すっかり就活の季節ですね。

 一年前の情報ですが、「2013年卒マイナビ大学生就職意識調査」という調査があります。その紹介記事があります。

 Business Media 誠:就活生の意識に変化、急速に進む大手企業離れ

そこでも引用されているグラフが印象的です。


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 赤が中小企業指向、緑が大企業指向です。ここ二年大企業企業指向が急速に減っています。これは実はかなり特徴的な動きです。

 というのも、こういうのは通常だいたい景気で説明できます。たとえば左端の01年卒の調査はちょうどITバブルの頃ですから、大企業指向が低くなりがちです。みんな気が大きいんですね。
 一方景気が悪くなればより安定した大企業指向になるのが自然です。
 しかし、ここ数年は景気は激悪なのに、それでも大企業指向が大幅に減るというのは変わった変化です。

 上記の記事では「意識の変化」と表現されていますが、それだけではないかもしれません。学情ナビなど中小企業の求人情報が充実して、学生が調べやすくなったことがあると考えています。中小企業は文字通り小さい分、自分にあった企業を見つけるには、大企業1社に対して、何10社も調べないといけないかもしれません。しかし、効率よく情報が得られるようになって、「ここだったらいいかも」とピンと来る企業が見つかりやすくなっていることでしょう。

 就活の効率も上がって来ているようで、ウェブでエントリーとか普通になりましたし、先日は、一度に5社受けられる合同面接の取り組みを紹介しました。

 また背景として、ツイッターなどソーシャルネットワーキングサービスで、社名を公表しながら発信する個人が増えていることも大きいでしょう。中小企業であっても、普段から「中の人」の様子が分かる企業はそれだけでも安心できます。

 IT業界では、業界内の転職がごく当たり前のことになってきました。「退職しました」と挨拶をするブログ記事はごく当たり前になってきましたし、「そろそろIT業界は『退職』じゃなく『移籍』っていうべきなんじゃ」なんて意見をツイッターで見かけたことがあります。中小企業は将来に不安が残りがちですが、業界として流動性が高く転職がしやすければ、中小に入る障壁は減ることでしょう。

 一方で記事でも言われた意識の変化もあるでしょう。同じ調査で就職感という項目では「人の役に立ちたい」という項目がここ数年目立って増えています。
 これは私も強く感じます。たとえばビジネスプランコンテストの応募内容は、昔に比べて社会起業を指向するものが目立って増えました。
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 大企業では大勢の人を満足させる商品やサービスを生み出すことができますが、一人一人の顧客は見えにくくなります。
 中小企業は、個人個人の多様なニーズにきめ細やかに対応した無数の商品やサービスを生み出しながら、誰にとってどんな風に役に立っているのか身近に感じやすいことでしょう。そうした中小企業が就職先の候補として見えて来たことで、働けば「人の役に立てる」ことが見えやすくなり、つまり意識も高くなってなるという相乗効果が働いているのではないでしょうか。

 中小企業の求人の割に応募が少ないという新卒学生との雇用のミスマッチングは社会問題としても取り上げられていますが、少しずつマッチングが進んでいるようです。今年の大学生就職意識調査もあと1ヶ月程で発表されることと思いますが、どんな結果が出るのかとても待ち遠しいです。


 この流れをさらに進めるどうすればいいでしょう。私の聞いた範囲では、福祉の充実がポイントのようです。特に女性を取り巻く環境として、適齢期での結婚や出産へのプレッシャーは年々強くなっています。働きたいけど、結婚・出産も早くしたいという女性にとっては、福祉制度の充実が重要な項目となります。

 福祉の充実は中小には負担と考えられがちですが、いろいろ工夫は出来るようです。アメリカの話ではありますが、以下の記事ではグーグルなどでは給料を上げるより福祉を充実させることで社員のモチベーションを上げる取り組みが紹介されています。

 グーグルが社食をタダにする理由

 日本でもいろいろ工夫されています。たとえば

 日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方

では、実に様々なユニークな企業福祉が紹介されています。実家が遠い人の帰省を支援する制度とか、さらには疲れ目になりがちな社員のために「ブルーベリーアイ」支給制度とか!! 小さい企業は思い切った制度ができるのが魅力ですね。

 中小企業に優秀な人材がどんどん流入して、小さなイノベーションがますます無数に起こることでしょう。これからが楽しみです!

2013/2/17 追記:
 今年は大企業指向が強まっているそうです。

学生、再び大手志向 採用ミスマッチ拡大も  

 この記事では上の説明とは逆に「いままでは景気が悪かったので中小企業指向だったが、景気が上向いてきたことで大企業指向が戻って来た」と分析されています。ただ、実際に大企業の採用予定数は増えていないそうで、表題の「採用ミスマッチ拡大」が心配されるそうです。

 いずれにせよ景気だけで大企業人気を説明するのは難しいのかもしれません。今年の「マイナビ大学生就職意識調査」が出たら落ち着いて分析してみようと思います。

・併せてどうぞ
革命的な一石五鳥の共同一次面接。カカクコムなど。