自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダケア戦略術」。前回は「生理の出血量が多い過多月経」について、お届けしました。今回は、「生理のある女性に多い貧血」を女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

生理と貧血の関係、知っていますか?

生理は女性にとって、大切な体のサイクル。大切なことのはずなのに、生理は意外と知らない自分の体のことのひとつです。生理が貧血の原因となる可能性を知っていますか?

約3割の女性が「貧血の原因が生理の可能性が高いことを知らない」という調査結果があります。*1

「婦人科の病気が原因になって、貧血になることがあるということを知っていますか?」と聞いたところ、「知っている」と答えた人は約34%。「見聞きしたことがある」と答えた人は約38%。「知らない」と答えた人は約28%でした。

婦人科の病気や生理の出血が貧血の原因になることを知らない女性が約3割。このように、鉄欠乏性貧血と婦人科の病気が関係あることを知らない女性が少なくないのです。特に、生理の出血が多い人は要注意です。気づかないうちに貧血が進んでいる可能性があります。

生理の出血量が多い人は、貧血の可能性大

出血量の多い過多月経症状のある女性は、貧血症状にも悩んでいるという調査もあります。*1

生理期間中かどうかは問いませんが、貧血に関連した症状はありますか?」と聞いたところ、次のような結果でした。

疲れやすい、体のだるさを感じる 61.2% めまいや立ちくらみ、動悸・息切れがする 52.8% 頭痛や頭が重い感じがする 51.5% 血液中の鉄が少ないと言われた 19.8% 爪が弱い、割れやすいなど 19.6% 脱毛、髪の毛が抜けて薄くなった 18.6% 検診や人間ドックで貧血と指摘された 13.8% 氷をバリバリと食べたくなる 8% 脈が速い 7.8% 味を感じにくい、料理の味が薄いと感じる 4.7%

上記は、貧血の人によくある症状ですが、過多月経の女性は、このような貧血症状があると答えているのです。

みなさんは、日常に潜むこのような症状、ないですか? もしあれば、貧血の可能性があります。貧血はゆっくり進行するため、体が慣れてしまい、平気で生活している女性が意外とたくさんいるのです。上記に、思い当たる症状がないかチェックしてみてください。

過多月経の症状がある女性のうち、80.6%もの割合の人が貧血とみられる症状がありました。にもかかわらず、貧血の診断を受けている女性は、23.3%と低い割合です。この貧血と診断を受けている女性の中で、婦人科に相談したことがない人は、72.5%にものぼりました。

*1「女性のカラダと意識調査レポート 生理のミカタ

実は要注意! 体からのSOSです

貧血は、女性に多い血液の病気です。貧血では、めまいや疲れやすさなど、さまざまな不調が現れます。

症状がない人でも、貧血をきっかけに隠れている病気が見つかることもあります。貧血を甘くみてはいけません。実は心臓に負担がかかる怖い病気です。健康診断で貧血と言われたら、まずは医師に相談してください。

血液の成分であるヘモグロビンは、臓器へ酸素を運ぶトラックのようなもの。これが少なくなるのが貧血で、貧血になると各臓器への酸素の供給が減って、さまざまな症状が起こります

また、酸素の薄い血液で、全身に酸素を送ることになるため、心臓は心拍数を増やして、送り出す血液量を増やそうとします。そのため、心臓に負担がかかり、長い間放置すると心不全につながるおそれすらあります。

参考までに、血液検査の値(ヘモグロビン値)と貧血の重症度を紹介します。女性では、ヘモグロピン値がおよそ11g/dLになると治療が必要と言われています。

*参考資料/生理のミカタ 貧血と生理の関係

貧血の相談はどこに行けばいいの?

まずは、婦人科と消化器科で相談をしてみましょう。

女性の貧血は、生理の量が多すぎること(過多月経)による貧血が約6割、次に消化管の出血による貧血が約2割と言われています。ですから、まずは婦人科を受診するのがよいのでは、と思います。

そのほかの原因としては、鉄の摂取不足、吸収障害や腎臓、血液の病気などがあります。

貧血の種類には、上記にあげた原因によって異なりますが、貧血の 90%以上が体内の鉄が足りなくなることによって起こる”鉄欠乏性貧血”です。

婦人科を受診した場合、検査することは、子宮内膜増殖症、子宮体がん、帝王切開のあとによる過多月経、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、ホルモンの異常などの有無がないかどうかを確認します。具体的には、内診や経腟超音波で診ます。

毎月、起こる生理による出血は、想像以上に多いのです。子宮は筋肉でできていて、ギュッと収縮することで、生理の出血を少なくします。この働きが弱くなるような子宮の病気はないか、何らかの病気がなくても生理の量が多すぎて貧血になっていないかを婦人科で調べます。

「生理の量が多いくらいで病気なの?」「少しくらい量が多いのは生理だからしかたない」と思い込んでいる人も多いかもしれません。

でもそれが過多月経の症状なら、過多月経の背後には、女性特有の病気が潜んでいることが少なくありません。症状から過多月経をチェックしてみましょう。

⇒「出血が多くても生理だから仕方ない! と思っていませんか? 過多月経は治療できます

もしも、過多月経なら婦人科で原因を調べて、治療できます。

消化器科で調べてくれること

婦人科以外では、貧血の原因となる病気は、消化器系の病気です。消化器内科を受診するのがよいでしょう。

まず考えられるのは、胃粘膜の炎症や腫瘍です。鉄は、胃から吸収されるため、胃粘膜に異常があると、鉄の吸収がうまくできなくなります。そのため、胃粘膜に炎症や腫瘍がないかを胃のレントゲンか内視鏡などで検査します。

また、消化管からの出血ということも考えられます。胃や大腸の異常により、消化管からの出血が起こっていないかどうかを調べます。胃の内視鏡や大腸の内視鏡で調べます。

さらに、痔などの可能性がないかも調べます。

婦人科や消化器科を受診して貧血の原因が異常がない場合は、内科(腎臓内科・血液内科など)を受診して、骨髄・腎臓・脾臓・血液の病気の可能性がないかを調べてみましょう。

貧血の治療はどんな方法が?

貧血の治療は、原因によって異なりますが、体のどこかから出血していたり(過多月経や消化器系の病気も含め)、鉄がうまく吸収できなかったりする場合は、まずは鉄剤を使って貧血を改善する治療を行います。

鉄剤を服用すると、吐き気が強いなどの場合は、注射などもありますので、医師や薬剤師に相談しましょう。

さらに、貧血の原因となる病気の治療をします。

婦人科系の病気による過多月経なら、生理の量を減らす治療をします。消化器の病気なら、原因部分の治療をして出血を止めます。

赤血球がうまく作れない、赤血球がどんどん壊されているなど、骨髄・腎臓・脾臓・血液の病気の場合はその治療を行います。

貧血は、放っておかず、早く治療する必要がある血液の病気です。軽く考えずに、受診することをおすすめします。

貧血が気になる方は

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増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

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