そこで今回は、管理栄養士の清水沙穂理さんに食生活の基本を取材。食生活にプラスしたいこと、マイナスしたいことという視点から、健康な食事のベーシックとなる考え方をうかがいました。
知ってる?「食事バランスガイド」
農林水産省「食事バランスガイド」より栄養バランスのとれた食事が大切だとわかっていても、それを実践するのはなかなか難しいもの。清水さんがもう一度おさらいしてほしいと話すのが「食事バランスガイド」です。
「食事バランスガイドは、1日に『何を』『どれだけ』食べたらよいかを考えるときの参考になるように、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストで表したものです。平成17年に厚生労働省と農林水産省が決定したもので、学校でも習います。もしかしたらお子さんは知っていて、親御さんは知らないというケースもあるかもしれません」(清水さん)
コマのイラストは、2200±200kcal(基本形)を想定した料理例が表現されています。身体活動量が「低い」成人男性(デスクワーク主体など)、活動量が「ふつう以上」の成人女性が1日に食べる量の目安なので、自分の適量はこちらのチェックチャートで確認してください。
あらゆる食の情報は、この基本形を頭に入れたうえで取り入れてほしいと清水さん。
「特定の病気やアレルギーではなく、健常者である場合、食事バランスガイドの目安の分量は摂取してほしいと思います。たとえば糖質制限にこだわりすぎて、必要な主食の量まで削ってしまっては、健康的な食事とは言えません」(清水さん)
食生活でプラスしたいこと、マイナスしたいこと
「食事バランスガイド」を押さえたうえで、清水さんが提案してくれた“食生活でプラスしたいこと、マイナスしたいこと”がこちらです。
プラスしたいこと
1.朝ごはんはなるべく食べる
食後の約2時間に血糖値が急上昇し、また正常値に戻る血糖値スパイクが日本人に増えています。20代の5人に1人が基準値を超えているというデータ(*久山町研究「なぜ久山町研究の糖尿病有病率(頻度)は高く見えるのか?」より)もあります。血糖値スパイクは血管を傷つけ、放置すると動脈硬化を招いたり、脳梗塞や心筋梗塞、がんや認知症のリスクも増えます。
これを防ぐ簡単な方法が、朝・昼・晩とバランスよく食べること。1日3食、規則正しく食べていれば問題は起きにくいのですが、朝食を抜いた場合、昼食や夕食の内容や食べ方にかなり気をつけないと、血糖値が上がりやすくなります。欠食分リスクが上がるということは、心にとめておいたほうがいいでしょう。
朝ごはんを食べる人は、腸が動き出すので体にリズムができやすく、目覚めがいいという調査結果(*)もあります。便秘に悩んでいる人は、ぜひ朝ごはんを習慣にしてみてください。
2.1日20品目以上の摂取を目標に
主食、主菜、副菜、追加するなら乳製品、果物。この5要素は基準にしたいところです。現実には20品目は難しいかもしれませんが、副菜を大切にしていくとクリアしやすいはず。市販の野菜パックやサラダを活用するのもおすすめです。
3.食後15分はなるべく動く
食事のあと15分はダラダラせず、ウォーキングなど軽く体を動かすのがおすすめです。血糖値の上昇を防ぐことができます。
4.間食よりフルーツを
厚生労働省の食事バランスガイドでは、活動量「ふつう」の成人女性と「低い」成人男性の場合、1日に必要な果物は、ひとつ(100g)を単位として2つ(200g)程度。ミカン2個、リンゴ1個、ナシ1個、ブドウ1房、キウイ2個程度の摂取を推奨しています。旬の果物は安くて栄養価も高いので、お菓子の代わりにぜひプラスしてみてください。 5.ベジファーストは有効
血糖値スパイクを防ぐという観点からいえば、ベジファースト(野菜から先に食べる)は有効。野菜、タンパク質、脂質、最後に炭水化物の順で食べることで、野菜に含まれる食物繊維が胃をコーティングし、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。また、野菜は生で食べると酵素を摂れるので、1日1度はサラダを食べるといいでしょう。
マイナスしたいこと
1.野菜ジュース
野菜がわりに市販の野菜ジュースを飲むという人がいますが、過信は危険です。野菜ジュースは糖分が多いので血糖値が上昇しやすい。野菜の重要な栄養素である食物繊維も失われていることが多いです。
2.分食テクニック
ダイエットに取り入れがちですが、もともとは糖尿病など肝臓や腎臓に疾患のある人のための食事療法。健常者にはおすすめしません。
3.サプリや食材の過剰摂取
これは私の友人の話なのですが、貧血気味なのでレバーを毎日たくさん食べていたら、過剰症になってしまいました。健康でも病気でも、同じものばかり食べ過ぎればバランスを崩します。サプリや食材など「○○がいい」という情報が良く出ますが、「食べたほうがいいもの」でも、「毎日食べ続けた方がいい」わけではない。そこは混同しないように注意してください。
4.過剰なダイエット
20代~30代の若い女性に低体重の方が増えています。BMI値の目標値は22ですが、18.5を切ったら“痩せすぎ”。病気のリスクが1番低いのが基準値とされる22なので、それより低い場合は食生活を見直してほしいです。ずっと低体重のままでいると不妊の原因(*厚生労働省 平成15年国民健康・栄養調査報告P.9より)になることもあります。
5.間食とのつきあいかた
「食事バランスガイド」を見ると、菓子・嗜好飲料はコマの紐として描かれています。「楽しく適度に」とある通り、摂りすぎは禁物。朝から菓子パンという人が増えていますが、 パンではありますが、食事バランスガイドでは主食のカウントにはなりません。ヒモの部分のカウントとなります。しっかり主食をとれば、3食のあいだに空腹を感じることが減り、自然と間食が減っていくはずです。
「どれも当たり前すぎて、おもしろくないかもしれませんが……」と話す清水さんですが、健康な食事のベーシックとしておぼえておきたいポイントばかり。食の新しい情報をかしこく取り入れるためにも、しっかり自分のものにしておきたいと思います。
清水沙穂理さん
管理栄養士。「楽しい食で人を幸せに」をモットーに、多くの人たちに食の大切さを伝えられるようになりたいと思っております。2014年:十文字学園女子大学人間生活学部植物栄養学科卒業、2014年〜2016年:食事コントロールを通して血液検査結果の数値改善を目指す健康食宅配サービスで治療食の定期便メニュー開発、2016年~:歯科医院にてチーム医療の一員として、個々人にあった治療計画や食事や栄養の摂り方の提案している。