この亀、意外に(?)つり目。涼しげな眼差しをしている。じっくり観察すると、ますます不思議な生き物だ。亀の顔はまるで引き出しのように、甲羅の中に収納できる。手足のうろこも震えるくらい古代的で、恐竜が闊歩していた時代を彷彿させる。
小さな歳の子たちが代わる代わるそんな亀の背中に乗っては、のっそのっそと周囲を乗亀している。大きな子たちは自分がもう乗れない体重だということを十分知っているから、うらやましさも込めて「乗っちゃダメ。かわいそうでしょ!」と浦島太郎を追いかけ回す。(と、言っても相手は亀)
娘がふと、「あーあ、亀欲しいなぁ」とつぶやいた。
数日後、行きつけの材木店に行ったら店のおばさんが、「ああ、ちょうどいい。これあげる。」と、手の平くらいの大きさのビスの紙箱をくれた。もちろん羽のように軽い重さの箱の中にはビスなど入っておらず、その代わりに100円玉サイズの亀の子が居た。
「願いが届いた!」と娘は感極まっている。材木を買ったら海にサーフィンしに連れて行けと強く要望していた息子までもが、「今日は海はいい。亀で十分」と、そそくさ亀の家作り計画を練り始めている。恐るべし、子亀。子どもたち、イチコロじゃないか。
「やっぱ、亀の家は緑かなぁ」と、いつの間に作ったのか木箱を緑に塗る息子。そんな息子に亀の飼育経験がある夫が「おいおい、木箱じゃ水が漏れるだろう」とツッコミを入れる。砂利を入れろ、餌はどうするなど、一気に亀騒動。
この亀もいつか牧場の亀のように、「さぁ、何歳なのかよくわからないみたいです」という仙人亀レベルに昇格するのだろうか。何年後、何十年後といった先の長ーい話だろう。私たちが生きているのかすらあやうい。「先祖代々受け継げられている亀です」というくらい長生きしてくれたらそんな嬉しいことはない。
と、想像しながら今日も亀の餌をやる。大きくなーれ。
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