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今回は、世界で高く評価される日本の化粧品会社によるふたつの研究成果について。

化粧品界のオリンピックでレジェンド的存在

化粧品は、日々、進化しています。その進化を支えているのは研究者たち。日本の化粧品研究機関のレベルは非常に高く、たとえば化粧品業界のオリンピックと称される国際化粧品技術者大会で世界最多の受賞数を誇るのは資生堂なのです。

そんな世界の化粧品技術をリードする存在でもある日本の化粧品各社から、先日、興味深い新知見がふたつ発表されました。ひとつは皮膚老化の改善につながる可能性、もうひとつはうるおいを長時間保持する方法。いずれも美しい肌を保つのに欠かせません。わたしたちの肌の未来は明るいぞ! と、喜ばしい気持ちになれるので、ご紹介します。

皮膚のリンパ管の老化メカニズムを世界で初めて解明

まずは資生堂の発表から。

リンパ管には、人体の余分な水分や老廃物を運搬して排出する機能があります。とくに皮膚のリンパ管には、リンパの流れの開始点として皮膚の老廃物を回収する特徴が。

よって、リンパ管の働きを活性化させ、不要なものをどんどん流したい!……ところなのですが、これまで、リンパ管は皮膚の深いところに存在すると捉えられていたため、マッサージのような強い刺激でしかアプローチできないと考えられていました。

が、資生堂が独自開発した皮膚のリンパ管の可視化技術を用いたところ、リンパ管は皮膚の直下まで張り巡らされていることが確認されたのです。

他方、医療分野で行われていた眼の研究において、シュレム管(=眼のリンパ管)が老化に伴ってリンパ管内皮細胞の形質転換を起こすことが緑内障発症の一因に挙げられるという報告がありました。そこで資生堂は、このリンパ管内皮細胞の形質転換に着目し、皮膚のリンパ管の老化メカニズム研究を進めることに。

こうして判明したのは、マチュア層(40〜60歳代)の皮膚における、老化したリンパ管の割合の顕著な増加(上図)

老化したリンパ管内皮細胞では、リンパ管に特徴的な遺伝子の発現が減少しており、リンパ管の機能を持たない別の細胞へ変化していました。さらに、リンパ管が漏れやすくなり、機能低下していることも確認。つまり皮膚のリンパ管を構成する細胞が形質転換により性質を変えることで老化が進み、皮膚の老廃物回収機能を失っていたのです。

さらに東京医科歯科大学と共同研究を実施し、桑の根エキスにリンパ管の老化抑制効果を見出したとのこと。

今回の研究成果をもとに、リンパ管機能に着目した皮膚老化の改善につながる技術の開発をはじめるそうなので、桑の根エキスや新技術が搭載された製品の登場を心待ちにしましょう。

逆転の発想により、水分を肌の内部へ届けることに成功

続いては国際化粧品技術者大会2020でのナリス化粧品の発表。同社は、化粧品の水分を肌内部へ届けるメカニズムと、肌のうるおいが蒸散しないメカニズムを発見し、それらを叶える手法を明らかにしました。

化粧品のなかでも、うるおいの補給と維持のふたつの働きを期待される乳液は、水分と油分を含みます。しかし一般的な乳液では、塗布後に油分は肌側、水分はその外側と二層に分かれてしまうことがわかりました。

肌は油分をひきつけやすい性質を持っているため、同社は、油分が先に浸透して層をなし、水分をはじいて肌に届かせづらくしているのでは、と仮説を立てたそう。

油分が肌側にひきつけられ、水分が外側にはじかれる現象(左)と、高分子粘土鉱物を用いて水分に油分を抱え込ませたイメージ(右)。

そこで、乳液中の水分層に高分子の粘土鉱物を配合し、水分に油分をしっかり抱え込ませ、塗布後に水分層と油分層に分かれるのを防いでみたところ、塗布後でも水分と油分が混ざり合った状態を維持でき、肌内部に水分を届けることが可能に。

また液状・ジェル状・固形状の3つのオイルで肌表面での伸びと広がりを観察したところ、固形状オイルがうるおい保持にもっとも効果的と判明。

液状・ジェル状・固形状の3つのオイルで肌表面での伸びと広がりを比較。右の固形油分は肌の溝に溜まらず、均一に肌表面を覆っている。

分子量の大きい、しかも固形状オイルを用いたほうが、肌を覆う油分の浸透を抑え、うるおいを保持できる。これは、いかに粒子を小さくして肌に浸透させるか、という研究を続けてきた化粧品開発者の間に驚きをもたらしました。

逆転の発想から導かれた新知見をもとに、うるうるの肌をもたらす新製品が遠くない未来に生まれるはずです。

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資生堂, ナリス化粧品

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