心機一転、頑張っていこうと思っていたのに、気持ちが焦ってどことなく気持ちが空回りしてしまったとき……適切な心の持ち方を知っていたら、もう少し楽に生きていけそうです。

五月病という言葉もよく耳にしますが、うまくいかないときにこそ、自分を認めて自己肯定感を高めていきたいもの。

少し不調を感じたときに、どんな心構えでいたらよいか、そんな疑問がスッキリ晴れる本を見つけました。

自分に罪悪感は持たなくていい

斎藤学著『すべての罪悪感は無用です』(扶桑社)には、生きづらさに悩む、多くの人の心に寄り添った問題解決の方法がまとめられています。

この本を書いた精神科医であり家族機能研究所の代表を務める斎藤学先生は、アルコール依存症などの「依存症」という用語を世の中に定着させた人物。依存症の家族に代表される、温かさや安心感などを与えられない機能不全家族で育った「アダルトチルドレン」という概念を、日本中に広めたことでも知られています。

本著には、著者が顧問を務めているメンタルサービスのホームページ上でネットカウンセリングしてきた数々の言葉が収められており、生きづらさを抱えている人へのヒントを7つの章(「苦」「愛」「囚」「恐」「寂」「嘆」「怒」)に分類。

「苦」には生きづらさへの苦悩、「愛」には愛してくれる人がいないという悩み、「因」には「〜すべき」というさまざまな心の呪縛、「恐」には人間関係からはじき出されると感じる恐怖、「寂」には寂しさや孤独とは何なのか、「嘆」には自分に起きた不幸に対する嘆き、「怒」には傷つけられた人への怒りなどといった内容があげられています。

人が抱える心の悩みというものは、このどこかの感情に該当するのではないでしょうか。本著では、解決に導くための解説がつけられていて、自分自身に対して罪悪感を持つ必要はないのだということがよくわかります。

親友に接するように、自分に接してみよう

「多くの人が、根拠のない自己処罰気分に陥り無用な罪悪感を背負っているがために、自分を貶めたり、傷つけたりしながら生きざるを得なくなっており、それがさまざまな病いのもとになっている」

齋藤学『すべての罪悪感は無用です』4ページより引用

アル中、過食・拒食サイクル、ギャンブル依存症、ワーカホリックなどといった病に苦しむ人々に寄り添ってきた著者。臨床の中で見えてきたのは、病人である彼・彼女らは緊張しやすく、人付き合いが苦手で、人に弱みを見せることができない人々であるということです。

ありのままの自分ではやっていけないと思っている点で、対人恐怖の人と同じであるといえるでしょう。

絶えず自分にダメ出しをして自己評価を下げ、必要以上に自身を大きく見せようとして疲れ果ててしまう。そして、いつしか本当の自分を見失ってしまう、悪いパターンに陥りがちに……。深い病に至らなかったとしても、日常生活においてそんな心境になることは、どんな人にもよくある話です。

そんな“非生産的な自己対話”を切り替えて、空回りのサイクルから抜け出すためには、どうしたらよいのでしょうか。その答えは意外と簡単。「あなた自身が、あなたの親友にするように自分に接してあげることです」と、著者はいいます。

もし、親友が落ち込んでいたら、「あなたはダメね」とは言わないはずです。「あなたは大丈夫。ちゃんとやれている」と、自分自身に声をかけて親切にしてあげる

小さい頃、「そんなこと、あなたにはできないわよ」などといった言葉を親から言われたことがあるかもしれません。こうした考えが、いつしか頭に叩き込まれて自生し、それ以後の行動や気分に深刻な影響を与えるのだといいます。

大人になった今、このように、意識的に自分自身を認めていく必要があるといえるでしょう。

自分の価値や存在を認めよう

だからといって、自己肯定とは、自分がすることを何でも正しいと判断することではありません。

自己肯定感とは、何かの能力に飛び抜けて長けているわけでもない、不完全な自分を認めて受け入れること。そして、そんな自己の価値を信じて、存在を肯定する感覚のことを指しています。

人間はときには間違ったこともするし、失敗もします。けれども、失敗を糧にすることはできるし、間違ったことを直していけばいいのです。(中略)
つまり、自分の不完全を含めて肯定的にとらえることを「自己肯定」と言うのです。

齋藤学『すべての罪悪感は無用です』37ページより引用

自己肯定感の強い人は、自分の誤りや足りない部分を素直に認め、行動を改めることができます。そして、失敗しても必要以上にくよくよせずに、「次はこうしよう」と、これからの糧を見いだすことができる。だからこそ、自然と周囲には安全な人が集まってきて、危険な人は遠ざけながら歩いていくことができるのかもしれません。

何よりも、大事なことは、「他人のために生きてきた人生を振り返ること」。必要であれば、他人への怒りをしっかりと吐き出していく。誰のためでもなく誰のせいにもしないで、自分自身をハッピーな状態にすることが第一にするべきことである、と著者はいいます。

そんな心構えで日々の物事に向き合っていくと、自分をもっと大切にしながら生きていくことができそうです。

もし、いつものように調子が出なくて空回りしている自分がいたとしても、罪悪感を持たなくて大丈夫。「もっと頑張らなくてはいけない」と、自分を否定して鞭打つのではなく、親友のように今の自分に優しく声をかけ、そのままを受け止めていく

焦らずに自分を認めながら、自己肯定感を上げていきたいものです。

すべての罪悪感は無用です

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すべての罪悪感は無用です

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