卵巣がんは「サイレントキラー」という嫌なあだ名で呼ばれています。
初期のうちは症状がほとんどなく、あったとしても女性にとって特にめずらしい症状ではないため、気付きにくい病気です。むくみや疲労感、なかにはひどい痛みを背中や膀胱に感じる人もいますが、これらの症状はみな月経前症候群(PMS)や妊娠中の女性によくみられるもの。
ほかの病気についての認識は高まってきているのに、卵巣がんは依然として、知らないうちにしのび寄ってきて急な症状に襲われるという見えづらい病気のままです。
ある日突然、おそろしい診断を受けた女性は、自分の人生を生き抜く闘いに直面するとともに、今までほとんど知ることのなかった情報を、手探りで探していかなければなりません。
たしかに、人によって置かれた状況は異なります。でも、卵巣がんサバイバーからの貴重な知恵が得られれば、この先どんなことが待ちうけているのかということが分かるはず。心の準備をする上で、わずかながらも助けとなるのではないでしょうか。
ここで、卵巣がんサバイバーの経験を紹介し、卵巣がんと闘う女性にとって大切なことを共有したいと思います。
01. 年齢の高い女性だけがかかるとは限らない
マギー(現在35歳)が卵巣がんであると診断されたのは、20歳のとき。大学の夏休み中に帰省していたときのことでした。「最初は、誤診だったのです。私は医師から妊娠していると言われました。どんなに驚いたことか。そんな経験がなかったのですから」とマギーさん。
さらに検査をしたところ、ステージ3Cの卵巣がんであることが判明。マギーさんは、すぐに手術を受け、卵巣の腫瘍、左側の卵管、腹部のリンパ節をとりのぞきました。腫瘍はナスくらいの大きさだったそう。
それからマギーさんは、薬によって閉経しました。「将来、妊娠する可能性はほぼないだろう」と医師から言われたそう。
でも、彼女はほぼ不可能とされたことをやってのけました。「私たち夫婦が2人の子に恵まれたことは誇りです。母としての立場になってみてあらためて感じるのは、私の母はとても強かった、ということ。娘が卵巣がんだと診断されて、はたしてあんなに気丈でいられるかどうか」
02. 超音波では分からないこともある
妊娠については、次のようなケースも。クリスティーさん(当時32歳、現在41歳)は妊娠後期、背中のひどい痛みをかかえていましたが、3番目の子を無事に出産。あとになってから、痛みの原因はなんと約3.6キロの腫瘍が背中を圧迫していたからと判明したそう。
出産後のおなかの痛みがものすごく強かったので、何かがおかしいと感じていたとクリスティーさんは言います。
「出産後に身体が回復に向かうときも、痛みは全然おさまりませんでした。1人目、2人目を産んだときと比べても、おなかの様子がなにか違い、更につらかった。でも、医師と看護師は大丈夫だからと、私をそのまま家に帰したのです」
1週間後、まだ痛みが続いていたので、クリスティーさんはもういちど病院へ。そのときはじめて、巨大な卵巣がんが判明。
「自分の身体におかしなところがあったら、きちんと訴えなくては」とクリスティーさん。
「妊娠中は超音波でみてもらっていましたが、特に異常が見つからないまま、健康な男の子を出産しました。でも、私は何かおかしいと感じていたのです。もし、そのような違和感があったときには、医師や看護師に言われた通りでいてはだめ。きちんとした答えを出すよう求めたほうがよいです」
03. 遺伝子テストの結果が悪くても、不安にならないで
営業部門の管理職として、シカゴで働いているナオミさん(現在61歳)。BRCA遺伝子を持っていることと、姉が乳がんにかかったことから、乳がんにかかる可能性を減らすため、2013年に卵巣摘出術(卵巣を摘出する手術)を受けました。
ところが、ナオミさんはCA-125血液検査(がんの活動の潜在性をさぐるためのもの)の結果を見ていませんでした。「手術台から起き上がったとき、ステージ3の卵巣がんであることを知りました」とナオミさん。
「担当医は待ったなしで、私のからだにできていたがんをできるかぎり、とりのぞいてくれました。それで命が救われたのです。でも、CA-125検査は思っていたより信頼のおけるものなのだと思いました。それにしても、血液検査を受けてから2年も経たないうちに、ステージ3の卵巣がんになってしまうとは」
昨年、ナオミさんはがんを再発してしまい、もっと早くに卵巣摘出術を受ければよかったと後悔したそう。でも、担当医と家族や友人の支援に恵まれたこと、そしてポジティブな考え方が彼女の助けとなったそう。
「もし、統計的にがんになりやすい傾向があると分かった場合は、するべきことはあまり先延ばししないこと」とナオミさんは強調します。
04. 目標があれば、強くなれる
胸骨から膣までつづく傷跡を想像してみてください。これが、中学校で教師をしているテリーさん(現在55歳)が2017年の終わりにステージ4の卵巣がんと診断された結果、負ったもの。
「医師は手術で私のおなかをあけて、あらゆるものを取り出しました」とテリーさん。
「子宮や卵巣など女性生殖器のすべてと腹膜(胃壁)、結腸の一部。がんがそこまでひろがっていたのです。医師が私の身体からとった組織は、小さなバケツ1杯分にもなりました」
テリーさんの入院期間は当初5日間の予定でしたが、合併症が起きてしまい、化学療法の開始が遅れ、結果として6週間にも及びました。
でも、テリーさんは学校のはじまる8月までに、仕事へ復帰することを心に決めていました。
「入院中は、ふだんの私の生活とは違って、ずっとじっとしていなければなりません。でも、日常に戻るのだという目標を持っていました。そのことは心の支えになったと思います」とテリーさん。そんなテリーさんの今の目標はヨガと運動を再開することだそう。
05. 本当の友だちが分かる
アンさん(現在63歳)は49歳のときに、卵巣がんであると診断されました。そのとき、あるサバイバーの女性は、がんは本当の友だちが分かる贈り物のようなもの、と言ったそう。
「ずいぶん変なことを言うな、と思いました。でも、後になってみるとその言葉は100%正しかったのです」とアンさん。
「治療していた頃をふりかえってみると、私自身よりも、むしろ家族や友人のほうがもっとつらかったと思います。化学療法は大変だったし、私はそれに耐えなくてはならなかったけど、彼らはそんな私の様子を見ていなければいけなかったのですから。つらい治療を乗り越えられたのは、家族や友人の支えがあったからです」
「化学療法を受けているあいだに、たくさんの友人ができました」とリンダさん(66歳)も同じ意見。
リンダさんはこの5年間、卵巣がんと闘っています。「友だちの何人かは亡くなってしまいました。それでも、人生には生きる価値があるのだ、ということを胸に刻まないと。私は娘と一緒に廊下に出て、孫たちに会うことだってできる。いつも、胸に希望を抱いているのです」
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Christie Griffin/What No One Tells You About Being Diagnosed With Ovarian Cancer
訳/STELLA MEDIX Ltd.