GDPは100兆円くらい下げたほうがいいのでは?
という、ちきりんさんの煽り記事がバズっています。
刺激的なタイトルですが、内容は
まず(このまま無駄な消費を増やして GDP を600兆円にするのを目指すのではなく)、不要な 100兆円分の市場を減らして 400兆円を目標にしようよ。と、今ある世の中の2割くらいの無駄な消費を減らして、その分本当に必要な消費に回して500兆円に戻そうと説くものです。
そして、その後で 100兆円増やして(元の)500兆円にする。これこそが日本にとっての成長戦略だと(あたしは)思っているでございます。
いってることはもっともらしいですけど、GDPが2割減ったら、私たちの給料も2割減ります。もう少し丁寧に言うなら、「無駄な消費」と言われているもので食べていた労働者が失業、つまり労働者の2割が職を失い、その結果労働の需求バランスが崩れ、みんなの給料が減ります。
そんな激しいインパクトが日本を襲ったら、はい、目標の400兆になりました、今から500兆にしましょうなんて言ってできるわけがありません。
やるんだったら、というか今実際日本で起こっているのは、そういう無駄なものを取り除きつつ新しい産業にシフトして、ずっと同じGDPを維持しているということです。
GDPが一緒ということは、進歩してないということではありません。毎年、進化したあたらしいスマホが去年と同じ値段で出るということです。給料も変わらないけど新しいスマホの値段も前と変わらないという世界です。給料が変わらないというのは、どんなに頑張っても給料が上がらないという意味ではなく、一人一人をみると能力が上がるにつれ給料は上がりますが、たとえば大卒初任給は毎年一緒という意味です。
今まで成長、成長と言ってきたのでその世界はピンときませんが、でも社会が高度成長を終え、持続的な社会を営むならば、別にGDPはずっと一緒で構いません。っていうか、よくも悪くも、すでに日本は長い間それでやっています。
その辺は以前シリーズで考えました。
日本のGDPが増えなかった真の理由がわたしたちを豊かにする(その1)
ちきりんさんにしても、無駄を省いていったん400兆円にしても500兆円に戻そうと言っているわけですから、持続的な現状維持をイメージしているのは明らかです。
ではなぜ、「現状の500兆円を維持しながら、無駄を省いて新しい消費に回そう」と言えなかったのでしょうか。
それはやはりアクセス数のためでしょう。タイトルこそアクセスのために「GDPは100兆円くらい下げたほうがいいのでは?」とキャッチーなものにするのは仕方ないにしろ、ちきりんさんくらいのトップブロガーになれば、内容としては同じようなことを書きながら「現状の500兆円を維持しながら、無駄を省いて新しい消費に回そう」という結論にしても、ちゃんと拡散したのではないかと思います。
それでも、あくまでタイトルを貫いて、最終的には元のGDPに戻るのに、一旦労働者の2割が失業するようなシナリオを書いたのでしょうか。