現在ベルギーで暮らすモデル/イラストレーターのAVI(アヴィ)さんにレポートしてもらう第二弾。今回は「ゴミの出し方」ついて聞きました。
ベルギーのゴミ袋は超高級
2年ほど前にベルギーに引っ越したAVIさん。まず困ったのは「ゴミ袋をなかなか購入できなかったこと」だそう。
「ゴミ袋がスーパーマーケットに売られていると聞いて探したんですが、何軒はしごしても全然見つからず……。 その後、レジの人に伝えて出してもらうスタイルだということがわかり、無事購入することができましが、あのときは半泣きでしたね(笑)。
ゴミ袋の価格が高いから、万引き防止の意味もあって、店員さんの足元など見えない場所に隠されていることが多いんだそうです。特に茶色の袋(燃えるゴミ)が高いんです」
燃えるゴミの袋の値段が特に高いのは、なるべく残留廃棄物を減らそうという意図から。ゴミ袋は全部で4種類あって、茶、青、緑、ピンクに色分けされています。
左から、【ピンク(柔らかいプラスチック)】10袋 €2.50 (約¥317)、【茶色(燃えるゴミ)】大10枚 60L €22.5(約¥2,800)・小10枚 30L €11.25(約¥1,400)、【青(PMD=ペットボトル・アルミ容器・飲料のパック)】 20枚 €3(約¥380)。ほかに、【緑(有機廃棄物/生ゴミ・土など)】 大10枚 40L €7(約¥890)・小20枚 20L €7 (約¥890)、【キッチン廃棄物コンテナ用の50個の堆肥化可能な袋】 1ロール €2.5(約¥317)がある。燃えるゴミの袋は、10枚でなんと22.5ユーロ(1枚60L)、日本円で約2800円。
「 『出産するとおむつのゴミが増えるから』と言って、息子を出産したときには市から茶色のゴミ袋を3ロール、プレゼントされました」とAVIさん。
おむつの量はばかになりません。子供を持つ家庭には必要なサービスですね。
分別は日本より少しだけ種類が多い
カラフルなゴミ袋、たくさん種類があるように見えますが、ゴミの分別は細かいのでしょうか?
「レギュラーで収集されるのが、①燃えるゴミ、②PMD(ペットボトル、金属、飲料のパック)、③生ゴミ、庭の廃棄物(土や葉など)、④プラスチック、⑤紙類、段ボール、⑥枝や幹です。 日本と違うのは③と⑥があることでしょうか。あとは、④のプラスチックも、日本だとレギュラーでは回収されなかったり、そもそも回収しない種類のプラスチックがあったりしますよね」
朝7時までにそれぞれの家の前に出しておくシステム。これだけ分別するとなると、ゴミの日の把握が難しそうです。
「市にリクエストするとカレンダーをもらえますが、ベルギーの人に教えてもらったのは収集日カレンダーのアプリ『Recycle!』をダウンロードすること。同じ市でもストリートごとに収集日が異なるので、郵便番号と通りの名前を入力して、アプリでチェックするようにしています。登録しておくと、前日に通知も来るのでゴミの出し忘れがなくなって便利です」
アプリ「Recycle!」の画面はこんな感じ。リサイクルしづらいゴミは捨てるのも大変
「マテリアルとしてリサイクルできるものは毎週回収日があったり頻繁に収集に来てくれるけど、プラスチックはほぼ月に1回しかありません。しかも今年の3月からはプラの回収はなくなり、個人で収集センターに持ち込むようになるのだそうです」
捨てるのが大変であることが最初からわかっていると、購入するときにきちんと考えるようになります。この「収集日をなくす」という決断は、ゴミを減らすことに大きく貢献するかもしれません。
また、下記はストリートでの回収はありませんが、専用ボックスなどが設置されており、市民がこのボックスに足を運びます。
・電池(スーパーマーケットの回収ボックスへ入れる)
・ワインなどの瓶(色付きと透明に分類して、街の数カ所に設置されている瓶回収容器へ)
・衣類(専用の回収ボックスへ)
・粗大ゴミ(街に2つあるリサイクルパークへ持ち込む)
瓶や衣類など、身の回りのものをリサイクルしてくれるのはうれしいですが、わざわざこれらを分別し、それぞれ別の回収場所へ足を運ぶのはとても大変な気がしてしまいます。
「そう思うと、やはりゴミ袋が高いことには意味があるのかもしれません。回収ボックスに足を運ぶハードルを低くしてくれますよね」
システムが意識を変えていく
歩道に木が生えている!?かと見紛う、捨てられたクリスマスツリー。「1月の中旬になると、生木のクリスマスツリー専用のゴミの日があるんです。回収日が近づくと歩道のあちこちに大きなもみの木が置かれているのは独特の風景だなぁと。今年は1月21日が収集日でした」
「どうやってゴミとして処理したらいいんだろう」と考えてしまいそうなものも、きちんと回収システムがあるベルギー。ゴミ袋の価格決定や、回収日を減らす決定など、システム面からゴミ問題に取り組むことで、人々の意識改革やアクションを促している印象を受けました。
こちらも近所の家の前に出されていたツリー。「捨てられているツリーを初めて見たときは『何これ!』って面白いと思うのと同時に、ちょっと切ない気持ちにもなりました。クリスマスのためだけに買われて、シーズンが終わるとこうして道の脇にポンと置かれて捨てられてしまうのか……と。
でも、調べてみたら、こちらも回収されて堆肥化されるみたいなんです。毎年木を伐採してツリーにするのと、プラスチックの何年も使えるツリーを使うのと、どちらがよいのか。伐採しても、プラを使うより結果的には環境によい、という報告もあるようですし、もう少し、じっくり調べたり、考えたりしてみたいと思います」
衣類を回収する巨大なボックスの前で。AVI(アヴィ)さん
モデル・イラストレーター 。2016年よりヨーロッパに拠点を移し、現在も日本と海外を行き来しながら雑誌や広告、ショー、ヨガインストラクターなどマルチに活躍中。ロンドン留学を経てファッションイラストレーターとしてもデビュー。イギリス人の父と日本人の母を持つ、旅好きの関西人。昨春、第1子を出産。公式インスタグラム: @avi__official
撮影・取材協力/AVI
未来を少しよくしたい
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地球との共存を意識したら、自分の生き方が明瞭になった/DEPTオーナー・eri[前編]