認知症の予防から仕事や運動のパフォーマンス向上……といった話まであるコーヒーの効用ですが、1日何杯くらい飲むのが適当なんでしょうか。コーヒーが体に与える影響については、よいもの悪いもの含め膨大な研究結果があり、いったいどれを信じていいのやら……と戸惑ってしまいます。
研究の規模や測定手法などはさまざまなので、当然信頼性にもバラつきがあります。でも、私たちが信頼性を判断するのはちょっと難しいもの。そんなときは、たくさんの研究を評価して適切なものをピックアップ、抽出したデータを横断的に解析する、メタアナリシスを用いた研究結果が、ひとつの目安になりそうです。
そこで、今わかっているコーヒーの代表的な効果について、研究結果をまとめてみました。
コーヒーの健康効果:研究結果から解析
image via shutterstock肝臓がん:1日4杯飲む人は53%リスクが低下
image via shutterstock13件の研究(参加者210万5104人、肝臓がん4227ケース)をピックアップして解析。うち7件の研究データをコーヒー摂取量の解析に用いています。
1日4杯飲む人は肝臓がんのリスクが53%低下します。5杯で61%、6杯で67%、7杯で73%となっています。結果、コーヒーを飲む量が増えるほど肝臓がんのリスクが低下する(0~7杯)ことが示されました。(Justyna Godosさんらによる2017年の研究)
心血管疾患:1日3~5杯でもっともリスクが低い
image via shutterstock36件の研究(参加者127万9804人、心血管疾患3万6352ケース)をピックアップして解析。うち29件の研究データをコーヒー摂取量の解析に用いています。
コーヒーを飲まない人に比べて、1日4杯飲む人は心血管疾患のリスクが7%低く、1日3杯もしくは5杯飲む人は6%低いとの結果となりました。また、コーヒーの大量消費が心血管疾患のリスクが高まるとの研究結果もありますが、この解析結果からは関連性がないことが示されています。(Ming Dingさんらによる2013年の研究)
2型糖尿病:1日6杯でリスクが33%低下
image via shutterstock28件の研究(参加者110万9272人、2型糖尿病4万5335ケース)をピックアップして解析。うち27件の研究データをコーヒー摂取量の解析に用いています。
結果、コーヒーを飲む量が増えるほど2型糖尿病のリスクが低下する(0~6杯)ことが示されました。コーヒーを飲まない人に比べて、たとえば1日1杯飲む人は8%、2杯で15%、3杯で21%、4杯で25%……といった割合で2型糖尿病のリスクが低下します。(Ming Dingさんらによる2014年の研究)
子宮体がん:1杯増えるごとにリスク約5%低下
image via shutterstock9件の研究(参加者140万4541人、子宮体がん1万548人ケース)をピックアップして解析。うち9件の研究データをコーヒー摂取量の解析に用いています。
結果、コーヒーを飲む量が増えるほど子宮体がんのリスクが低下する(0~7杯)ことが示されました。コーヒーを飲まない人に比べて、たとえば1日4杯飲む人は子宮体がんのリスクが20%低下します。5杯で24%、6杯で28%、7杯で32%となっています。肥満(BMI>30)や閉経後といった条件も考慮されたものです。(Alessandra Lafranconiさんらによる2017年の研究)
閉経後乳がん:1日4杯でリスクが10%低下
image via shutterstock21件の研究(参加者106万8098人、乳がん3万6597ケース)をピックアップして解析。うち13件の研究データをコーヒー摂取量の解析に用いています。
結果、コーヒーの摂取量と乳がんのリスクとに相関はみられませんでした。ただし、閉経後の女性に限定した場合、コーヒーを飲む量が増えるほどリスクが低下する(0~6杯)ことが示されたようです。1日に4杯のコーヒーを消費すると、閉経後のがんリスクが10%低下しました。喫煙状態やBMIの違いも考慮されたものです。(Alessandra Lafranconiさんらによる2018年の研究)
もちろん、ネガティブな研究結果もある
image via shutterstockご紹介してきた研究結果を見ると、コーヒーを飲めば飲むほど効果が高まるようにも捉えられます。ただ、コーヒーには、カフェインやフェノール類、ジテルペン、クロロゲン酸……といったさまざまな成分が含まれていますので、どれが功をなすのかなさないのか……には未知数の部分が多いようです。
こういった成分が含まれる量も、当然コーヒーの種類や焙煎方法なんかで変わってきます。たとえば、コーヒー1杯あたりのカフェインの量を考えても、75~150mg(80~100mgくらいのものが多いよう)と大きくバラつきがあります。
もちろん、片頭痛持ちの方が1日3杯以上の飲むと偏頭痛発症につながる、妊娠中に2~3杯のコーヒーに相当するカフェイン摂取で赤ちゃんの発達に影響を与え成人期の肝疾患のリスクを高める(Medical Xpress/ラットによる研究)といったネガティブな研究結果もあります。
結論:「1日3~5杯コーヒーを飲む」のが良さそう
image via shutterstockご紹介した研究結果も含めて、いまわかっていることはあくまで暫定的なものと捉えるのがよさそうです。体調や時期によってはコーヒーの摂取を控えることも考慮すべきでしょう。
心疾患のリスクが低い最も低いのが3~5杯、そしてFDAが推奨しているカフェイン摂取量が1日400mgまで……とのことを考えると、1日3~5杯コーヒーを飲むと、コーヒーによる恩恵が最大化できそうです。