岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/05/23

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2016/12/11配信「大総括!2016社会派編 成宮寛貴引退とトランプ大統領選挙とメディアの役割、ポケモンGOと貧困本題とパチンコ業界、キュレーションサイトと情報劣化と19世紀アメリカ」の内容をご紹介します。
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2016/12/11の内容一覧

日本ネット界の二大政党は嫌儲主義と市場経済主義

 アメリカに民主党と共和党という二大政党があるよね。民主党っていうのは基本的には大きい政府で福祉を充実しましょう、オバマ大統領が言っているようなところだ。共和党っていうのは、嫌いな人も多いんだけど、小さい政府であり、軍事力を増大させて、国民の格差を肯定するという、自由競争が大好きな政党だ。
 そういうふうなものがあるように、日本のネットにもね、いま二大派閥、政党があると思っているんだ。ひとつは市場経済主義者っていうのかな。つまり「ネットの仕組みを使って儲けない奴はバカだ」という考え方。ネットはガソリンエンジンや電車と同じく単なる仕組みであると。だからそれを利用して利潤を追求するのはOK。ネットだけを特別視して「儲けることは汚い」なんていうガキみたいなことを言うバカもいるけど、そういう奴は無料のまとめニュースで釣りまくってアフィリエイト収入で儲ければOK。これが市場経済主義者ね。

(中略)

 「嫌儲」ね、「嫌う儲ける」主義者ですね。僕たちもなんとなく名前を知っている、ドワンゴの川上さんという人によれば、クリエイターやコンテンツ利用者が対価を得ることを嫌うことも指すと。ウェブで作られた造語であるため、発音される機会が少なく、正しい読みが確立されていない。「けんちょ」「けんもう」「いやもう」などの読み方もあると、「いやちょ」「いやもうけ」などと呼んでもいい、この市場経済主義者と嫌儲主義者が、じつは日本のネットの二大政党じゃないかと思っているんだよ。
 僕ね、どっちも正しいっていう問題じゃない、どっちが正しいという問題じゃなくて。どっちが幼い、どっちが優れているという問題ではなくて、これが二大派閥だと思うんだ。だからこのあいだの争いはなくならないし、じつはこの間の建設的な対話によってネットはよくなっていると僕は思うんだけどね。
 まあ、嫌儲に関して、Wikiからの転載になるんだけども、嫌儲の心理や原因については複数の識者から推察・指摘がなされていると。津田大介・ちきりんらによれば、嫌儲的な発想に同居する一部のインターネット利用者たちは、自分の利益が減ることよりも、自分とは関係ない第三者が利益を得ること自体を憎悪している。
 つまり、嫌儲の人たちっていうのは自分たちが損することではなくて、誰かが儲けること、ネットを使って儲けることをすごい嫌がっていると。またニコニコを運営するドワンゴ会長でありKADOKAWAの社長でもある川上さんによれば、彼らは自分たちを社会的にも経済的にも弱者であるとしており、濱野智史によれば「自分たちの世界は平等でなければならないと考えている」と指摘すると。週刊ポストの中川淳一郎はそうした人々のあいだに広がる思想として、インターネットとは本来しがらみのない自由な空間でなければならないとし、佐藤信正はインターネット利用者が自分たちで作り上げたコンテンツは、金銭の流れがないからこそ自由であり公平性が保たれている、という考え方があるのではと指摘している。
 すなわち「嫌儲」的な発想を支持し金儲けを敵視する人々にとっては、2ちゃんねるやWikipediaのようにユーザーによって作られるコンテンツは、こうした金儲けに対する嫌悪感によって擁護され支えられているという自負があるのでは、というふうに佐藤さんは指摘していると。また理由としては、課金がなされることにより、課金にあったクオリティがさらに要求される。お金を取ることによってお金を取るだけのクオリティが要求されることによって、コンテンツが自由に制作できない、まあ、いろんなことを言われているんだけれども。
 これまでね、嫌儲の人たちっていうのは、分析とか揶揄の対象だった。つまり、からかいとか皮肉の対象でもあったんだけども。
 さっきも言った共和党と民主党の思想的な対立だというふうに考えたほうがいいと思うよ。どっちが正しいかじゃないんだよ。たぶん、市場自由主義者だけではダメだし、嫌儲主義者だけではなくて、その対話によってしか物事は解決しないし、「僕らのネット社会」っていうのはこれからも永遠にこの2つの問題って出てくると思うんだよ。

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