財務省が国立大の学費をあげてはどうかと提案しているそうです。
財務省「国立大は富裕層が多いから私立並みに授業料上げればいいのでは?」→国立の意味は!? - Togetterまとめ
まあ、財務省はそれを言うのが仕事ですからとりあえず言うでしょうし、これから文科省がどう巻き返していくのかが注意して見なければいけないことでしょう。
しかし、子供を育てる上でもっとも問題になりがちなのが高額な大学の費用で、大学の費用を意識すると子供の数は少なくせざるを得ません。ただでさえ少子化の原因ではないかと考えられるのに、さらに値上げを検討されるとか、今子供を産む世代にしてみれば、こういうニュースは、これは20年後はもっともっと上がるかもしれない、とても子供なんて持てやしないと思わせるのに十分です。たとえ結果として今回上がらないとしても、さらなる少子化促進のメッセージになっているのではないでしょうか。
時を同じくしてこんなブログもありました。
いま失敗すれば、日本終了。 - デマこい!
夫婦が子供を産むのは年収500万円以上からというデータがあるというお話です。だから、少子化を食い止めるには、「若者に年間所得500万円を達成させるかにかかっている」というのです。
なぜなら、子供は金がかかるし、その理由は、
からだとしています。技術が発達して経済が豊かになるほど、子育てに必要な教育コストも上昇する。これが「教育と技術の競争」だ。
このようなストーリーを読んでいると本当に未来が不安になってきますが、果たしてこの通りになるでしょうか。
ちょっと違うストーリーを考えてみようと思います。
現在奨学金が返せない人が増えていると聞きます。奨学金を借りて大学に入ってから就職しても思うように給料があがらないからです。つまり大学にいった元が取れていないのです。
学習の費用対効果は幼いほど高いと言います。未収園児や小学生への教育は効果が高いけど、歳をとるにつれ、教育しても効果はあがらなくなります。
では大学はどうなのでしょうか。もちろん学問を目指す人にとっては必要な過程かもしれませんが、大学を出てすぐ就職する人にとって、どのくらい大学教育は効果があったでしょうか。私が大学の頃なんて、授業に出ない人なんていくらでもいて、でもいわゆる社会勉強をして立派に就職していきました。有り体に言って、大学で勉強せず社会勉強をしてたわけです。高校までは社会勉強なんてほとんどしませんから、その効果は高いわけです。学費は高かったですが、高度成長期の時には、学生が大学に行ってなくても誰もあまり気にしませんでした。
しかし、高度成長期が終わり、高い学費が意識されるようになると、親も子も学費の分だけ大学から教育を得るべきだと考えるようになります。出席率は上がり、みんな真面目に大学の教育に取り組むようになりました。一方でそれまでされていた社会勉強は減ったのです。
それに従って今じわじわわかってきてしまったのです。大学教育は費用対効果が低いと。
この先、若者やその親は大学への進学に注意深くなるでしょう。明確な目的なく、入らなくなります。
学問の道に進む人は入るでしょう。小さなイノベーションが無数に必要な時代になっていますから、地方の大学に進学して地方に密着した研究を目指す人も出てくることでしょう。世界を相手にしたグローバルな研究だけが研究ではないのです。
地元の公務員になりたい人は地元の大学に進むといったこともあるでしょう。
あるいは「社会勉強」をするためにインターンやボランティアなどの活動をしながら、社会人大学で必要な学位を揃える人もいるかもしれません。
そのような明確な関連がなければ大学には行かず、将来の就職に直結する専門学校などに行くかもしれません。
国の支援が増えることもあまり期待してはいけません。費用対効果が低いということは、いくらそこにお金を入れても社会に還元されないわけですから、大学にお金を入れるよりは、幼児教育や小学校の教育注いだ方が効果が高くなります。
もうビジネスの分野ではそんなの常識ですから、みんなどんどん仕掛けて来ています。今まで学校の勉強についていけなかったような子に対し、個別指導や、オンライン教育、さらには学習アプリなど、様々な手法が試されて始めています。エリートに注目するのでなく、すべての子が義務教育をきちんと習得することに力を入れる方が、マーケットの大きさもはるかに大きいでしょう。そして義務教育をきちんと習得する子が増えれば増えるほど、社会を埋め尽くす無数の問題をかたっぱしから解くことができるようになるのです。
経済学の分野でも、その切り口が現れているそうです。
「貧困不良少年」が経済学のスターになった! 規格外経済学者、フライヤー教授の快進撃 | トレンド - 東洋経済オンライン
ちょっと前に流行ったピケティの富裕層に対するアプローチは、21世紀どころか20世紀なアプローチでしたが、フライヤー教授はボトムアップを説かれているそうです。こっちこそが真の21世紀の資本論になっていくのではないでしょうか。
では、その幼児や小学校の教育費がどんどんかさむようになるのでしょうか? でも、今次々と生まれているスマホの学習アプリは最初無料なんて普通です。払うとしてもせいぜい数百円なんてのが多いでしょう。でも子供によっては、そんなアプリをいくつかこなすだけで、義務教育レベルの教育は十分習得できたりするでしょう。