病院がないほうが死亡率が下がる! 夕張市のドクターが説く、"医療崩壊"のススメ | ログミー[o_O]
夕張市が2007年に財政破綻し、市民病院も閉鎖され、医療崩壊したが、その後死亡率、医療費、救急車の出動回数、全て下がったという衝撃の報告で、大変話題になっています。
大変興味深い話です。
しかし、「それって長期医療が必要な市民が逃げただけでは」と疑問を持つツイートを何回か見かけました。なるほど、夕張式医療崩壊による健康推進は、見せかけなのか、はたまた「未来の普通」になるのか、とても気になります。
さっそく調べてみました。
参考にしたのは
毎年東京から全国1700の市町村に移り住む様子がロングテールだった。(その1)
でも使った総務省の住民基本台帳人口移動報告です。
この報告には、「年齢(3区分),男女別他市区町村への転出者数」という表があります。0~14歳、15~64歳、65歳以上の区分それぞれの転出者の数が分かります。夕張市と全国で、その割合を見ると次のようになっています。
統計のある2011年、2012年も同様の傾向です。
夕張市は高齢者が逃げる町なのです。
また、この逆の統計、つまり転入者のデータもあり、そちらでは全国が同じく5.67%に対し、夕張市は 232人の転入者のうち、9.48%にあたる22人が65歳以上高齢者です。
また、高齢社会白書によると、65歳以上高齢者のうち3.3%が入院しています。夕張市には5000人くらいの65歳以上の高齢者がいます。
以上を元に夕張市に起こっていることをまとめると次のようになります。
全国の割合を自然な転出入と考えると、毎年の夕張市の転出者のうち25人くらいの65歳以上高齢者と、13人くらいの転入者は自然な理由による移動と考えられます。
しかし実際は109人が転出、22人が転入しています。その差、84人の転出者と9人の転入者は、なにか夕張市特有の理由があって移動していると言えるでしょう。
一方、夕張市には5000人くらいの65歳以上の高齢者がいますので、そのうちの3.3%にあたる165人は、全国平均から考えられる入院しなくてはいけないほどの病気やけがをしている人の数です。夕張市特有の転出者84人のうちの一部がそういった重い病気の人で、夕張市特有の転入者9人の一部が元気でピンピンしている人であれば、容易に死亡率、医療費、救急車の出動回数に影響します。
ここまで65歳以上の話しかしていませんが、人口の約半分が65歳以上で、医療が必要な人の大部分は65歳以上なので65歳以下を含めてもあまり傾向は変わりません。
つまり、夕張市の死亡率、医療費、救急車の出動回数が下がる一つの原因は、単に不健康な老人が逃げているからなのです。
だからといって、夕張市民の意識の変化や取り組みが、死亡率、医療費、救急車の出動回数に無関係と言えるわけではありません。やむを得ず去った人もいれば、残ると決意をしたことで医者に行かなくて済むようになった人だっているはずです。
それは、もっと詳しく調べないと分かりません。転出者の影響は1割なのか、半分くらいなのか、9割なのか、あるいは99%説明できてしまうのか。
どの程度効果があるのか、たとえば、市民を追跡調査すると分かるでしょう。対象となる高齢者のある年と次の年の健康状態を比較するのです。相変わらず途中で健康不安で夕張市から転出される方はいるでしょうが、そうではないくらいの健康な人をトレースして、全国の似たような人と比べることで、より健康を維持しているかどうかを調べられ、もしそれで優秀であれば、「確かに夕張市では予防医療が進んでいる!」と証明することができます。
なお、この件については、以下の記事で、詳しく調べられています。
「病院がないほうが死亡率が下がる!」の関連資料を読んで - リハ医の独白