2015年の立春は2月4日です。2月3日に節分で厄を払い、翌日の立春には心を新たに春を迎え、旧暦では新しい1年が始まります。その日から少しづつ春の気配がおとずれますが、その気配としていちばんわかりやすいのが、「風」ではないでしょうか。 日本には2000以上もの風の名前がある

たとえばこの時期ニュースでもよく耳にする「春一番」もそのひとつ。立春から春分のあいだに初めて強い南風が吹くと、「やっと春がきたなぁ」とワクワクします。そうやって目にはみえないのに、肌で季節をおしえてくれる風ですが、名がつく風は「春一番」だけではありません。じつは日本には2000以上もの風の名前があるのだとか。

そこには日本人ならではの繊細さが感じられますが、さらに「そのネーミングセンスには感心せざるを得ません」と言うのは、幼いころから自然と歳時記に興味をもっていたという、イラストレーターのさとうひろみさんです。著書『大切にしたい、にっぽんの暮らし。』には、そのセンスあふれる風の名前が、このように紹介されていました。

・花信風(かしんふう)

花が咲くのを知らせる風。うららかに晴れた春の日に吹くそよ風。

・黒南風(くろはえ)

どんより雲った梅雨の頃に吹く風。

・薫風(くんぷう)

初夏に新緑の間を吹き抜け、若葉の香りをただよわせる快い風。

・野分(のわき)

台風のこと。二百十日、二百二十日前後に吹く、野を分け草木をなぎたおすほど強い風。

・空っ風(からっかぜ)

雨や雪を伴わない乾燥した冬の冷たい強風。

・木枯らし(こがらし)

初冬に吹く、木の葉を散らして枯れ木にしてしまうような冷たい風。

・おろし

山から吹きおろす冷たい冬の強風。「富士おろし」「六甲おろし」など。

(『大切にしたい、にっぽんの暮らし。』P66~67より引用)

どれも名前を見ただけで、その情景が浮かんできそうです。

なお、野分に書かれた「二百十日、二百二十日前後に」というのは、立春から数えた日数のことだとか。ほかにも立春から数えて88日目は「八十八夜」といって茶摘みの目安にするなど、新しい年のスタートとなる立春は1年をとおして大切にされてきたようです。

「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」という言葉にもありますが、春の風が厚い氷も次第に解かすように、冬のあいだに固くなった身も心も、これからゆっくり解かしていけたらと思います。

[大切にしたい、にっぽんの暮らし。]

girl-on-a-cold-windy-day via Shutterstock

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