ブームとなってからしばらく経つ「糖質制限ダイエット」ですが、実はまだよく知らない人が多いのも事実。

今回は、管理栄養士であり、糖質制限についての著書を多く出す大柳珠美さんに、明日から始められる「糖質制限ダイエット」の基本を紹介して頂きます。

糖質制限ダイエットの正しい方法や効果、低糖質の食材、糖質オフおかずのレシピなど……、これを読んで効率的に「糖質制限ダイエット」を始めましょう。

糖質制限ダイエットは、ビフォーアフターのセンセーショナルなCMが話題になるなど、確実に体脂肪を落とせる食事として急速に広がりました。

これまで「◯◯ダイエット」など、いくつものダイエット食ブームが登場しては消えていく繰り返しのなか、糖質制限ダイエットは単なる流行りではなく、医療の分野においてもその減量の効果が認められ、推奨されています。

糖質制限ダイエットとは?

糖質制限ダイエットの特徴は、糖質オフすることで余分な体脂肪を燃焼させるダイエットであるということです。

これまでのカロリーを制限するダイエットでは、カロリーの高い食品を控える結果、肉や魚介などの動物性タンパク質や、ごまやアーモンドなどの種実類、アボカドのような脂質の高い果物などを控えることになります。

その結果、カロリーを制限するダイエットによって減るのは、体脂肪だけでなく、筋肉、骨量、気力などです。

私たちのからだは、頭の先からつま先まで、すべて、自分が食べたものでできています。脳も、半分がタンパク質、半分が脂質でつくられます。

骨も、カルシウムばかりがクローズアップされがちですが、骨はタンパク質をメインにつくられます。ハリのある皮膚の材料となるコラーゲンも、タンパク質です。

美しい髪や、強い爪も、タンパク質がなければつくることができません。食べたものを消化する消化酵素もタンパク質です。

そして、やる気や落ち着きなど心の状態をつくる神経伝達物質も、タンパク質からつくられます。

糖質制限ダイエットでは肉や魚介、卵や大豆製品などのタンパク質が豊富な食材や、野菜、海藻、きのこ、こんにゃく、おからなどの食物繊維が豊富な食材を組み合わせた“おかず“は、毎食、間食でも、しっかり食べていきます。

カロリー制限ダイエットや絶食ダイエットは体重という数値だけを減らすことが目標となりがちですが、美しく、健康的に減らしたいのは、 お腹周りや腰回り、二の腕やあごまわりなど、余分な体脂肪ではありませんか?これが叶うのが糖質制限ダイエットです。

「糖質制限ダイエット」でなぜ痩せる?

人体のエネルギーシステムは「体脂肪~ケトン体システム」と「血糖値~グリコーゲンシステム」の2つあります。

このシステムには使われる優先順位があります。糖質を摂取して血糖値を上げてしまうと、その血糖値を優先的にエネルギーとして使うため、その間は燃やしたい体脂肪の燃焼はストップしてしまうのです。

それとは反対に、血糖値を上げない時間が長く続くほど、その間、体脂肪をエネルギーとして使うので、効率的に体脂肪を減らせます。

「糖質制限ダイエット」3つのNG

糖質オフのことばかり気にする糖質制限ダイエットには、肉、卵、チーズだけを食べ続け、野菜も糖質を少しは含むという理由で避けるようなものもあるようですが、それでは、食物繊維不足による、腸内環境の悪化が懸念されます。

腸内環境を整えることも、実は、ダイエットには必須の条件なのです。食事量を減らしても痩せないという方は、タンパク質やビタミン不足の結果、代謝が落ちてしまうことに加え、腸内環境の痩せ菌(ビフィズス菌)の減少もその原因として考えられます。

痩せ菌を増やすために役立つのが食物繊維です。 今述べたように「糖質制限ダイエット」を実践する上で気をつけたい3つの間違いを紹介します。

1. 肉、卵、チーズなど特定の食材だけを食べることによる栄養の偏り

肉だけでなく魚を食べることはとても大切です。なぜなら、脳機能をつくったり、炎症やアレルギーを予防したり改善するのは、魚に多く含まれるEPAやDHAしかありません。

つまり、魚を食べることでしか得られないのです。大豆製品は、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどミネラルをバランス良く含むという特徴もあります。

乳製品の過剰摂取は、アレルギーのリスクが高まるので注意が必要です。 野菜や海藻の色素や苦みなどの成分は、ポリフェノール、カロテノイドといいい、体内で常に発生される活性酸素を除去し、病気の予防に欠かせません。

2. 知らないうちにカロリー制限ダイエットになってふらふらに

1食に食べる量が少ない上に脂っこいものが苦手な方は、ノンオイルのサラダや野菜のスープ、豆腐などでお腹いっぱいになってしまい、結果、カロリー制限食になってしまい、力が入らない、ふらふらになってしまう傾向があります。

そのような場合、ゆでたささみや魚の缶詰、ゆで卵など、食べられるタンパク質系食品と、オリーブオイル、アボカド、ナッツなど食べられる脂質系の食品を1食で組み合わせ、間食を取り入れるなど食べる回数を増やして1日トータルの栄養を確保します。

また、エネルギーがおかずから得られない場合は、昼間の活動量によっては、おかずの最後に、黒米のおにぎり60g程度、りんご半分、ふかしたじゃがいも1個など、良質な糖質をプラスし、夜だけ主食抜きを続けてみるのもおすすめです。

3. 糖質オフの代替食品に頼りすぎる結果の栄養不足

コンビニやスーパーをはじめ、麺なしのちゃんぽんやラーメンを提供する外食も登場し、糖質制限がしやすい環境になっているのは心強いことです。

しかし、糖質をオフすることと同じくらい大切な栄養の確保も、覚えておかなくてはなりません。 例えば、朝は「糖質オフのパンに、低糖質のカフェラテ」、 昼は「こんにゃくヌードルのカップスープ、蒸し鶏のサラダ」、間食は「糖類ゼロチョコにカロリーゼロのゼリー」夕食は「糖質ゼロ麺、糖質ゼロビール、ナッツ、チーズ、低糖質アイスやカロリーゼロの清涼飲料水」など、今までのパンとコーヒーの朝食、めんとサラダの昼食、甘い菓子の間食、めんやアルコールを簡単に糖質オフにすることはできます。

しかし、正しい糖質制限ダイエットとは、糖質をオフにするだけでなく、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など毎食、栄養を摂取することです。糖質が低い代替食品は糖質をオフするだけで、栄養の確保にはならないことは気に留めておきましょう。

「糖質制限ダイエット」のメリット

糖質制限ダイエットのいいところは、血糖値スパイクが防げることです。

糖質をとって血糖値をあげることは、体脂肪の燃焼をストップさせるだけでなく、糖化(AGE)を促進し、しみ、しわの原因になるほか、血糖値の乱高下がおこるので自律神経=気分も乱高下しやすくなり、糖質摂取の数時間後に、異様な眠気、いらいら、動機、不安感など精神疾患に間違われるような不定愁訴を引き起こすことがありますが、糖質オフするとそれも防げます。

食後に血糖値を上昇し続けることは、がんやアルツハイマー型認知症との関連も指摘されています。

──この記事は、2018年2月20日の記事を再編集して掲載しています

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大柳珠美(おおやなぎ たまみ)さん
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー.jp理事。都内のクリニックで、糖尿病、肥満など生活習慣病を対象に、糖質の過剰摂取を見直し、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル不足を解消する食事指導を専門に行い、薬に頼り過ぎない治療をサポート。一般社団法人オーソモレキュラー.jp主催「栄養カウンセラー養成講座」講師、ダイエットジム「ライザップ」の食事ガイド監修、日本大学野球部の栄養管理をはじめ、低糖質メニューの開発、講演会、テレビ、ブログ「管理栄養士のローカーボ・キッチン」などで、栄養科学に基づいた、おいしく続けられる食に関する情報を発信。

大柳珠美さんの著書
『「糖質制限」その食べ方ではヤセません』(青春出版社)、『2週間で体が変わるグルテンフリーの毎日ごはん』(青春出版社)、『糖質オフと栄養の科学』(新星出版社)、『食べ方だけで不調をなくす』(宝島社)、『病気にならない低糖質レシピ』(宝島社)、『病気を治す!症状別のおくすりスープ』(マキノ出版)、『からだとこころをつくるはじめてのたべものずかん』(創成社)など多数。

文/ 大柳珠美、 image via Shutterstock

RSS情報:https://www.mylohas.net/2020/03/210306diet.html