子宮頸がんは20代~40代が最もかかりやすいがんなのです!
婦人科のがんで最も多いのが子宮がんです。乳がんが一番多いのでは? と思う方も多いと思います。そのとおりで、女性のがんで罹患率が最も多いのは乳がんなのですが、乳がんは婦人科で治療するのではなく、乳腺外科で治療しますので、婦人科が治療するがんには入らないのです。
子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がんがあります。このふたつは、原因も発生する場所も全く異なるがんです。
このうち、20代~40代に多いのが子宮頸がん。
子宮頸がんは、20歳代後半から40代まで罹患率が高くなります。40代がそのピークです。そのあとは減少傾向になります。がんというと、年齢が上がるほど多くなると思いがちですが、子宮頸がんは例外です。罹患率も、死亡率も20代から40代に増加しています。
子宮頸がんは自覚症状だけでは早期発見は難しい…
日本では、年間約10,520人の女性が新たに子宮頸がんにかかります。また、子宮頸がんで亡くなる方は年間約2,700人もいるのです。(*)
*国立がん研究センター 地域がん登録全国推計値2013年 上皮内がんを除く。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス子宮頸がんは、子宮の入り口にある子宮頸部という場所に起こります。子宮の入り口付近なので、普通の婦人科の診察で、発見されやすいがんです。けれども、早期のうちには自覚症状はほとんどないため、自覚症状だけでは早期発見することが難しいのです。
早期に発見すれば、治療しやすく治りやすいがんですが、進行すると治療が難しいことから、予防と早期発見が極めて重要ながんです。
子宮頸がんの予防と早期発見のための正しい方法
ここでは、子宮頸がんの予防と早期発見のための正しい方法をお伝えします。
原因は、性交渉によるウイルス感染です
まず、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因ということを知っておきましょう。HPVは、性交渉で感染しますが、HPVはごくありふれたウイルスですから、感染そのものはまれではありません。約80%の女性が一生涯で一度は感染すると言われています。しかし、感染しても多くの場合、自然に排除されます。
ところが、多くは自然に排除されますが、感染が継続すると、子宮頸がんへと進みます。喫煙も、子宮頸がん発生の危険因子です。
受けるべき子宮頸がん検診の中身とは?
子宮頸がんを予防し、早期発見する方法には、まず検診があります。子宮頸がん検診は、一般では「子宮がん検診」と呼ばれています。
子宮頸がん検診は、産婦人科医師が子宮頸部から、小さなヘラやブラシなどで細胞をこすり取り、異常な細胞の有無を調べる「細胞診」という方法で行われています。
この細胞診の検査は、約1~2分で終了し、リラックスして力をぬけば、あまり痛みはありません。検査後、ほんの少量出血することがあるくらいです。
この細胞診による子宮頸がん検診は、異形成(前がん病変)といって、がんになる前の病変も発見することができます。この段階(高度異形成)で見つけて治療すれば、がんになる前に治せます。ですから、検診が予防にもなるのです。
子宮頸がん検診を受けるのは、20歳から2年に1回です。予防のためには、定期的に検診を受けることが大切です。
けれども、日本女性の検診受診率は低く、先進国で最低の割合です。そのため、子宮頸がんで亡くなる人が減っていないのです。
もし、何かの症状があって婦人科を受診した場合は、子宮頸部の「細胞診」を保険診療で行えることもあります。また、人間ドックのオプションになっていることもありますので、この2年間、受けていない人はぜひ受けてください。
一方、自分で細胞診を行う“細胞診サンプルの自己採取”が行われているところもありますが、サンプルの状態が悪く、診断の正確さが産婦人科医による採取よりも劣ることがわかっています。
異常な出血やおりものの異常などが続くようであれば、検診結果に異常がなくても、産婦人科を受診して、詳しい診察を受けることも忘れないでください。
妊娠と同時に子宮頸がんがわかって…
知人のS子さんの話を聞いてください。
2年前、知人のS子さんから「妊娠したの!」という嬉しい知らせが届きました。でもその後、間もなく、「子宮頸がんだったことがわかった…」という相談メールが来ました。
S子さんの子宮頸がんは早期だったため、妊娠中はがんが進行しないように見守りながら、出産することにしました。無事、妊娠は継続できて、元気な赤ちゃんが産まれました。出産後、S子さんは子宮頸がんの治療をしました。0歳の赤ちゃんがいる中での治療は、精神的に大変だったそうです。早期発見だったため、子宮の入口の子宮頸部だけを手術で切除する円錐切除術という比較的簡単な治療で、頸がんを取り去ることができました。
子宮も残せました。治療は成功です。「子どもが2人以上は欲しい」と思っていたS子さん。医師から「次の妊娠にも期待できる」と言われてホッとしていました。
そして2年後、2人目を妊娠。ところが、流産をしてしまったのです。早期の子宮頸がんであれば、がんの発生した子宮頸部だけを切除することで、完治できるケースも少なくありません。けれども、子宮の入口の子宮頸部を切除してしまうことで、妊娠したあとの流産リスクが高まってしまうのです。
早期発見で命と子宮は守ることができて、次の妊娠も望むことはできますが、せっかく妊娠したのに、流産してしまうケースも少なくないのです。ですから、早期発見も大事ですが、妊娠出産する20代~40代の女性の場合は、子宮頸がんを予防することがもっと大事なのです。
「早期発見でよかったけれど、もっと早くワクチンがあったら、私は絶対に接種していました。みんなにワクチン接種と検診を受けて、と言いたいです」とS子さん。
検診+ワクチンで子宮頸がんはほぼ完全に予防できる時代です
S子さんが言うワクチンとは、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)のことです。
今、子宮頸がんは“検診+ワクチン”でほぼ完全に、予防できる時代になったことを知っていますか?
2009年、子宮頸がんのワクチンがやっと日本でも接種可能になりました。がんが予防できるなんて、医学的に画期的なことです。世界中100か国以上の女性たちは、検診とワクチンで頸がん予防を行っています。
大切なのは、ワクチンだけではほぼ完全な予防にはならないということ。必ず、子宮がん検診も、2年に1回は行なうことが大切です。
大部分の子宮頸がんの原因は、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染です。HPVは、全部で100種類以上あり、がんになるものが約15種類。ワクチンで予防できるのは、このうちHPV16型と18型の2種類です。この2種類は、全部の子宮頸がんのうちの約70%を占めていますが、ほかのHPVタイプのがんは予防できません。ですから、検診も組み合わせることが大事なのです。
HPVワクチンは、中高校生が接種するものと思っている人も少なくないかもしれません。でも、大人の女性にも有効です。HPVワクチンは、20歳以上の大人の女性も接種するメリットがあります。
ところがこのワクチン、今日本でなかなか接種できない状況にあります。発展途上国を含む全世界100カ国以上でHPVワクチンは現在も接種されているのに、日本だけが接種しにくい状況にある理由とワクチンの有効性を次回、お伝えします。
増田美加・女性医療ジャーナリスト
2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ