「ねこのひげ」。それは猫にとって、欠かせないもの。

平衡感覚を保ったり、周囲を感知したりするのに、とても大切な役割があると言われている。

当連載では、アーティストでありライターのJunko Suzukiにとっての「ねこのひげ」を紹介していきます。

12月1日に新しくオープンしたばかりの「KLT Gallery Store」。

赤い写真たち、ホリデーコレクションのイメージを撮影したのは、本当にオープン直前のこと。

ジュエリーの撮影は、じつは未知の領域。なぜって、人はもちろん、普通のものと比べて遥かに小さいのだ。

そうなると、ライティングとかセッティングが違うし、レンズの使いかたも変えてみないとうまくいかない。新しいレンズを購入する余裕もなくて、四苦八苦しながら撮影をおこなう。

ひとりで作った赤いセッティング。たびたび猫に邪魔されて、ペーパーをぐしゃぐしゃにされたりしながらも、まるでクリスマスの小部屋ができたような雰囲気が気に入って、25日までとっておくことにした。

家がスタジオになっている醍醐味

先日、白猫から「不意打ち」にプレゼントを受け取った。

1時間前まで、黒猫の協力をいただきながらInstagramにポストするための写真撮影をしていた。

撮影はブログ初期からずっといまの家で撮影し、それなりに機材も増えてきた。猫さまの住まいでもあり私のスタジオでもあるのが我が家。

写真を撮るときに猫がいるのは、偶然のことも多々あるのだが、我が家のお猫さまたちはずいぶんと撮影慣れしていて、カメラを構えると私の様子をうかがったりする。

今回は、黒猫姫に撮影について日本語で説明し、「ここに座っていてください」とお願いした。

通じてるのかどうかは不明だが、ありがたいことに、1分くらいは言うことを聞いてくれたりする。

以前、「美術手帖」の誌面撮影に協力したときは、飼い主の私が呆気にとられるほどの女優魂を見せつけた。

スタジオに入るなり圧巻の愛想の良さ。にゃあにゃあと甘い声で鳴いて、スタッフさんに挨拶回りをするのだ...。

「プロの猫さんですか?」と聞かれて上機嫌のお姫さま。そんな腕前の持ち主である。

まぁ、猫ですから、ずっと座ってなんてくれなくて、勝手に歩き出しちゃうんだけどね。その様もかわいかったりして...(笑)。

赤と緑と白といえば...

3回くらい座ってもらったら、いい写真がいくつか撮れたので、ご褒美のささみをあげて、ホクホクと2階のデスク前に戻り、レタッチ & 原稿メールを送る。

よしよし、順調です! と1階へ戻って出かける準備をしようとコートを手に取ると、白い丸が目に入る。

さっき、黒猫さまに座ってもらった場所に、「僕も座るんだもん!」と言わんばかりに、白猫が場所を陣取っていた。

一面に広がる赤、つやつやの新しいダークグリーンのバッグ、となりに現れた白い丸。

思わずiPhoneを構えて撮影した。

予測不能のキザ野郎か、はたまたあわてん坊か

使う予定もない愛らしい写真がたくさんカメラロールを占拠する。

その写真を満足気に眺めながら、ふと思い立つ。私はいま、この予期せぬ事態に大きなよろこびを噛み締めていることを。

予想通りじゃないからうれしいの。便利なことだけじゃよろこべないの。使えなくてもいいの。無駄ってことも価値の証だったりもして。

君がした、その無意味な、おねーちゃんのマネは、なかなか作れるものじゃない。偶然性が生んだ、とってもナイスなプレゼント。

毎日のように新しいものに出会う私をよろこばせるなんて、なんて技の持ち主だろうか。

白猫からのメリークリスマス。

なかなか気の利いた男だと、我が猫を誇らしげにひと撫でして出かけた。

帰宅後。赤い布が真っ白になっていたのは言うまでもない。

サンタクロースはやっぱり、人でも猫でもあわてん坊らしい。

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