性交時に痛みを感じ、排尿時にはヒリヒリしてつらい…
性交時に痛い…、排尿時にヒリヒリすることがある…、自転車に乗ると擦れて痛い…などの悩みが…。更年期世代から増えてくる不調です。 性交痛は、女性ホルモンのエストロゲンの低下で起こる“腟の乾燥”が大きな原因です。さまざまな腟の乾燥による症状や悩みが起こります。
原因の多くはエストロゲンの低下です
image via shutterstock女性ホルモンのエストロゲンは、骨、血管、脳のほか、腟、尿道、膀胱の一部、皮膚、粘膜などにも重要な役割をもっています。 更年期障害、萎縮性腟炎、腹圧性尿失禁や尿もれ、過活動膀胱などとともに起こる性交痛は、エストロゲンの低下が原因です。
エストロゲンの低下が原因ではないものに、シェーグレン症候群があります。シェーグレン症候群は、目や口の乾きの症状(ドライマウス、ドライアイ)が顕著ですが、腟の乾燥も起こります。 シェーグレン症候群と診断されている人のなかにも、腟の乾燥症状をケアできずに、悩んでいる人が多い現状もあります。シェーグレン症候群の治療は、リウマチ内科や膠原病の専門医ですが、腟の乾燥の治療は婦人科でもできますので、悩んだら婦人科に相談してみてください。
症状別チェックをしてみましょう
性交痛のほかに、何か気になる症状はありませんか? それによって、性交痛がなぜ起きているのか可能性がわかります。
□性交痛 + 目や口、腟が乾く、疲れやすいなど
→シェーグレン症候群 更年期に発症のピークがあり、女性に多い自己免疫疾患のひとつ。膠原病の関節リウマチなどと合併することも少なくありません。
□性交痛 + 腟の乾燥、ほてり、多汗、不眠など
→更年期障害 更年期にエストロゲンが激減することでさまざまな不調が起こります。特に閉経後、粘膜の乾きの症状は、顕著になることが多くあります。
□性交痛 + 腟の乾燥、不正出血、茶色っぽいおりものなど
→萎縮性腟炎 別名、老人性腟炎。更年期以降、特に閉経後のエストロゲン減少が原因で、性交痛、ヒリヒリする痛みやかゆみなどの症状が特徴。老年期まで続きます。
□性交痛 + 腟の乾燥、頻尿、尿もれ
→ 腹圧性尿失禁、過活動膀胱 せきやくしゃみなど、おなかに力が入ったときに漏れるのが腹圧性尿失禁です。急に強い尿意を感じ、トイレに間に合わない場合が、過活動膀胱です。
性交痛のクリニックでの治療は?
image via shutterstock性交痛をケアするには、腟の乾燥を治療するために、局所(腟)に効くエストロゲン(ホルモン)剤の腟錠を腟に入れる方法があります。 エストロゲン剤の腟錠にはさまざまあり、症状に応じてエストロゲン含有量の多少を考慮して処方されます。
性交時の痛みだけでなく、性交時に出血がある人もいます。なかには萎縮性腟炎を起こしていて、腟の周りが真っ赤になる人も。 更年期障害、萎縮性腟炎による出血なら、腟錠を週に2回ほど入れることで、2週間くらいで楽になり、その後、週1回程度、腟錠を入れることで、症状はずいぶん軽快する、という医師もいます。
ただし、性交時の出血は、子宮頸がんなどの可能性もあります。婦人科を受診して医師に相談しましょう。
腟の乾燥だけでない症状がある場合は?
image via shutterstock腟の乾燥だけでなく、ほてり、のぼせ、不眠、関節痛、頭痛など、更年期障害のさまざまな症状や、頻尿、尿もれなどの症状もある人には、全身に作用するホルモン補充療法(HRT)が効果的です。
更年期世代で、全身のホルモン補充療法(HRT)で使うホルモン剤には錠剤、パッチ剤、ジェル剤などさまざまあります。皮膚に塗るジェル剤は、症状に応じて量を加減できるので便利です。
また、腹圧性尿失禁や過活動膀胱の症状がつらいときには、骨盤底筋群を鍛える体操やそれぞれに効く薬がありますので、婦人科や女性泌尿器科の医師に相談するとよいでしょう。
乳がんの既往があったり、ホルモン剤を使いたくない人には、漢方薬で治療することもできます。 性交痛は、女性の問題だけでなくパートナーとの関係も影響します。パートナーと症状について話し合ったり、心理カウンセリングを受けることが有効なときもあります。
自分でできるケアもあります
image via shutterstock腟や外陰部の乾燥が気になる人は、ともすると洗い過ぎの傾向があります。 洗いすぎは、若い世代でも大事な常在菌を取り除いてしまいます。腟や外陰部は石鹸でゴシゴシ洗わないようにしましょう。 特に更年期以降、エストロゲンが低下すると、常在菌が少なくなり、バリア機能が低下する状態になりやすいので、一層注意が必要です。
石鹸は使わず、デリケートゾーン専用の洗浄剤を使うといいでしょう。ぬるま湯でやさしく洗い流す程度で十分です。ビデも使い過ぎないようにします。 性交時の潤い不足に使うジェル剤やデリケートゾーンに潤いを与えるスキンケア剤なども販売されています。
また、補正下着などで締めつけるのも、粘膜や皮膚が乾燥している人はよくありません。通気性のよい素材で、締めつけない下着を選ぶようにしましょう。
増田美加・女性医療ジャーナリスト 予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/
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