アンジェリーナ・ジョリーやクリスティナ・アップルゲイトのニュースで、おそらくあなたもBRCA遺伝子変異について聞いたことがあるでしょう。もしかすると、検査を考えたことさえあるのでは? 今年3月に刊行されたアメリカ予防医学ジャーナルの調査によると、BRCA検査を受けたなかで、乳がんの病歴のない女性の割合は、2004年の約24%から2014年には60%以上に増えたそうです。とてもよいことに聞こえますが、事態はもっと複雑。

まずはじめに、これらの遺伝子変異はとても珍しく、だれでも検査が必要というわけではありません。影響を受けるのはアメリカ人女性の400人に1人とも。そして、多くの人に役に立つとはいえ、この検査は乳がんにかかる運命であるとか、あるいはそれを必ず避けられるとかを教えてくれるわけではありません。

「知識は確かに力。BRCA検査についてよりよく知れば、より健康的な判断ができます」と、医学博士、ブロンクスのモンテフィオーレ健康システム医療センターの生殖学、医学遺伝学ディレクター、アメリカン大学遺伝医学、ゲノム科学ディレクターのスーザン・クルーグマンさん。あなたが知るべきこと6つを見ていきましょう。

1.陽性反応を示しても、乳がんになるとは限りません。逆もまたしかり

BRCA遺伝子変異を持つことが乳がんのリスクを大きくするとはいえ、それは確実というわけではありません。国立がん研究所によると、70歳までに乳がんにかかると推定されるのは、BRCA1変異を持つ女性の55~65%、BRCA2変異を持つ女性なら約45%。

理系修士で認定遺伝カウンセラー、国立遺伝カウンセラー協会会長のメアリー・フライボーゲルさんによると、「変異の陽性反応が出た若い乳がんの患者を診ており、母親を調べたところ、やはり変異遺伝子のキャリア。しかし母親は60代、70代になろうともまったくがんを発症していませんでした」。研究者たちはその理由については煙に巻かれた状況に。ひとつの説として、他の“修正”遺伝子があり、リスクを押し上げたり押し下げたりしているのではないかといわれています。

反対に、BRCA変異が陰性でも乳がんにかかる可能性も。全女性の8人に1人が乳がんにかかるとされますが、遺伝的な原因が推定されるのはそのわずか5~10%。フライボーゲルさんは、がんにかかりやすい家系でも、BRCA変異が必ず発現しているわけではないと指摘しています。

とはいえアメリカがん学会などの検診ガイドラインに従うのは重要。45歳までに毎年マンモグラフィーを受診しはじめることを推奨しています(家族に既往歴があったりほかのリスク要因があったりすれば、主治医はもっと早くはじめるよう勧めるでしょう)。

2.陽性反応を示しても、乳房切除だけが選択肢ではありません

アンジェリーナ・ジョリーのニュースが出たのは2013年のこと。BRCA1変異のキャリアであることがわかり、両乳房の予防的切除手術を受けたとニューヨーク・タイムズに手記を寄せたのです。この手術はBRCA1、2変異の女性が乳がんにかかる確率を95%削減できるもの。これを思い切り過ぎに思えたり、経済的に難しかったり(あなたの医療保険が予防手術をカバーしていないなど)するようなら、より保守的な選択もあります。クルーグマンさんによると、30歳からMRIとマンモグラフィーを毎年受診するのが選択肢のひとつ

クルーグマンさんは、アメリカ食品医薬品局(FDA)承認されたタモキシフェンの服用について医師に相談することも挙げています。研究結果によると、乳がんのリスクを49%減少できるとの効果に。主治医からこの薬のメリットと副作用の説明を受けましょう。副作用には、吐き気やほてりがあるのでそこも踏まえて考えます。

3.BRCAは乳がんとだけ関係があるわけではありません

BRCA変異はまるで“乳がん遺伝子”のようにみなされていますが、卵巣がんにも密接に関係あり。BRCA1変異を持つ女性の39%、BRCA2変異を持つ女性の11~17%が卵巣がんにかかるとされています。もし陽性なら、クリスティナ・アップルゲイトのように卵巣と卵管を摘出することもひとつの方針(BRCA変異の保有を知ったアメリカ人女性の70%がそのようにします)。2014年に『腫瘍医学ジャーナル』で発表された研究ではこの手術で卵巣がんのリスクは80%減少するとされます。

「乳がんとは異なり、卵巣がんについては病気を発見するためのよい検査法がありません。早期の卵巣がんは特に」とクルーグマンさん。また、「患者さんは両卵巣の摘出を予防的な乳房切除より高い割合で受け入れることがわかりました。卵巣摘出は乳房切除より外見的にわかりづらいことが理由なのかもしれません」

4.BRCA遺伝子変異は、父方から受け継ぎます

クルーグマンさんによると、遺伝子の50%は父親から来ており、それは、父親の母親や祖母が乳がんで亡くなっていたら、あなたにも大きなリスクがあるということ。もし父方の近親者、祖母や父のおばや姉妹などのふたり以上に乳がんの既往歴がある場合は主治医にお願いしましょう。臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーに、遺伝子テストの必要性について要確認です。

両親それぞれの家系で、他に注意すべき点としては、乳がんの男性、乳がんと卵巣がん両方、もしくは左右両胸同時の乳がんにかかった家族、もしくは卵巣がんの親類の有無。もしあなたが、乳がん、卵巣がん、もしくは膵臓がんとなった近い親類を持ったりしているなら気をつけておいた方がよいでしょう。あなたが必ずBRCA変異を保有することを意味しませんが、検査を受けるべきかを専門家と話し合うきっかけになります。

5.母親が乳がんだとしても、BRCA検査を焦るべきではありません

理想的には、がん患者を持つ家族は真っ先に検査を受けるべきと、フライフォーゲルさん。しかしもし母親が乳がんを発症していても、BRCA変異陰性ならば、変異はあなたに遺伝しないでしょうから、BRCA検査を受けるメリットはおそらくありません(母親が陽性なら検査を受ける大きな後押しになります)。しかし検査を受けるべき理由はほかにもあって、たとえば父親の一親等以内に乳がんと膵臓がん両方を持つ患者がいる場合。個人のリスクを評価するために臨床遺伝専門医か遺伝カウンセラーに会うのが好ましいといえます。

6.他の乳がん遺伝子検査もあります

過去2〜3年間、研究者は乳がんのリスクを増大させる他の変異遺伝子を発見してきました。ATM、CDH1、PALB2、TP53(p53)など。これらのなかには、乳がん以外のがんのリスクを増大させるものもあります

もしあなたが過去にBRCA検査を受け、陰性の結果が出たならば、これらの新しい検査も、と考えるかもしれません。それらは「遺伝子パネル」の一部として利用可能。フライフォーゲルさんはこうアドバイスします。「テクノロジーはこの数年でも急速に進化しています。2〜3年前に検査を受けたばかりであっても、再び遺伝カウンセラーに会い、ほかの検査について尋ねるのは悪くありません」 

Hallie Levine/6 Shocking Things You Need To Know About The BRCA Test

訳/STELLA MEDIX Ltd.

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