「健康」「仕事」「生活」「教育」などのさまざまな指標を総合し、多面的な地域の幸福を考察する『全47都道府県幸福度ランキング2016年版』(東洋経済新報社)によると、1位に輝いたのは、前回調査の2014年に続き福井県。特に仕事、教育分野において福井県の「暮らしの質」の高さが評価されました。
そんな幸福度を感じるべく、今回、実際に福井県に足を運んできたのですが、東尋坊でもなく、恐竜で知られる勝山市でもなく、めがねの聖地の鯖江市でもなく、向かったのは、日本海に面した敦賀(つるが)市です。
国際交流でにぎわった歴史をもつ、異国情緒漂う港町敦賀は、20世紀初頭にシベリア鉄道が開通すると、日本とヨーロッパを結ぶ最短ルートに組み込まれ、ウラジオストク~日本間の国際航路とこれに接続する東京行きの「欧亜国際連絡列車」の乗継地点として重要な役割を果たした街。かつては、海外からの旅行者でにぎわう国際交流の起点でした。
そんな敦賀で名残を発見! 昭和14年創業、敦賀市民たちから愛されている老舗洋食店「ヨーロッパ軒」本店の駐車場にはロシア語の看板が。
ここでは名物のソースカツ丼が有名なのですが、その他に、脂身のない豚肉を自家製ドミグラスソースで絡めた「スカロップ」やピカタに似た「ジクセリ」といった、どこかロシアを感じるメニューもあるんです。
また、1920年にシベリアで救出されたポーランド孤児が、1940年にはナチスドイツの手から逃れたユダヤ人難民が、リトアニア・カウナスの領事代理だった杉原千畝氏が発給した"命のビザ"を握りしめ、敦賀港に上陸したこともあり、港沿いには関連の展示を行う「人道の港 敦賀ムゼウム」があります。
中で上映されているビデオを見ると、当時、敦賀の人たちがお腹を空かせたユダヤ難民の人たちにリンゴをあげたり、銭湯を無料で開放していたり、いかに優しく歓迎したのかがわかります。当時の時代背景もあいまって「命」の重さや「平和」についてとても考えさせられました。
博物館やカフェが楽しめるレトロモダンな街並み歴史的建造物が残され、まるでタイムスリップしたような感覚になる敦賀の街。敦賀市の歴史や民俗などの貴重な資料が並べられている「敦賀市立博物館」は、建物自体が昭和初期の「日本三大洋風建築」のひとつに数えられていて、とてもクラシック。もともとは、昭和2年に建てられた旧大和田銀行本店で、当時の敦賀港の繁栄を象徴するかのような豪華な作りになっています。
建物自体はもちろんのこと、北陸で最初のエレベーターや大理石のカウンター、貴賓室、市民に開かれていた公会堂なども有し、その当時の雰囲気を感じることができます。
敦賀市立博物館がある博物館通りには、古い町屋を改修してできたレトロでかわいいお店が並びます。かつて薬局だった「キトテノワ」は、「丁寧な暮らしと食」をテーマに手作りにこだわった野菜と発酵食をメインに考えられたメニューやスイーツが味わえるカフェ。
古い町家で眠っていた薬棚は絵本の本棚に、薬瓶は壁のオブジェに、古井戸はガーデン風景になるなど昔の面影を残しているので、初めて来たとは思えないほど落ち着く空間にほっこりしてしまいました。
かつて国際都市として繁栄した敦賀の街には、赤レンガ倉庫もあります。1905年、外国人技師の設計によって石油貯蔵用の倉庫として建設され、その後は、昆布の貯蔵庫としても使用された過去をもつ「敦賀赤レンガ倉庫」。
現在は商業施設として生まれ変わり、山海の幸をいただけるレストラン館と国内最大級のジオラマ館、さらには、イベント広場やオープンカフェ、ウエディングなどに活用されるガーデンは市民や観光客たちの憩いの場となっています。
冬の海鮮2トップ、カニとフグが同時に食べられる敦賀の食といえば、この季節外せないのが11月6日に漁が解禁された「越前ガニ」。敦賀は港町とあってとにかく鮮度抜群! 身がぎっしりと詰まっていて、甘くひきしまった肉質は濃厚、ジューシー。カニみそも大きな甲羅にぎっしりと詰まっていて、これぞ、冬の味覚の王様。
いままで食べたことのあるカニはなんだったのかと思うほど感動の連続でした。また、敦賀は、ふぐも名物。カニとふぐなんて海の幸の2トップを同時に味わうことができるのは敦賀ならでは。
越前カニの名付け親と言われる「相木魚問屋」には、毎朝セリの後、新鮮な魚介類が店頭にすぐに並べられ、お値打ち価格で手に入ります。地元の人が羨ましいかぎり。カニを大釜で豪快に湯がく様子はとてもフォトジェニック! お土産にもおすすめです。
敦賀には日本海側最大級の海鮮市場「日本海さかな街」もあり、漁港から直送された新鮮な海鮮物が所狭しと並んでいます。敦賀の水産業者を中心に65店舗あまりが入っていてまるで海鮮のテーマパーク! お買い物はもちろん、食事もできますし、お店の人と海の幸の値段交渉をしてみたりと魚市場の雰囲気を楽しむことができます。
山の幸も人気。爽やかな敦賀東浦みかんビール海産物はもちろんですが、今回、お土産として人気だったのが、美味しいみかんの北限地として知る人ぞ知る「敦賀産東浦みかん」を使った「敦賀東浦みかん914ビール」です。
山と海に挟まれた傾斜地で厳しい気候の中で育まれる東浦みかんは、しっかりとしたコクと甘み、さらには、爽やかな酸味が特徴。低速ジューサーでみかんの旨味や栄養を壊さずに絞り、麦芽100%のエールビールにその果汁と酵母を加え、瓶内二次発酵させて出来上がります。飲むとみかんがふわりと香って、これならビールが苦手な人でも飲めそうですし、和洋中どんなお料理にも合いそう。黒ビールをベースとして果汁も通常の倍以上使った「KURO」も限定販売されていました。
また、果汁を絞った後の皮も、敦賀の洋菓子店やアロマサロンで製菓材料や精油原料として活用されていて、いかにこの街で東浦みかんが愛されているのかがわかります。
重要文化財の大鳥居や、リゾート感あふれる広大な砂浜その他にも、敦賀の街には、大鳥居が厳島神社(広島県)、春日大社(奈良県)と並ぶ「日本三大木造大鳥居」のひとつで、国の重要文化財に指定されている古社「氣比(けひ)神宮」が鎮座。
また、日本の遊歩百選に選ばれた「気比の松原」は、長さ約1.5km・広さ約40万平方メートルという広大さと白砂青松のコントラストが印象的。海を眺めながらウォーキングしたのですが、とてもリフレッシュできました。
夏になると海水浴客であふれ、敦賀半島の先端に浮かぶ小さな無人島・水島は、北陸のハワイと言われるほど透明度の高い水質と白砂が魅力的なビーチ。ここが福井なの? と言われなければわからないほどリゾート感あふれています。
関東圏からだと少しアクセスが悪いイメージがある福井県ですが、平成34年度末には北陸新幹線・金沢~敦賀間が開業予定。乗り換えをしないで敦賀まで行くことができるようになります。
開業を前にこれからどんどん盛り上がる敦賀の街。市内は周遊バスもあるので車も必要なく女性でも安心。今の季節ならカニが目当ての旅でも損はなし。豊かな文化が詰まった港町へ、ブレイクする前に訪れてみてはいかがですか?