それは例えば、友だちの家に集まる際に「一人一品ずつ持ち寄る」という「ポットラック」だったり、近所の人から「田舎からたくさん野菜が届いたから、お裾分けね」と野菜をもらったり、じゃあうちにはたくさんお米があるからと、お米をお返しするようなこと。
そんな「与え合い」で成り立つ経済があるのでは、という取り組みをしているのが、東京アーバンパーマカルチャー創始者であり、共生革命家のソーヤ海さん。
海さんの近著『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』(エムエム・ブックス/刊)には、彼がこれまで実践してきたこと、現在進行形の取り組みなど、これからさらに必要とされるであろうライフスタイルやマインドセット、それらに不可欠なたくさんのヒントが詰まっています。
地球にも、人にも優しい暮らしは、すぐにでも実践できる!『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』は、Edible(食べられる)、DIY、Edge(境界)、Gift、Stopの5つの章から成り立っています。
これらのテーマをもとに、海外のみならず、日本国内の都市部で実践されているさまざまな取り組みが紹介されています。
なかでも、「Gift」をテーマにした章は斬新で、でもどこか懐かしくすぐに実践できる、そんなヒントがたくさん見つけられました。
足りないことに目を向けず、与え合うことで満たされる私たちの命を支え、循環し続けられるのは、実は自然の恵みがあってこそ。この地球上にある、酸素・水・食物など、すべて自然界からのギフトなのです。
僕たちは、こうしている今も、そういうギフトで成り立つ、ものすごく豊かな地球にすでに住んでいるー
はずなのに、現実には、「あれが足りない」「これが足りない」と、「足りない精神」に取り付かれ、振り回され、いつの間にか疲れ果ててしまっていないだろうか?
(『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』p118 より引用)
お金だけでなく、家やクルマ、洋服、ひいては友人関係や地位など、私たちはどこか、「持っている」「たくさんある」ことで安心すると思いがちではないでしょうか。
けれども多くのミニマリスト(モノを持たない暮らし実践者)は、過去に経験したたくさんのモノに囲まれた生活を、「何とも言えぬ虚無感を感じた」と言っています。
実は本当の豊かさを得るためには、お金やモノはそれほど必要ないのかもしれません。
今日からできるギフトエコノミー事例ギフトエコノミーとは、「与え合い」で成り立つ経済のこと。与えてもなくならない、自分のなかにある豊富なモノ。それを見返りを求めずに与えるのがギフトエコノミーの実践で、それを支えるのが「ギフト精神」だ。
(『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』p118 ~119より引用)
ギフトエコノミーは決して難しいものではありません。
その一例のポットラックなどは、すでに多くの方が経験されているのではないでしょうか。
食べ物を持ち寄る。そこには、集まった人の数だけの「味」があり、「想い」があります。ただ単に食事をするだけでは得れない満足感が、ポットラックの素晴らしさなのです。
そしてもうひとつ、ドネーション(寄付)。最近では、チャリティイベントやクラウドファウンディングなども盛んなので、こちらもすでに当たり前のカルチャーです。
興味深いのは、海さんが主催するワークショップ参加費のほとんどが、このドネーション制を導入しているという点。
海さんの提唱する「お金と人の関係を変える4つの理念」によると、
1.Passion is Priceless (パッションに値段をつけないこと)
2.Barrier Free(誰でも参加できるようにすること)
3.Pay it Forward(受けた恩を、次の人に返すこと)
4.Share the Abundance(豊かさを分かち合うこと)
つまりここで大切なことは、お金の金額の多少なのではなく、受けたエネルギーへの対価として、それを次の人への「恩」として送る気持ち。
「与え合う」という文化が、さらに広く一般的に、日々当たり前のように行われる、そんな社会になれば素敵です。
ギフトエコノミーをひも解くと、実は日本に古くから伝わる「お裾分け」だったり、助け合いや思いやりにつながります。日本人の心にしっかりと根付く「与え合う精神」。心も暮らしも豊かになりそうなこの取り組み、これからの生活にもっと取り入れていけたら素敵だと思います。
ソーヤ海(共生革命家):監修
東京アーバンパーマカルチャー編集部:編
1,800円(税抜き)/エムエム・ブックス:刊
image via Shutterstock