俗に「天才」というと、自分からはとんでもなく遠いところにいて、完璧な存在であるように思うかもしれません。自分を励ますために自伝を読んでみたところで、その差に愕然とし、生まれもった才能の違いなんだと、かえって落ち込んだり、なんて経験はないでしょうか。

でも考えてみてください。天才とはいえ、ひとりの人間。お腹はすくし眠くもなる。創作にはげむ思考の裏側では、平凡な日常やルーティーンが待ちうけているのです。

天才も、時間のやりくりには苦労した!?

そんな天才たちの日常生活をまとめた1冊が『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々』です。著者は前書きのなかで「才能があってもほとんどの人がつねに不安に思っている」と言います。だれもが時間をやりくりして仕事をやり遂げている。ただし、そのために生活をどのように組み立てているかには、数えきれないバリエーションがある」のだと。

建築家ル・コルビュジェは、現役のあいだ厳格なスケジュールを徹底していました。

午前六時に起きたあと、四十五分間、柔軟体操をする。そのあと妻に朝のコーヒーをいれてやり、八時にはそろって朝食をとる。それから午前中いっぱい、絵を描いたり、執筆をしたりして過ごす。(中略)仕事場で過ごす時間は短かった。

(『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々』P276より引用)

神経学者のオリバー・サックスは毎朝五時ごろ起き、水泳をしたあとオートミールを食べ、仕事にでかけ、帰宅するという日々。

早めに寝て、たいてい鮮やかな夢を見る。その夢は意識的に再現するか、(可能なら)解体するかしないと、頭から離れない。ベッドの脇にノートを置いて、夢や夜に考えたことを書きつけるようにしている。夜中には思いもかけないアイデアがたくさん浮かぶような気がする。

(『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々』P322より引用)

アーティストは、深夜にひっそりと集中するタイプと、規則正しく早朝から動き出すタイプにたいてい別れるようですが、この本を読むと後者のほうがいくぶん多いようにも感じられます。小説家ニコルソン・ベイカーは、効率を良くするため朝を二回つくりだすという生活を編み出しました。

「午前四時から四時半に起きて、少し書く。コーヒーをいれるときもあれば、いれないときもある。一時間半ほど書いたら、すごく眠くなっているので、もう一回寝て、八時半ごろに起きる。二度目に起きた後は、妻と話しながらまたコーヒーを飲んで、ピーナッツバター&ジャムサンドを食べて、また執筆に戻る」

(『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々』P111より引用)

作品を生みだすユニークな癖

本人は必死なのでしょうが、執筆するときの癖もユニークなものばかり。ヘミングウェイは立ったまま、トルーマン・カポーティは寝転ばないと書けなかったといいます。ウディ・アレンは行き詰まると熱いシャワーを30分浴びてからベッドの上であれこれ考えるのです。

マルセル・プルーストは姿勢にこだわりがあり、二つの枕に寄りかかり、ひざの上にノートを載せ、片肘をたてた姿勢で書いていました(奇妙な格好なので非常に疲れたとか)。ベートーベンは歌いながら日に何度も手を洗う習慣のため、水漏れで隣人とトラブルを起こす始末。なんだか天才たちに親近感を感じます。

勇気づけられるエピソード満載

天才たちはどのような日課を自分に課し、クリエイティブを生みだしつづけたのか。私たちも、ピンチの際に切りぬけるためのヒントを得ることができるかもしれません。

煮詰まったときに睡眠やお酒、食に逃げてしまうなんて、きっと誰でも経験がありますよね。スランプにおちいった彼らが、どうしようもなくジタバタするようすも垣間みれて、勇気づけられるエピソードが満載です。

天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々

book via Shutterstock

RSS情報:http://www.mylohas.net/2015/01/043382genious.html