そんななか、スウェーデンの子ども、高齢者、男女平等担当大臣であるオーサ・レグネール氏が先日来日し、「子どもの権利と父親の積極的な育児参加を支えるスウェーデン社会の現状」をテーマにした講演会が行われました。
育児休暇はパパ・ママ合わせて480日間!
まず、スウェーデンの雇用制度は、差別反対、育児休暇、子どもが生まれたあとは時短で働く......などといった、家族にやさしい(Family-friendly)しくみになっています。
家族政策においても、仕事と家庭の両立を実現するための支援を政策の中心に考えられており、子育てしやすい社会づくりや、女性の労働市場への参加を促すことは、出生率向上につながることが証明されています。
なかでも注目なのが、スウェーデンの育児休暇制度。両親合わせてなんと480日間(それぞれ240日間)の育児休暇制度が与えられていて、子どもが満4歳になるまでこの制度をつかうことができるのだとか!
また、未消化分についても子どもが4〜12歳の間であれば取得することができるので、ずいぶんと長い期間を育児休暇にあてることができます。
スウェーデン男性はどれぐらい育休とってるの?
スウェーデンの育児休暇制度の取得状況は、父親では全期間のうち約25%(平均約4か月)、母親では約75%(平均15か月)だそう。それに比べ、日本では、育児休業制度を使う男性は極端に少なく、たったの2.3%(平成26年度雇用均等基本調査)。たしかに、日本でしっかり育休を取っているという男性はあまり見ませんよね。
しかし、オーサ・レグネール大臣は、25%でも少ないと言います。
「父親の育休取得はまだまだ不十分です。それに、重要なポストに就いてる男性ほど積極的に育児休暇をとることが必要。子どもたちにとっては、父親と母親に平等に接触する権利があるんです」
この状況を改善すべくスウェーデンでは、父親のみの育児休暇の日数を60日から90日に引き上げる法律が、この秋成立する予定になっています。
とにかく声に出して話し合うことが大事
「まだまだ少ない」とは言っても、日本に比べてはるかに進んでいるスウェーデンの男性の育児参加。今回、オーサ・レグネール大臣は、その理由について、ちゃんとした政治的なリーダーシップの賜物だと教えてくれました。
「スウェーデンでは、すべてにおいて男女の機会均等、同権を与えてきました。60〜70年代は女性運動もあり、権利だけではなく、仕事においても平等に扱われるようになりました。そして、政府が改革を起こした。こうした、いろんな運動があったからこそ、いまの状況があるんです。自然な流れで誕生したわけではありません」
では、わたしたちは一体どうしたら、スウェーデンのように男女平等に子育てに取り組む社会に近づくことができるのでしょうか?
「スウェーデンはじめ北欧では、父親が介在しない社会になってもいいのか? こういった話し合いをつねに行ってきました。ですので、社会全体でもっと議論をすることが大事だと思います。労働時間を減らすことを企業だけにまかせるのではなく、政府もなんとかしないといけない。政治と社会、両方を変えていかないといけないでしょう」
近年、日本では「イクメン」という言葉がメジャーになりましたが、そもそも北欧の国々では、わざわざ「イクメン」なんて言い方をしなくても、男性が育児に参加することは当たり前。そしてさらに、育児休暇取得率をより高めるための法律が、現在進行形で動いています。
オーサ・レグネール大臣の話を聞きながら、日本もそのあたりを見習うことができれば、もっといい方向に変わるんじゃないかなあと思いました。
家族の時間が増えれば、それだけ、コミュニケーションも笑顔も愛情もどんどん深くなって、家族であることの意義をより実感できるはず。子どもの成長は待ってくれないからこそ、大事にしたい瞬間を逃さないでほしいと思います。
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