誰にでも、ふとさみしさを感じることってあります。

孤独とは人間的な感情で、これまでも多くの芸術家がその気持ちを言い表そうとしてきました。しかし今、孤独は単なる情緒的反応としてばかりではなく、精神的・肉体的に有害で、感染性のある深刻な病気としても扱われるべきと、多くの専門家が主張しはじめています。

孤独は死亡リスクが高い!?

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複数の調査研究のメタ分析によると、孤独は一日にタバコ15本を吸うことに匹敵し、肥満症よりも死亡リスクを高めるそう。ですから、この感情を体に影響を及ぼす病気のひとつとして扱うのは当然とも言えます。

人は社会的な生き物。単に他人との交流を楽しむだけでなく、社会的なつながりを生きるために必要としています。社会的に孤立していると、精神的 ・肉体的な苦痛となり、そのストレスが健康にまで悪影響を及ぼします。孤独感が(2週間以上)続くと、高血圧に加え、うつ病や心疾患、またアルツハイマー病や脳卒中などといった病気のリスクが高まるのだそう。その原因は炎症の悪化にあり、そのような過度な炎症が、慢性疾患へとつながっていると考えられています。

「他人とのつながりが心の健康と関係していることは分かっていても、それが体の健康にも強く影響していることはよく知られていません」と、ブリンガム・ヤング大学の心理学教授、ホルト・ランスタッド博士は言います。

ホルト・ランスタッド博士の研究では、孤独な人の早期死亡リスクは26%も高まることが分かっています。また人とのつながりが少ない、あるいは全く無い社会的に孤立した人は29%、ひとり暮らしの人は32%も早期死亡リスクが高まるそう。

「ダイエット、運動、食事など健康に影響してくるあらゆることと同様に、社会的な人間関係についても真剣に考える必要があります」とランスタッド博士。

孤独な人が増えているのはなぜ?

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孤独を病気とすれば、未だかつてないレベルで世界中でまん延しています。アメリカのひとり暮らし人口は増え続けており、それが人々の孤独感を高めている理由のひとつであると言われています。

その他の要因として、テクノロジーの目覚ましい進化も挙げられています。カリフォルニア大学サンディエゴ校ヘルシー・エイジング学部の学部長であるデリップ・ジェスト医師は、「(テクノロジーの進化によって)社会は劇的に変化し、孤独も確実にその一部です」

これには(これだけが原因では決してありませんが)ソーシャルメディアが大きく関与していると考えられています。実際には、シグナ社が米国人成人2万人を対象に行った最近の調査によると、Z世代(1990年代半ばから2000年代前半生まれの世代を指す)で非常に孤独と感じている人は、ソーシャルメディアをやっている人とやっていない人でほぼ均等だと分かっています。

孤独になりやすいのは30〜60代

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シグナ社の調査では、若い世代と超高齢者が孤独を感じており、最も孤独を感じているのは20歳以下であると示されました。

若い世代の場合、社会的なつながりが少ないと孤独を実感。しかし、この世代は友人の数をどれだけ増やせるかが問題になるため、身近なところで解決しやすくもあります。

高齢者は、それとは対照的に、人間関係でも量よりも質に重きを置き、パートナーの死で悲しむことがあっても、人生経験から死別や孤独をよりうまく受け入れるようになっています。ジェスト医師によると「高齢者は想像以上に幸せに暮らしています」

こういった様々な要因からみて、最も孤独になりやすい状態なのはU字型曲線のちょうど真ん中にあたる世代(30歳~60歳)と言われています。皮肉にも、壮年期~中年期(※)は子ども、両親、同僚、それに友人など、自分以外の人との関わりにおいては忙しくなる時期。自分のための時間がとれないことにストレスを感じるほどなのにもかかわらず、孤独を感じている人がいるとはなかなか想像しにくくはあります。

しかし、ひとりでいることと、孤独を感じることは違うのです。孤独は人間関係の質に左右されます。人間関係により満足している人ほど、孤独感が低くなります。中年期は人間関係に対する不満が最も大きく、だんだんと体には変調が生じてくる時期です。

「高齢者がかかる孤独によって引き起こされる病気は、発症までに数十年はかかりますが、実は中年期あるいはそれよりも以前から、細胞レベルで進行が始まっているのです」とカリフォルニア大学デイヴィッド・ゲフィン医科大学院精神医学・生物行動科学部門の教授であるスティーブ・コール博士は言います。※厚生労働省の提言『健康日本21』の資料では、壮年期31~44歳、中年期48~54歳としています。

30代が孤独になってしまう原因は?

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孤独を感じる理由は、壮年期と中年期でも違ってきます。

壮年期では、学生時代からの友人と徐々に疎遠になり、職場の同僚との付き合いの方を優先するようになります。しかし、職場の同僚は助け合う仲間である一方で、ライバルでもあるシビアな関係。また、子育てが始まるとママ友とつながるようになりますが、ママ友は子育て以外に共通点は少なく、お互いをよく知りません。

職場では「仕事に追われるせいで、深いつながりを築くかわりに、損得で考えて行動しがちに」とコール博士。仕事上で入れ替わり立ち代わり人と接していても、孤独感から逃れることはできないのです。

1万5000人(18歳~79歳)を対象とした2016年の研究では、30歳~49歳が人間関係の不満足度が最も高いことが報告されています。

また、ノルウェー人研究者であるマンヒルド・ニコライセンさんとカーステン・ソールセンさんの行った研究によると、自由気ままな生活が心に残っている人がつらくなりやすいのだそう。ニコライセンさんは、この世代の多くが、子どもの世話と親の介護の“板挟み状態”であることを指摘します。友人と出かけたりする時間が限られるとがっかりし、孤独を感じるようになるのです。

40〜50代が孤独になってしまう原因は?

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40代に入ると、親族の死のほか、離婚、子どもの巣立ち、失業を経験することもあり、社会的なつながりがますます脆弱になっていきます。また忙し過ぎるあまり、自分の心のケアも怠りがちに。

ジェスト医師によると、そんな50代が孤独になりやすくなるピークなのだそう。ジェスト医師は、女性は閉経、男性は男性更年期障害になる年齢でもあることも指摘し、「人生で初めて死を意識するようになります」と説明します。

また関節炎に加えて、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が始まるのもこの時期から。「若い頃とは違い何らかの健康上の問題を感じ始める時期です」 とコール博士。「それら全てが人間関係に対する不満や社会的な孤立につながります」

明晩の『Prevention』記事に続きます。

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Jennifer Wolff/Loneliness Is the Quiet Health Epidemic Impacting Your Heart, Brain, and Longevity/STELLA MEDIX Ltd.(翻訳)

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