間違った姿勢・動作が「疲れるカラダ」の原因に
本書の著者である夏嶋隆さんは「動作解析」の専門家として活動するメディカルトレーナー。サッカー元日本代表の中山雅史さんや久保竜彦さんなど、スポーツ界で活躍する多くのアスリートが夏嶋さんの施術を信頼しています。
動作解析とは、人間の動作を観察・記録して、運動学や解剖学、物理学に沿った「人体構造に合った正しい動作」を検証し、それをスポーツの現場に還元していく研究です。
(『疲れないカラダ大図鑑』12ページより引用)
アスリートの疲労やケガは「間違った姿勢・動作」から引き起こされることが多いと夏嶋さん。じつは私たちもアスリートと同じように、人体構造的に間違った姿勢や動作が習慣化すると、肉体的な疲れや負担が倍増してしまいます。
夏嶋さんいわく、「疲労は痛みや発熱とともに、生体の3大アラーム」。朝起きても疲れがとれない、少し歩くだけで疲れてしまう、肩・首・腰にずっとダルさがある……。こんな感覚があるなら、まずは姿勢・動作を見直してほしいと語ります。
日常生活で「鋭角にしてはいけない」3つの部位
『疲れないカラダ大図鑑』40ページより日常生活でまず心がけたいのは、「3ポイントアクション」。歩く、座る、手を動かすという、3つの動作に関わる動きです。
疲れないための3つ目のポイントは、「3つの体の部位を、人体の構造に即した使い方をする」ことです。具体的には「歩くとき足首を鋭角にしない」「座るとき足指のつけ根を折らない」「手を動かすとき手首を甲側に曲げない」ことです。
(『疲れないカラダ大図鑑』38ページより引用)
歩くときのNGは、かかとから着地して、後ろ足の足首の角度を鋭角にして歩くこと。足首を鋭角にするとふくらはぎの筋肉が緊張し、足のむくみやダルさ、腰痛につながってしまいます。かかとではなく足の裏全体で着地し、「足の指で地面をつかむ」感覚を意識することで、ぐっと疲れなくなると夏嶋さん。
さらに足指のつけ根を曲げて座っていると、筋肉の緊張が腰から全身にまで伝わってしまうとのこと。座面がちょっと高い椅子だと、小柄な人はこの座り方になりがちですね。
『疲れないカラダ大図鑑』79ページより「手首を甲側に曲げる」ポーズも、パソコンのマウス、スマホを使っているときや、自転車・車の運転、頬杖など、頻繁に使いやすい姿勢。できるだけ手首を曲げたり、反らしたりしないように心がけるだけで、疲れや肩こりの原因を減らすことができるといいます。
「肩こり解消ストレッチ」も逆転の発想で
「動作解析」をベースにすると、肩こりや腰痛を解消するストレッチの方法も変わってきます。
例えば、ガチガチの肩をほぐしたくて、左右の肩甲骨を寄せ、胸を開くような動きをするケース。夏嶋さんによると、このような「動くようにしたい方向」に筋肉を伸ばすストレッチは、伸びた筋肉が元に戻ろうとするため、肩こりを悪化させる危険があるのだとか。肩こりの解消には、「動くようにしたい方向」とは逆の向きに力をかけたほうがよいのです。
『疲れないカラダ大図鑑』269ページより【肩こり解消ストレッチのやり方】
・右手で左肘をつかみ、胸の前に持ってくる
・左腕を左方向へ引くように力を入れる(それを右手で押さえて動かないようにする)
・1回10秒。左右の手を入れ替えて行なう(『疲れないカラダ大図鑑』268~269ページより引用)
このストレッチ、筋肉を「伸ばす」というよりは「力を入れる」感覚なのに、終えたあとは肩まわりがじんわり温かくなって、コリがほぐれる感じがします。すきま時間に繰り返していたところ、仕事終わりの「肩のガチガチ感」が確かに軽くなっていました。
本書ではこのほかにも、ペンギンのような動作で腰痛を軽くする体操など、意外な視点から体の疲労・痛みを改善するコツがたくさん紹介されています。しつこい疲れを癒やしたいときに、ぜひ参考にしてみてください。
1,540円
image via Shutterstock、図版提供/アスコム