岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/08/30

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2017/08/13配信「『シン・ゴジラ』2つの元ネタと、ガンダムで学ぶ科学」の内容をご紹介します。
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2017/08/13の内容一覧

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦』で学ぶ科学の基礎講座

 アニメ版ガンダムオリジンの第5話『激突ルウム会戦』の予告編が公開されたね。これを見て、俺は、イライラの頂点に達してですね。

(パネルを出す、宇宙戦艦が映る後ろで、激しい宇宙戦闘が行われているキャプチャ画像)

 これは、ジオンの巡洋艦「ムサイ」かな? この艦の周りで、バーッと爆発が起きてるよね?
 これ、ガンダムの時代からアニメに取り入れられた「丸い球形の爆発」だよね。これはイライラしないの。なぜなら、これが正しいんだよ。
 『マクロス』でこれを知った人も多いと思うんだけども、実は、マクロス以前の『機動戦士ガンダム』あたりから、ロボットアニメにおける宇宙空間での爆発表現が球形になった。『イデオン』でも球形でやってたんだよね。

 これはつまり、「1970年代の後半くらいに、日本のSF映像というのがこのレベルに達した」ということであって、実は世界のSF映画と比べても遜色が無いくらいの最先端の表現を日本のロボットアニメはやってたということなんだ。
 というのも、それまでのSFでは、アニメでもなんでも、「宇宙空間での爆発」っていったら、もう地上と同じように四方八方にメチャクチャに爆炎が発生して、酷い時にはモクモクと煙が「上方に」発生してたんだよな。さらに酷い時には、その煙が航跡を引くように、前進する宇宙船の後ろに煙がたなびいていたりもしたんだけども。
 そんな表現から、ガンダムとか、イデオン、マクロスのあたりで、こういう「真ん丸な球状に爆炎がポンポンポンと広がる」という形になったんだ。
 その理由としては、もちろん「富野さんがそれまでのウソばっかりの宇宙戦争描写に嫌気がさしたから」というのもあるし、あとは実際に作画しているスタッフも、やっぱりみんなSF映像のことをすごい気になるからさ、「本当はどうなるんだろうか?」ということを自分なりに調べた結果、「これまでみたいなウソはやめよう」ということになったというのもある。
 今回のアニメ版THE ORIGINでも、ちゃんとこういう爆発をやってくれてるんだけど。これを見ると、ポンポンと球状に爆発しているでしょ?

(中略)

 ところがところが、11分のアニメ版オリジンの予告編を見たら、21世紀、2017年に、ミサイルが煙を吹きながら、カーブして飛んで行っています(笑)。まあ、カーブするところまではOKだと思うんだけども。
 あのねえ……もうね、当たり前のことなんだけども、言わなきゃいけないんですね。ちゃんと1つ1つ基礎から固めましょう。

 まずね、「ミサイルの煙」っていうものから考えましょう。
 昔のアポロの打ち上げ映像を見てください。実は、アポロのサターン5型ロケットというのは、煙を噴いているように思われがちなんだけども、空へ飛んでいくときに火は伸びているけど、煙はまったく伸びていないんですよね。
 それはなぜかというと「液体燃料」だから。液体燃料っていうのは、燃料タンクに入っているものがほぼすべて燃えちゃうから、煙の成分となるような粉が残らないんだ。
 地上では水蒸気がばーっと破裂するんだけども、空に上がってからは、一切、煙は伸びていない。だから、実はアポロの宇宙船が飛んでいるところって、わりと間抜けなんだよね。火がひゅっと伸びているだけで、途中から何も残らないんだ。
 でも、たぶん、それより後の世代の人たちは「スペースシャトル」を見ている。スペースシャトルというのは「固体燃料」で上昇するから、延々と煙がモクモク残っちゃうんだ。

 この間、北朝鮮が打ち上げたミサイルも、煙がモクモク上がってたよね? あの辺りから、北朝鮮問題を語る軍事評論家の口ぶりが変わったと思うんだよ。それはなぜかというと、「煙がモクモク残る=固体燃料の開発に成功した」ってことだからなんだ。
 実は、液体燃料の方が、燃費的にはちょっと良い場合が多いんだけども、固体燃料の方が圧倒的に扱いやすい。特に、北朝鮮みたいに「ミサイルを出来る限り隠しておきたいし、発射するとなると、将軍様の命令一発で、1分以内に発射できるようにしたい」という場合では、液体燃料を使っている限り、そんなことできないんだ。

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