『はじめましての郷土玩具』。表紙には、猫がモチーフの張子の写真が。
郷土玩具とは、日本各地の風土に密接に結びき、江戸時代以降に、木や藁や土や紙など身近な材料でつくられるようになった、庶民のための素朴な玩具のこと。だるま、招き猫、こけし、こま、張子人形、鳩笛などがよく知られています。
本の中で紹介している郷土玩具をいくつかご紹介します。こちらは、日本各地でつくられる「鳩笛」の数々。
静岡県浜松市でつくられる「酒買い達磨と肴買い達磨」。
各地の天満宮で授与される「鷽(うそ)」。
江戸時代から浅草・仲見世で人気の「飛んだり跳ねたり」。
親が子どもに与える遊び道具としてだけでなく、寺社の授与品や、民間信仰のお守り、節目の祝いや記念の役割も果たし、厄除け、疫病除け、子どもの成長、商売繁盛、開運出世、五穀豊穣、家内安全......人々の切実な思いや願いが託されてきました。それらは美しさを愛でる美術品とは異なり素朴なものが多く、手にして和むものもあれば、畏敬を感じるものもあります。最近は、後継者不足で存続の危局に立つ郷土玩具も多くありますが、愛好家が支えたり、保存会が発足したり、若いつくり手も少しずつ現れています。
金沢でつくられる「金花糖」。
おなじく金沢の正月菓子。「福徳」といって、最中皮の中に、これら土人形が入っている。
そんな日本の郷土玩具約320点を、由来とともに紹介する拙著『はじめましての郷土玩具』(グラフィック社)が、3月6日に発売となります。私は、日本各地のお菓子を個人的に研究しているため、郷土玩具とゆかりのある各地のお菓子を紹介するページもつくりました。
宮城県石巻市でつくられる、こけしをかたどったおやつパン。
新潟の郷土玩具「三角だるま」をモチーフにした最中。
はじめて郷土玩具に触れる人のため、歴史や素材についての基礎知識や、実際に郷土玩具を見ることができる施設や、購入できるお店の情報も収録しています。
この本を手にして、自分好みの郷土玩具に出会えたら、ぜひその土地や祭礼を訪ねてほしいと願います。つくり手の思いや優しさに触れることで、さらに土地土地の玩具を慕わしく感じることでしょう。
甲斐みのりさんが過去に郷土玩具を紹介した記事はこちら。
一日の始まりが穏やかになる、日本伝統の縁起物
こけしと出会う
鳴子のこけし。