今年の夏は、高野山にある117の寺院の中でも中心的な役割を果たす金剛峯寺でユニークな光景が見られそうです! あのダイソンが開発した羽根のない扇風機「エアマルチプライヤー」が、僧侶や参拝者の涼をとるために使われているんです。
世界文化遺産が選んだのは、自然の風をとって涼をとるアイテム
実際に金剛峯寺を訪れてみると、人々が集まって湿気のこもる受付や、立ち止まって仏様を拝む持仏前の廊下などに「エアマルチプライヤー AM02 リビングファン」が設置されています。日本のライフスタイルにあわせて、従来のタワーファンより13cm低く設計され、和の雰囲気にマッチするようつや消しのシルバーにカラーを変え、荘厳な景色の中に溶け込むよう考えれています。
右)金剛峯寺への参拝者は必ず、ここで受付を行います。エアマルチプライヤーによる風で涼を取る参拝者。
「以前は夏場でも涼しかった高野山ですが、最近は暑い日が増えています。世界文化遺産に認定されたこともあって、海外からの参拝者も増えている中、自然の風を使って『涼をとる』ことができるエアマルチプライヤーは高野山の暮らしにあっています」
というのは東山教清(高野山真言宗 総本山金剛峯寺 開創法会事務局 課長)さん。
高野山では、2015年に開創1200年を迎えるにあたって、弘法大師が中国から持ち帰った密教の教えを現代社会に生きる人々の暮らしに役立てるべく、日本の伝統宗教の立場から地球環境問題やエネルギー問題についての発信をしています。エアマルチプライヤーの採用も、その一貫。
エアコンの人工的な涼ではなく、羽根がなく安全に使えて、自然の風を15〜16倍に増して涼をとることのできるダイソンの技術は、高野山での僧侶の暮らしや参拝者の気持ちにしっくりなじんでいるようです。
便利とはいえないけれど、心を整えるのに最高の場所
東京からは新幹線と南海電車を乗り継いで約5時間と、現代においても決して便利とはいえない場所ですが、穏やかな時間の流れに身を任せて心を整えるに、これ以上の場所はありません。
奥之院参道。足を運ぶ人たちの多くは、2km近い参道を歩いて弘法大師が祀られる奥之院を参拝する。
杉の木立の合間を縫うように歩く参道を抜けると、夏でも涼やかな風が流れる奥之院にたどり着きます。816年、弘法大師によって真言密教の総本山として開かれた宗教都市であり、約1200に渡って受け継がれてきた信仰の歴史が息づく場所です。
高野山=女人禁制といったイメージが強いけれど、明治5年に撤廃されてもう100年以上が経ちます。最近では、日本国内からの参拝者に加えて、2004年にユネスコ世界文化遺産に登録されたこともあって海外からの観光客も増えてきています。
ちなみに、高野山に行くなら、普門院などの宿坊に泊まり、寺院巡りや"阿字観"と呼ばれる瞑想を体験するのがおすすめ。
夕方には宿に入って、ゆったりとお庭を見ながら精進料理をいただきます。消灯は9時と早いですが、周囲が静かなのでよく休めます。早朝のお務めの参加は自由。若い人にも興味を持ってもらえるように工夫されたお話が多く、早起きして参加する価値があるとの評判です。
(川端由美)