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  • 猫宮荘のアオハル(第一話)瀬川コウ

    2013-12-03 12:05  
     猫という生物が敵なのだと確信したのは、私がまだ小学校低学年の頃だった。 その日は生ぬるい風が吹き、葉桜の枝を震わせていたのを覚えている。祖父の家だった。由緒正しい家系である祖父は、塀で囲まれた築ウン十年という歴史ある家屋に住んでいた。そういえば隣にお蔵もあったかと思う。私は泣いていた、誰にも見つからないように裏口玄関で。誰もいないところなら自分の感情を素直に発露させることが出来た。ふと背後に気配を感じる。涙を拭い振り返るとそこには猫がいた。右目付近に黒い部分がまとまっている三毛猫だ。おばあちゃんの飼い猫だった。座ったまま、まるで作り物のような目で私を見ては視線を外し、見ては視線を外し――を繰り返していた。一人だからこそ泣いていた私はプライベートを侵されたような気持ちになってそのまま激情し、猫と格闘を始めた。結果、惨敗。私の攻撃は彼ら持前の俊敏さで全て避けられ、カウンターで猫パンチ、猫キッ