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お坊さんがつくったボードゲームで楽しく自分と向き合ってみる
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お坊さんがつくったボードゲームで楽しく自分と向き合ってみる

2017-08-17 22:30
    ここ数年、瞑想や座禅、写経などを通して、自分と向き合う機会を持とうとする人が増えています。最近では、「マインドフルネス」が大きな話題を呼び、さらに気運が高まっています。

    とは言え、静寂に包まれた中で雑念を打ち消し、自分と対峙するという作業は楽ではありません。また、お寺に足を運ぶことについても、不安が先立つ人も多いでしょう。でも、例えば自分と向き合う方法やお寺に行くことに「楽しさ」という要素がプラスされたとしたらどうでしょう。ちょっと興味がわいてきませんか?

    東京・深川にある臨済宗妙心寺派 長光山陽岳寺(ようがくじ)では、お寺とつながりのあるボードゲームを考案。お寺の文化や、今まで気づかなかった自分の想いを知ることができるそうです。今回は、陽岳寺の副住職で、ボードゲームづくりにたずさわっている向井真人さんに、始めたきっかけや、楽しくマインドフルネスを体験できそうなゲームについてお話を伺いました。

    ゲームで知ろう 本来の御朱印をいただく方法

    ――まず、ボードゲームをつくることになった理由を教えてください。

    きっかけは「法話カード」です。お寺に来てくださった檀家さんに、お土産を差し上げたいと思い、法話を書いたカードを毎月つくってお配りしていました。何度か続けているうちに、手元にカードがたまったとき、楽しいことが起きたらいいなと思ったんです。何か良いアイデアはないかと悩んでいるときに、聖書がモチーフのカードゲームに出会いました。ならば、お寺の文化でも同じようなことができるのではないかと思ったのですが、私はそうしたカードゲームやボードゲームで遊んだことがありませんでした。

    そこで実際にやってみたり、本を読んだり、詳しい人に相談したりして、「仏教を伝える」ことを目的にしたボードゲームをつくりました。そして生まれた第1弾が「御朱印あつめです。

    御朱印は参拝の記念のひとつになっていますが、歴史をひもといてみるとお写経をお寺に納めることでいただくものだったようです。このゲームでは御朱印をいただく本来の方法や意味を知ることができますし、御朱印に書かれる仏様についても理解を深めることができます。

    ――確かに御朱印あつめは人気ですが、写経のことは初めて知りました。

    御朱印の意味や歴史についてお寺で聞くとなると、どうしても身構えたり、かしこまったりしてしまいがちですが、「御朱印あつめ」はゲームなので積極的にかかわりながら、楽しく知識を得られます。

    ――そしてお寺ボードゲーム第2弾が「檀家-DANKA-」ですね。

    これはお坊さんの仕事が分かるゲームです。6個の「お勤めサイコロ」を振りますが、それぞれの目には修行やお参りなど普段お坊さんがしていることがイラストで表されています。陽岳寺ではゲームのイベントも行っていますが、「檀家-DANKA-」はお坊さんと一緒に遊ぶと、それぞれの仕事について質問することもできて、より楽しめますよ。

    イノッチも太鼓判!?「WAになって語ろう」は自分や家族を知るゲーム

    ――そして3つ目が、「WAになって語ろう」ですね。このゲームの名前は、情報番組『あさイチ』(NHK総合テレビ)の視聴者投票で決まったんですよね。V6の井ノ原快彦さんもオススメされたとか。

    そうなんです。井ノ原さんには、「僕こういうゲーム大好き」と太鼓判をいただきました。「WAになって語ろう」はわざわざ自分から話さないようなことを聞きあうゲームです。さまざまな質問が書かれた64枚のカードを使って、隣の人にカードに書かれていることを聞きます。そして、質問と回答を後で思い出せるように、全員で覚えておきます。

    質問カードの内容は、「最近泣いたのはいつですか?」「ほしかったけど買えなかったものはなんですか?」といった子どもでも答えやすいものと、大人の方が答えやすい「大人になるまで気が付かなかったことはなんですか?」「全くお金に苦労しないとしたらどんな仕事がしたいですか?」というようなものになっています。

    ――これまでの2つのゲームとはちょっと印象が違いますね。

    人の話しをよく聞こうというゲームですからね。お寺ではお葬式や法事を執り行うこともありますが、そういうとき、亡くなった方のことをご家族に尋ねてもあまり分からないと言われることがあるんです。それで、普段からご家族と話す機会をたくさんもってほしいという想いから作りました。

    その人らしさや人の本質とは、なんということのない話の中に表れると思うのです。「WAになって語ろう」はカードの質問に答えるゲームですが、実際にやってみると、答えをきっかけに昔話がはじまったり、「どうして?」「そうだったの?」と深掘りしたり、回答がカードを離れた質問につながったりと、どんどん話が広がっていきます。すると、家族の今まで知らなかった一面に気づくことにもつながるのです。

    楽しみながら自分を知る、新たなマインドフルネス?

    ――他にも「WAになって語ろう」をつくるうえで考えたことはありますか?

    私は大学で心理学を専攻したのですが、その時に学んだ知識がこのゲームには生かされています。実はカードの内容は、「過去」「現在」「未来」についての質問が混じるよう、バランスの取れたものにしているんです。「過去」は自分のベースになっていること、「現在」は今を見つめる内容、「未来」はこれからへの希望を表しています。

    「マインドフルネス」とは、今、目の前で起きていることに意識を向けることだと私は認識しています。「WAになって語ろう」はゲームをしながら現在はもちろん、過去や未来についても考えることになります。過去の経験を経て、今、自分がどうやって生きているのか、そしてこれからのために今どんな目標を設定するのかといったことを、楽しみながら集中することができるわけです。

    ――それはいいですね! しかもそれを話すわけですから、記憶の中にも残りそうです。ゲームを通して自分に目を向けるというのは、新しい形のマインドフルネスのような気がします。

    生きる上では目的にとらわれすぎないことが大事です。将来のことばかり考えるのではなく、足元も安定させなければなりません。かといって今に没入しすぎないことも大切。バランスのとれた生き方を探ってはいかがでしょうか。

    ――今日は楽しくてためになるお話を伺うことができました。ありがとうございました。


    臨済宗妙心寺派 長光山陽岳寺 副住職 向井真人さん
    臨済宗妙心寺派 長光山陽岳寺
    住所:東京都江東区深川2-16-27
    アクセス:地下鉄メトロ東西線・都営大江戸線「門前仲町駅」より徒歩3分
    TEL:03-3641-1580
    ※ゲームの会やお茶会などのイベント情報は、ようがくじ「不二の会(ぷにの会)

    RSSブログ情報:https://www.mylohas.net/2017/08/064109boardgame.html
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