不安と恐怖とは異なる感情ですが、不安を抱えている人の多くは、常に不確実性への恐怖にさらされています。
そして2020年、世界中のなにもかもが不確実になってしまいました。病気になることへの不安はまだわかります。でも今回の不確実性は、それにとどまりません。
自身の雇用や子どもの学びをどうするといった問題のほか、高齢の親族といつ会えるか、また会えるかどうかすらわからないという不安に、誰もがさらされています。
筆者には、もともと不安障害がありました。そのためこの半年は、新たな負の感情が次から次へと訪れ、ささいな出来事を大惨事のようにとらえる破局的思考がひどくなりました。
もちろん、このコロナ禍に「明るい側面」など存在しないのはわかっています。
でも、私と違いこれまで不安に押しつぶされながら生きるのが普通でなかった人にとって、この状況がいかに複雑かと考えずにはいられません。
過去に経験したことのない感情の中、不安を抱えながらも普通の生活をしていくことと、精神疾患を持って生きていくことの違いを知るのは難しいことかもしれません。
そこで、メンタルヘルスの専門家にインタビューを行いました。
不安とは何か?
準定期的に不安を感じていても、それは不安障害とは限りません。
Community Psychiatryの精神科医であるPavan Madan氏によると、そもそも不安は人間にとって自然な感情であり、メリットすらあるそうです。
不安は、私たちの注意を脅威に向けさせることで、生命を守っています。
また、就職面接などの重要なシチュエーションにおいて、その問題の重要度を自分に知らしめ、ベストな自分を出すための準備をさせるという効果もあります。
これは普通であり、生産的な不安ととらえることができます。
では、不安とはいったい何なのか。
米国心理学会では、このように定義しています。
不安とは緊張感、心配、および血圧上昇などの身体的変化を特徴とする感情である。
でも、専門家は口をそろえてこう言います。
不安な感情を「経験する」ことと、不安障害を持つことは異なると。
不安は、いつ不安障害になるのか?
このように誰もが経験する不安ですが、なにかのきっかけで障害になり、治療が必要になる場合があります。では、その境界線はどこにあるのでしょうか。
精神科医のAlex Dimitriu氏によると、誰にもそれぞれに基準となる不安レベルがあり、いつもそのくらいの不安を抱えているそう。ですが、イベントやその他のストレス因子をきっかけに、不安が基準を超えてスパイクします。
いわば、高原にいくつかの山頂があるようなものです。
私の経験上、高原が高いほど、スパイクが起こりやすくなります。言い換えると、日常的な基準値が高い人ほど、イベント発生時のスパイクが起こりやすく、そのレベルも高くなります。
つまり、障害の領域に足を踏み入れたかどうかを知るには、いつも抱えている不安の基準がどれくらいかを見るのがよいようです。
これは、不安があまりにも大きくなり、日常生活にまで影響を及ぼすようになったときにわかります。
しかし、もともと不安の基準値が低い人(不安に思うことが多くない人)がとつぜんスパイクを経験すると、日常生活に影響していると思い、自分は不安障害だと思ってしまうかもしれません。
不安障害の兆候は?
Community Psychiatryの心理学者で治療開発を担当しているMoe Gelbart医師によると、不安障害の兆候には下記のものがあるそうです。
・努力する能力を妨げるほどに、思考が大きくなっている
・無視できないほどに、思考が大きくなっている
・行動が脅迫的になり、やめられなくなっている
身体的および精神的な症状にも注意しましょう。
たとえば、緊張、イライラ、疲労、破局的思考、睡眠障害などです。Dimitriu氏は、これらの症状が6カ月以上続くようなら、専門家に相談することを勧めています。
不安を和らげるには?
不安障害と診断されて医師の治療を受けている人なら、自分にとって何がベストかはわかっているでしょう。
ここでは、不安に慣れていない人に役立つかもしれない対策を紹介します。
残念ながらどんな不安にも効くお手軽な治療法は存在しません。おそらくここで紹介するストレス軽減テクニックは、どこかで聞いたことのあるものかもしれません(だからといって今試してみない手はありません!)。
ストレスを軽減する行動・ノウハウ
・瞑想をする
Dimitrius氏は、思考を穏やかにする方法として、瞑想を勧めています。しかし、瞑想は始めてすぐにうまくいくわけではありません。
筋肉のように、コツコツ強化していくものだと考えてください(瞑想が向かない人もいます。最初はガイド付きのセッションから始めることをお勧めします)。
・定期的な睡眠習慣を心がける
・睡眠時間は8時間とる
・激しい運動(終了後にシャワーを浴びなければならない程度のもの)をする
・外で過ごす時間を増やす
・消費するメディアを認識し、不安のきっかけになりそうなものは極力避ける
ことなどが効果的です。
Gelbhart氏によると、基本的な行動や理解でも不安を和らげることができるそう。
・自分ができることをコントロールする方法を知る
・コントロールできないことは手放す
・未来を不必要に悲観的に考えるのではなく、今この場所で生きる術を知る
・「もしも」ではなく「いま」に注目する
・カフェイン、ニコチンを避ける
深刻な不安にさいなまれていると感じる人や、よくわからないという人は、専門家に診てもらってください。
状況を評価し、治療の必要性についてアドバイスをもらいましょう。
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Eizabeth Yuko - Lifehacker US[原文]
訳:堀込泰三