自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダケア戦略術」。前回は「乳がん検診のマンモグラフィではがんが見つからないおっぱい」について、お届けしました。今回は、「女性のための漢方」について女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

「だるい、疲れる」とき、隠れた病気がないかは要注意です

1日中だるい、すぐに疲れる、なんとなく調子が悪いなどは、不調というより、怠けグセと考えてしまい、自分を責めたり、無理をしてしまいがちです。

けれども、だるい、疲れるなどの症状は、体からの注意信号です。なかには、貧血や胃腸機能の低下、甲状腺の病気、肝機能の低下など、病気のサインの場合もあります。放っておかず、早めに対処して改善しましょう。

長い間続く場合は、病気の可能性もありますので、内科を受診して検査します。もしも病気が発見されたら、病気に応じた治療を優先します。

漢方的には、疲労は“気虚”の状態かもしれません

原因となる病気がとくに見当たらない場合は、漢方薬の出番です。漢方では、疲労は“生命エネルギーの流れに滞りが現れ始めた”と考えます

疲労が強い場合は、“気(元気や気力の気)”が足りない“気虚(ききょ)”の状態。これが進むと、“血”が足りない“血虚(けっきょ)”の状態に変わっていきます。漢方薬では、まず“気”の巡りをよくして、体のエネルギーをアップする薬を服用します

また、漢方薬だけでなく毎日の生活の中で、10分でもいいので、ストレス解消やリラックスできる時間をつくることも重要です。

「だるい、疲れる」の不調に効く漢方薬は?

精神的なストレスや不眠がある場合は、漢方薬の「加味逍遙散(かみしょうようさん)」がよく使われます。この薬は、女性ホルモンの乱れによる生理不順、PMS、更年期障害にもよく処方される薬です。イライラ、落ち込み、ほてり、冷えなどにも効果があります。

心身が疲れて血色が悪くて、不眠や不安がある場合には、「加味帰脾湯(かみきひとう)」がよく使われます。

元気がなく、胃腸の働きが衰えている人には、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を使います。病後の体力の低下のときにもよく処方されます。

疲れて、貧血気味で食欲がない人には、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」もよく使われます。胃腸の調子も整えてくれます。便秘や下痢にも効きます。

暑い季節のだるい、疲れるは、夏バテのこともあります。暑いからといって冷たいものを摂りすぎないように注意。できるだけ冷たいものを少なくして、温かくて栄養のあるもの(タンパク質、ビタミン、ミネラル豊富な)を食べるようにしましょう。胃腸の調子が落ちると、だるくて疲れて、気持ちも落ち込んでしまいます。生活習慣だけで乗り越えられないときは、漢方薬を上手に使ってケアしましょう

漢方薬は医師に処方してもらうと健康保険が使えます!

「漢方薬は高い」「長く飲まないと効かない」というイメージをもっている人もいますが、近所のクリニックで処方してもらえば、健康保険が使えます。健康保険3割負担で、1種類の漢方薬なら1か月分でも、1000円程度。日本の医師の80%前後は、漢方薬を日常的に処方しています。

だるい、疲れるといった症状なら、内科で漢方薬を処方してくれることが多いです。婦人科でも生理周期に関連するようなだるい、疲れるという症状なら、漢方薬を処方することもあります。

長く飲んで、体質改善を図る漢方薬もありますが、短期間でその症状に効き目がある漢方薬も少なくありません。急性の症状なら、1包で効果を感じられるものもあります。
一度、かかりつけ医や近所のクリニックを受診して相談してみてください

生理不順は早めに解消しましょう

暑い日が続くときは体調管理がむずかしいです。だるい、疲れるといった体調不良だけでなく、生理不順も起きやすくなりますね。

正常な生理周期は25日~38日です。この間に生理がくれば、毎月の生理日がずれても問題ありません。生理の出血期間は3~7日間程度。

この日数から多少ずれるくらいなら、問題ありませんが、生理がひと月に2回ある、2か月以上こない、期間が2日以内、いつまでもダラダラ続く、量が極端に多かったり、少なかったりする、などがあったら、婦人科を受診する目安です。生理があっても排卵していない可能性もありますし、病気が隠れているかもしれません。

生理不順は放っておいては、健康のためにも、美容のためにも、妊活のためにも、よくありません。心配なときは早めに婦人科を受診してください。

生理不順の原因は、①ストレス、生活リズムの乱れ、②卵巣機能の低下、③高プロラクチン血症など、が考えられます。いずれの場合も、婦人科でそれぞれに適した薬で治療できます。

生理不順に効果のある4つの漢方薬

写真は、「当帰芍薬散」の中に入っている「当帰」

漢方薬は、生理不順の改善に使われることがあります。ホルモン剤などとあわせて飲むこともありますし、漢方薬だけで生理不順が改善できることもあります。

生理不順は、漢方的にいうと、「血」の異常にあたる「瘀血(おけつ)」の状態。いわゆる血行不良を改善し、血の流れをよくする漢方薬が処方されます

この4つが生理不順にとてもよく処方される漢方薬です。

生理不順にとてもよく処方される漢方薬

【当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)】
「当帰芍薬散」は、比較的体力の低下した女性で、冷え症で貧血傾向があるときの生理不順に使います。ほかにも生理痛、冷え、疲労感などや更年期障害にともなう貧血、冷え、疲労感、頭痛、めまい、動悸なども緩和します。このように生理にともなう不調やPMS症状、また妊娠中のさまざまな症状(妊娠中のむくみや腹痛、貧血、動悸を緩和し、妊娠を安定させる)にも用いられる漢方薬です。妊娠しにくい人にみられる貧血、冷え、倦怠感などや生理の異常を改善し、体を妊娠しやすい状態に整える作用もあります。ほかにも、腎臓の疾患にともなうむくみ、貧血、疲労感、動悸などの症状を緩和します。このようにひとつの薬でさまざまな不調や病気に効果があるのは、漢方薬の特徴です。

【加味逍遙散(かみしょうようさん)】
「加味逍遙散」は、体力が比較的ない人で、肩がこり、疲れやすく、頭痛、めまい、メンタルの不調が多いタイプの冷え症、生理不順、生理痛、更年期障害などに使われる漢方薬です。生理不順だけでなく、PMSや生理中のイライラ、肩こり、不眠などにも効果があります。女性の生理周期に関連する不調が多いときによく使われる代表的な漢方薬です。

【桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)】
「桂枝茯苓丸」は、婦人科系のさまざまな病気、生理不順や生理痛、子宮筋腫などで血巡りの悪い人のさまざまな不調に用いられる、女性のための漢方薬の代表です。生理周期の異常(生理不順)と生理痛、頭痛、のぼせ、めまい、肩こり、足の冷えなどの症状を緩和します。更年期障害にともなう頭痛、のぼせ、めまい、肩こり、足の冷えなどにもよく使います。桂枝とは、シナモンのことです。

【温経湯(うんけいとう)】
「温経湯」は、冷え症で、くちびるの乾燥、てのひらのほてり、下腹部の冷えや痛みなどの症状に用いられる漢方薬です。生理痛、生理不順、月経異常(出血量が多い少ないなど)、おりもの、足腰の冷え、手足のほてり、不眠などの症状を改善します。おなかや足腰の血液の循環を改善し、冷えやしもやけを緩和する作用もあります。このように、女性のために役に立つ漢方薬はたくさんあります。何か不調を感じたら、早めの対策が大切。

生理周りの不調で自分に合った漢方薬を見つけるには、婦人科で処方してもらいましょう。婦人科のドクターなら漢方薬の処方は慣れていますので、相談してみてください。

増田美加・女性医療ジャーナリスト

予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

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