先日、ブルックリンで行なわれた『Station to Station』というイベントに行ってきました。

アメリカのマルチメディア・アーティスト、Doug Aitkenがオーガナイザーの『Station to Station』は、タイトル通り、場所を移動(nomadic=遊牧)しながら様々な種類のアートを融合させハプニングを起す、というアートイベント。ニュ-ヨーク、ピッツバーグ、ロサンゼルス、シカゴ、ミネアポリス、サンタフェなど、アーティストがアメリカ各地を電車で移動し、会場だけに限らず、移動中の車内でも演奏などのパフォーマンスを行ないます。


NYは、ブルックリンのハドソン川沿いで行なわれました。会場に着いてみると、NY中のアートや音楽、ファッションが好きな人達が一同に集まっているかのような盛り上がりです。会場の脇には、モンゴルの遊牧民が使うようなグル(移動式住居)をモデルにしたカラフルなテントが置かれていて、中ではインスタレーションやアートワークの展示が行なわれています。


結構な行列に並んで入ってみると、宇宙のビッグバンの説明が行なわれていたり、スモークが焚かれて真っ白な空間の中に設置されたベッドに人が横たわっていたりと、不思議な空間が。


興味深かったのは、リクイット・ティーラワニットという、ブエノスアイレス出身のタイ王国現代アーティストの作品です。私は彼の作品は初めてだったのですが、鑑賞者にタイ料理を振る舞うインスタレーションなど、生活や社会に関わっていくための空間や建築、構造物が彼の作品の核になっているそう。今回は"WHEN POP BECOMES ATTITUDE"と書かれた紙袋が観賞者に配られていました。


紙袋の中には"TOFU KILLS PEOPLE"と書かれたTシャツが。"豆腐が人々を殺す"ってどういう意味なんだろう? 遺伝子組み換えの事? それとも何だろう......と、気になってしまい仕方ありませんでした。調べてみると、以前、彼がインスタレーションで料理を振る舞った時に、豆腐を食べないベジタリアンにそう言われて大笑いをした事があるそうで、それをモチーフに作られたのだということ。豆腐さえ食べない頑固で不思議なベジタリアンがアメリカには沢山いるらしく、それがただのギャグにはならないのですね。


そして、今回一番印象的だったのは、ライブがとにかく圧倒的に素晴らしかった事! 私の大好きな友人、Yoshimiちゃん(BoredomsOOIOOなど)が率いる、「Yoshimi+Hisham Akira Bharoosha +RyanSawyer」のトリオは2台のドラムとベース。Yoshimiちゃんのバンドはどれもこれも絶対にハズレなく、毎回凄いのですが、今回の演奏もやはり素晴らしかった! 観客もどんどんステージに魅き込まれていく感じが分かり、あっという間の30分でした。


そして最後は70年代のNYパンクバンド「Suicide(スーサイド)」のライブ。それが想像以上に衝撃的な恰好良さで、観る事が出来て本当に良かったと、しみじみ感動したのです。スーサイドはパンクといってもシンセサイザーとボーカルだけのシンプルな構成なのですが、70歳を超える2人の演奏は全くパワーダウンしておらず、いや以前以上かもと思うくらいぶっ飛んでいました。もうすっかりお爺ちゃんだというのにも関わらず、めちゃくちゃ大きなシンゼを叩きまくり、その上にリーディングが重なるという彼らのスタイルは、現代に溢れるパンク風な若者と真逆にいるのではないかな......。とにかく、彼らのライブも言葉に表せないのが悔しいくらい最高に恰好良く、まさに本物のパンク・バンドでした。


先日、マンハッタンにある『Bowery Electric』というライブハウスの前を通りかったら、初期のHIPHOPで際立って好きだったBiz Markie(ビズ・マーキー)のライブのポスターがあって、おお! と驚いたのですが、NYにはそんな面白いアートや音楽がゴロゴロと転がっている場所なのだと、最近よく実感します。

30代、40代になると仕事や家庭の環境が変わり、アートや音楽などに触れる機会が以前よりも減る人が多いかと思うのですが、大人になった私達こそ、アートにどんどん触れていきたいものです。子供の頃には分からなかった事や気付かなかった大事なことが、今の自分なら実感できるかもしれません。

 

(カヒミ カリィ)

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