝かせて夜静かになってから、自宅で作陶しています。
陶芸を始めてから知ったのですが、陶芸で使う釉薬の主な原料というのは、植物の灰や鉱物などで出来ています。
子供の頃、祖父母の家にあった火鉢や焚火の後に残るあの灰が、高温になるとガラス化するということを知って、とても驚きました。
当たり前ですが、陶芸で使う粘土は土から出来ています。日本は世界的な陶芸大国ですが、私達は大昔から土を耕して穀物や野菜を作り、藁や薪の灰と土で作った器に野菜を盛って頂く、という事をしてきたのだなぁと......。
私達日本人はそんな風にして、当たり前に自然と調和して生活をするという、素晴らしい知恵を持っているのだと思います。
そんな陶芸をアメリカに来てやっとやろうという気になったなんて、何だか自分でも不思議なのですが、NYの自由なクリエイティブな雰囲気が私の背中をそっと押してくれたのかもしれません。
今夜もこの原稿を書いてから、粘土を捏ねたいと思っています。
(本記事に掲載している器は、すべてカヒミさん作のもの。 )
あわせて読みたい
この記事を気に入ったら、いいね!しよう。
Facebookで最新情報をお届けします。