5月も終盤に入り、日やけが気になる季節になってきました。「毎日UVケアしているから大丈夫」…… という方、もしかしたらその日やけ止めでは不十分かもしれません。
皮膚科医であり、光老化啓発プロジェクト委員会の理事として太陽光線による「光老化」の啓発活動を行う川島眞先生に、UVケアの盲点についてお話を伺いました。
肌老化の8割は「光老化」
image via shutterstock「光老化」とは、紫外線をはじめとする太陽光線を浴びることにより皮膚にあらわれる、シミ・シワ・たるみなどの老化現象のこと。
太陽光線は、適度に浴びれば一日に必要なビタミンDが皮膚で生成され、健康維持に役立ちます。
しかし長時間、無防備に浴びると体内に活性酸素を生成し、細胞を酸化させるなどして様々なダメージを与えます。これが、肌のくすみやハリの低下をもたらし、シミ・シワ・たるみへとつながるのです。
川島先生によると「光老化」は加齢による自然老化とは異なるもので、じつは肌の老化現象の8割が「光老化」によるものなのだそう。
見た目が衰えるだけでなく、いぼや皮膚がん、白内障といった病気も引き起こします。
老化をもたらすのは「紫外線」だけではない
ここで太陽光線の性質について少しおさらいしておきましょう。太陽光線はその波長の長さによって、紫外線(UV)、可視光線(ブルーライトを含む)、赤外線(近赤外線を含む)の3つに分けられます。
NPO法人 皮膚の健康研究機構 光老化啓発プロジェクト委員会HPより太陽光線のなかでも、とくに酸化を起こすエネルギーが高いとされるのが紫外線。研究も早くから行われ、光老化=紫外線という認識が強かったと川島先生は話します。
「しかしよく考えてみると、紫外線や可視光線といった領域を決めたのは人間です。紫外線は肌を老化させるのに、ブルーライトや近赤外線は肌になんの害も与えない……、そんなことがあるでしょうか?
紫外線よりパワーは落ちるかもしれませんが、紫外線以外の光がなんらかの障害を起こす可能性は大きい。とくに近赤外線の害はこれからもっと注目されるようになると考えています」(川島先生)
たるみの真犯人は「近赤外線」?
近赤外線の怖さは、その浸透力にあるという川島先生。人間の体は、表面から順に角層、表皮、真皮、皮下脂肪組織、筋膜、筋肉……といくつもの層になっていますが、紫外線は真皮までしか届きません。
しかし太陽光線には波長が長いほど皮膚の奥に入り込む性質があり、近赤外線は真皮の下の筋膜や筋肉にまで届くといいます。
「これまで肌のたるみは紫外線のせいだと考えられてきましたが、厳密に考えると紫外線の作用では説明がつかないんです。
たるみとは、筋膜や筋肉の構造が弱くなり、支えがなくなって起こる現象。しかし紫外線は、筋膜や筋肉のレベルまでは届きません。
でも一番たるみやすいのは、やっぱり日に当たりやすい顔などの肌の部分。それでは、筋膜や筋肉レベルまで深く入る光はなんだろうと考えると、近赤外線なんですね」(川島先生)
image via shutterstock実際に皮膚に近赤外線を強く当てる実験をしたところ、筋膜や筋肉の層にまで浸透し、たるみの障害を起こすことがわかってきたそう。
「困ったことに、SPFとPAで表される紫外線予防効果と近赤外線の予防効果は、必ずしも一致しません。日やけ止めによってはSPF・PA値が高くても、近赤外線を防げていないことがあるのです
私たちは近赤外線の肌に与える影響をもっと数値化する必要があります。そうしないと、知らずにずっと近赤外線に当たり続けることになってしまいます」(川島先生)
川島 眞先生に聞く「光老化」と近赤外線対策、後編では日常でできる対応策や、先生が危惧する日やけ止めの誤解についてお話をうかがっていきます。
川島 眞先生
1978年東京大学医学部卒業。東京女子医科大学皮膚科主任教授を経て、2018年 東京女子医科大学名誉教授に就任。専門はアトピー性皮膚炎、ウイルス感染症、美容医療。日本香粧品学会前理事長、日本美容皮膚科学会前理事長、日本近赤外線研究会理事長、日本コスメティック協会理事長、皮膚の健康研究機構副理事長。
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