宮崎駿監督の5年ぶりの最新作『風立ちぬ』が、いよいよ7月20日に公開されます。
飛行機に夢を託した男の物語
この作品で印象に残るのは、どこまでも続く青い空と吹き渡る風、そしてその大空を流れるように飛んでいく飛行機の美しい姿。宮崎監督作らしい、流れるような飛行機のシーンは、見ているだけで自分も空を飛んでいるかのような飛翔感を味わえます。
映画『風立ちぬ』は、実在した零戦の開発者である堀越二郎の人生に、堀辰雄の小説「風立ちぬ」の物語に重ねあわせて描いた作品です。
夢と愛を貫いて生きた二人
主人公の二郎は、日本が太平洋戦争に突入する前の昭和20年代という暗い時代に、飛行機の開発をしたいという幼い頃からの夢を追って、まっすぐに生きています。幼い頃から努力して勉強し、東京の大学に入学、そして三菱内燃機製造に就職し、飛行機の開発を始めるのです。そして、避暑に訪れた軽井沢の地で、美しい女性・菜穂子と出会い恋に落ちます。
菜穂子は、肺病を患う女性。完治が難しい病気を抱えた彼女は、一度山間部の療養施設に入りますが、二郎と一緒に暮らすために施設を抜け出します。そして、最後まで二郎のためを思い、彼の仕事をひっそりと応援することにするのです。
相手のために自分を捧げるような恋愛が、現代の女性にできるのか......。菜穂子はまさに古き良き時代に男性を影から支える、男性にとっての"女性の理想像"といえるのかもしれません。
夢を貫いて生きた堀越二郎と、愛を貫いて生きた菜穂子の二人を描く映画『風立ちぬ』。観客の世代や性別によって、彼らの人生をどう思うか、その捉え方は大きく違ってくるでしょう。ただ、彼らの生き方についてどう感じたとしても、この作品を観終わったあとには、松任谷由実の歌う「ひこうき雲」のメロディーと、優雅に空を飛ぶ美しい飛行機の姿が、深く心に残るはずです。
『風立ちぬ』(126分/日本/2013年)
公開:2013年7月20日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作・監督・脚本:宮崎駿
声の出演:庵野秀明/瀧本美織/西島秀俊
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(松村知恵美)