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もう「薬」がいらない時代がくるのかも……?

プラセボ(プラシーボ)効果とは、臨床試験に参加している患者が、効能のない錠剤などの偽薬を服用した後に、治療薬と信じて楽になったと感じる現象をいうもの。

まもなく、プラセボ治療がクリニックや薬局で行われるようになるかもしれません。

これまで、偽薬の効用を信じることおろかだ、とか、偽薬が効くのなら病気じゃなかったのでは? といったようにプラセボ効果はありえないと批判されてきました。しかし、研究が進展するにつれて、「プラセボ効果はない」という批判が徐々にしりぞけられるようになっています。

やっぱりプラセボ効果はあるのかも!?

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「長い間、プラセボ(偽薬)は、“患者に本物を服用していると信じ込ませることで機能する”と考えられてきました。だから、プラセボに反応した患者は、権威に異常に従順であるか、あるいは知性が低いとも言われてきたんです」と、『The Cure Within: A History of Mind-Body Medicine. 』の著者アン・ハリントン博士(米国ハーバード大学・科学史教授)。

しかしながら、近年では、脳の画像診断などの科学的進歩や、プラセボに反応する身体的・心理的反応を示すさまざまな症例研究のおかげで、もはやそうではないと考えられるように。

プラセボ効果について進められている現在の研究を見ていきましょう。

プラセボが脳を変える

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プラセボ効果が明らかになってきたのは、20世紀半ば。

薬の開発時には、その新薬がプラセボよりも効き目があり、優れていることを確認するために臨床試験を行います。しかし、ある臨床試験をとおしてプラセボ効果が明らかに。プラセボ自体が参加者に大きな効果をもたらすとすぐに判明したのです。

「データを見ると、砂糖の錠剤を服用している人たちも時々よくなっていることが明確になりました」と、ノースウエスタン大学ファインバーグ医学部教授ヴァニア・アプカリアン博士。

さらに、研究を進めると、根本的な理由はひとつではないことが明らかに。

継続的に繰り返されることで脳が本当にその通りに働く「条件づけ」と、実際には薬が含まれていないのに薬を打たれたことを聞いただけで痛みが和らぐ「暗示」の2つが、脳に備わる痛みに対する反応を変える可能性があることがわかってきたのです。

神経科学の分野において、条件付けは神経伝達物質のやりとりを変えるとされます。「過去に治療を受けて効果を経験すると、脳は関連付けて神経回路を作り、治療されると癒やされたと感じるようになるのです」と、コロラド・ボルダー大学・心理学および神経科学教授トーア・ウェイガー博士。

民間療法も似たようなもの

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そういった研究以外でも、プラセボ効果を体験したことがある人はいます。

例えば、エビデンスのない民間療法で具合が良くなったときに、再び同じ療法をすると、また同じことが起こる。これは脳が記憶していて「そうであるはず」だと判断したためです。

ある要因のために条件付けが強化され、改善するはずという期待につながる。「治療を受け、効くと言われた場合、その暗示だけでポジティブになり、症状の自覚を変えるのです」とウェイガー博士。

「気分は快適」と、自分に言い聞かせるだけで、脳はもっとその通りに感じるようになるのです。

こうした変化は、人それぞれ。プラセボ効果を最大限に発揮しやすい人は、自分の体と感情をつよく意識し、さほど不安感がなく楽観的である傾向が。

暗示に反応しやすいと考えている人も効果を示しやすくなります。また、特定の遺伝子が、個人の脳の反応と関連しており、プラセボに対する感受性にも関係しています。

次回は、プラセボで痛みは和らげることができるのかを掘り下げます。

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Alice Oglethorpe/How to Use the "Placebo Effect" to Your Advantage/STELLA MEDIX Ltd.(翻訳)

RSS情報:https://www.mylohas.net/2019/11/201807pvn_placebo.html