コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている中、昨日まで冷蔵庫にあったプリンを誰が食べたのかという問題で我が家ではコロナ以上の嵐が吹き荒れているわけですが…みなさま、いかがお過ごしでしょうか。パチライター界の最古参にして最底辺こと負男でございます。ちなみにですが、プリンを食べたのは私です。3個入りのうち、残ってた2個を夜中にこっそりいただきました。ごめんなさい。おいしかったです。
さて、みなさまはこんな言葉をご存知でしょうか。
「服を買いに行く服がない」
新しい洋服を買いに行きたいけど、外出用のオシャレな服を持っていないため、まずはそれを買う必要がある。しかし、その服を買うには…という「堂々巡り」をシニカルに表現した秀逸なコピーですよね。タマゴが先か、ニワトリが先かという問題にもどこか似ています。要は、論理的に矛盾してしまう状況を端的に表現しているわけです。
実は過去にパチスロ業界は、これとまったく同じ状況、つまり矛盾しすぎて笑えない状況に陥っていたことがあるんですけど…随分前の話ですので、きっと知らない方も多いんじゃないかと思います。今回は、そのあたりのお話をさせていただきますね。
それでは、さっそく…
突然ですが、現在パチスロメーカーが全部で何社あるかご存知でしょうか。いつの間にか解散、廃業しているところもあったりして、正確な数は私にもわからないんですけど…過去にパチスロ機を発売したことがあるメーカーの総数は、およそ80社だと言われています(同一会社のブランド違いを考慮するとさらに増えます)。
80社。恐らくは、想像していた数よりもずっと多いはずです。ユニバーサル、サミー、山佐といった誰もが知っているメーカーはほんのひと握りだけで、実はパチスロ業界には無名の弱小メーカーがたくさん存在している(していた)ということですね。
そして…
この手の話を古くからのスロッターに振ると、全員が一様に驚きながらこう言います。
「昔は20社くらいじゃなかったっけ? 随分増えたなぁ」
そうなんです。ナゼか刷り込まれている「20社くらい」という数字。これには理由があって、実は…80年代から90年代の半ばくらいまでの長期間に渡って、パチスロメーカーは約20社で固定されていたんです。
ずっと20社だったものが、一体どうして4倍の80社にまで急増したのか。今回私が語りたい話は、このあたりの裏事情にも絡んでくるんですけどね。結論から言いますと、この急増の背景には涙なくしては語れない、とある勇者の「挑戦」があったんですよ。どどーん!
さぁ、まずは時系列を整理して、ひと昔前に戻ってみましょう。
時は1980年。ひとつの業界団体が産声をあげました。当時パチスロを作っていたメーカーさんたちが集まって設立された、日本電動式遊技機工業協会。いわゆる「日電協」です。まぁ、みんな同じ業界でやってるわけだから、仲良くしましょうや…みたいな感じですかね。
それから4年後、日電協加盟メーカーの出資により、新たに「日本電動式遊技機特許」(日電特許)という会社が設立されます。この会社の仕事は、パチスロに関連する特許や実用新案を管理することです。管理って何だよ…と言われそうなので、ちょっと説明しておきますね。
パチスロってのは、様々なアイデアやシステムが詰め込まれた高度な工業製品です。リールの回り方とかストップボタン関連など、全体的な動作や細かい部品の形状などにいたるまで…あらゆる部分に特許や実用新案として登録済みのアイデアが採用されているんです。つまり、それらをパクって勝手にパチスロ機を作ることは許されません。特許や実用新案は日電特許がまとめて管理するって明言してるわけですから、黙ってパクったら、そりゃ怒られますよね。っていうか、怒るなんてナマやさしいものじゃなく、確実に訴訟を起こされるでしょう。んで、むぎゅっとツブされて終わりです。南無…。
訴訟に関してですが、これは新規メーカーだけに限った話ではありませんよ。日電特許は、すでに日電協に加盟しているメーカー間で泥沼の訴訟合戦が起こらないようにするためのものでもありました。パクっただのパクってないだのという争いは不毛ですからね。「特許や実用新案は大切なものだから、みんなで管理して仲良く使おうね」というわけです。実に素晴らしいですね。これで地球上から争いの種がひとつ消えました。日電協に加盟していたら、日電特許を通じてライバルメーカーの特許なども使えちゃうんですもん(もちろん、使用料は発生します)。そこに争いはありません。みんながハッピーです。うん、よかったよかった。
さて、ここで問題です。
どこかの誰かがパチスロ業界に新たに参入したいと思ったとします。この場合、まずはどうすればいいでしょうか?
特許絡みでの訴訟を避けるには、とりあえず日電特許の許しを得る必要があることはわかりましたよね。そして、日電特許が笑顔で許可を出してくれるのは、日電協に加盟しているメーカーさんたちのみです。日電特許ってのは、そもそも日電協が出資して作った会社なわけですからね。そりゃそうなりますわ。
つまり、パチスロを作りたい人が最初にやるべき行動はひとつしかありません。ズバリ、日電協に加盟すること。加盟して日電特許とのつながりができれば、パチスロを作るのに必要な特許や実用新案が使えるようになりますからね。な~んだ、簡単簡単…実にシンプルな話です。
それでは、さっそく日電協に行って仲間に入れてもらうことにしましょう。加盟のためには、なにか条件とかあるのかな? え? あるんですか? まぁ、急にヘンなのが来ても困るだろうし、多少は条件くらいあっても仕方ないですよね。
どんな条件なのかなぁ…。
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[条件1] 3年以上のパチスロの製造実績があること
[条件2] 既存の日電協加盟メーカー3社以上の推薦があること
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ん? パチスロを作るためには、パチスロを3年以上作った実績が必要になる? ちょっと何いってるかわからないんですけど…。
あともうひとつ、今後ライバルになるかもしれない新規メーカーに対して、既存メーカーが「推薦」なんかするわけないじゃないですか。アホなんですか? しかも3社も。これもね、何いってるかわかりません。
つまりはこういうことですよね。
「パチスロを作るためのパチスロが作れない」
まさにアレです。服を買うのに着ていく服がないんです。冗談みたいな話ですけど、かつてパチスロ業界にはこういう笑えない問題が実際に存在していたんです。
一体どういうことなのか…。
結局ね、実態はこうです。パチスロメーカーは既存の数社がスクラムを組んでガッチリと固まり、事実上、新規メーカーの参入を阻んでいたんですよ。そして、その時代が長く続いた結果、古参スロッターには「パチスロメーカーは20社くらい」という記憶が残ってしまったんです。だって、新しいメーカーの参入は事実上不可能で、ずっとほぼ固定メンバーだったわけですからね。
ラグビーの強豪チームもビックリの鉄壁ディフェンス。しかし、なんとそこに…ある日突然、正面から立ち向かう勇者が現れました。いやぁ、命知らずですね。相手は超強豪なのに。ラグビーでいえば、ニュージーランド代表に西池袋3丁目代表が勝負を挑むくらいの感じでしょうか。知らんけど。
いまから25年ほど前の1995年。とてつもなく高い壁に敢然と挑んだ勇者は、その名を「日本回胴式遊技機工業」、略称「JSI」といいます。そう、パチスロ業界への新規参入を試みたメーカーさんです。
果たして、このJSIなる勇者は何をやり、結果的にどうなったのか…すっかり長くなってしまったので、申し訳ありませんが、この続きは次回とさせてください。ちょっと用事もありますしね。私、これから出掛けないといけないんですよ。
では、行ってきます。プリンを買いに…。
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