岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/02/15

おはよう! 岡田斗司夫です。

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今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
DMMオンラインサロンの岡田斗司夫ゼミ室では月に1回オフ会があり、ここで質問や相談を受け付けています。

 今回は1月大阪オフ会を関西弁でお届けします。

やっぱり宮崎駿という人間は面白いぞ!

 なんやろう、この第何次かの“宮崎駿、やっぱり面白いぞ”感は(笑)。
 『風の谷のナウシカ』って、周りが砂漠化してるの。
 でも、この砂漠化って砂と違うねん。
 あれは高度産業時代に、人類が作った“セラミック文明”っていうのがあって、そのセラミックが粉々になった砂やねんね。
 なので、草が生えへんの。
 自然の砂と違って。
 僕らの世界で言うプラスチックみたいなもんで。
 セラミックの破片が粉々になって、サラサラして砂みたいに見えるっていう話なんですよ。

 で、それを高畑勲は「劇場版のナウシカで描け!」という。
 「そんな設定は描け!」と、「文明批判になっている!」と。
 で、宮崎駿は、それに対して何て言うかっていうと「そんなのを描いてるから高畑さんの映画は『おもひでぽろぽろ』みたいに説教くさくなるんだ!」と。
 「俺は共産党の映画を作ってるんと違うぞ!」と(笑)。
 『人類がこんな愚かな事をしたら、こんな姿になった』
 『それに対して自然は、こんなふうに復活しているのです』
 「そういうのは、あんたの考えであって、俺の映画はそんなのではない!」というふうに言うてんねんけども。
 これは宮崎駿が言うたこと。
 この「高畑勲が、こんな事を言った」というのは、仲間だからディスるという高畑勲に対する面白話をしながら、そのアイデアを不採用っていうのもあんのやけども。
 最近、僕が思う「宮崎駿は、こうじゃないのかな」と掴みかけた仮説は、宮崎駿は、このアイデアを没にするのがすごいもったいないワケやねん。
 だからといって、映画の中に入れる時間は確かに無いと。
 なので、どうするのかというと、インタビュアー相手にグチる事によってネタを出したいと。
 そういうのが、いくつもあんねや。
 たとえばナウシカのラストシーンって、王蟲は幼虫で、成虫になって宇宙に飛んでいくって考えもあってんて。
 すっごい意外やん。
 で、なんでそれをボツにしたかっていうと、「きっと手塚治虫だったら、こうするに違いない!」と言うんやけど、手塚治虫は そんなん せぇへんよ(笑)。

 それは何かっていうと、自分の中で思いついたアイデアを消したくないねん。
 だから「きっと手塚治虫だったら、こうするでしょう!」と言うてんねんけど。
 そう思ってみてみると、宮崎駿の発言の中で「きっと手塚治虫だったら、こうするだろうけど!」 というのが、なんと多い事かっていう。
 全部、それを自分のボツアイデアに関して言ってるの。
 自分のやりたかったボツアイデアに関して。
 だから王蟲が成虫になって宇宙に帰っていくのを、何で採用せぇへんかったかっていうと、それはナウシカの元ネタがやっぱり『モスラ』やったから(笑)。
 モスラって、幼虫が日本に来て、成虫になって、ニューヨークを破壊して。
 それで最後に小美人を乗せて元の国に帰るやから、実は基本はナウシカやねん。
 基本プロットは、実はナウシカってモスラと同じやねん。
 それも、かなりビックリするぐらい同じやの。

 でも宮崎駿は、バレる事はあんまり気にしてへんの。
 ただ、思ってるのは「それをやると、手塚治虫になる」って、心の中の手塚治虫がいるから(笑)。
 宮崎駿と手塚治虫は、おそらく会ったことは無いと思う。
 けども東映動画の古い人たちは、一方的に手塚治虫の事を恨みに思ってる。
 アニメの単価を下げてしまって。

 宮崎駿って、こういう人やねん。
 ボツアイデアを、ボツのままで終わらせたくないので。
 一つの方法として「こんな考えがあって、こうやろうと思ってたんですよ!」と言って、「えぇっ、すごい!」って言われるというやり方もある。

 一つとしては、そういう事を、一切言わないという方法もある。
 高畑勲は、そうらしいねん。
 高畑勲って、心の中でボツにしたアイデアを、口(くち)にせぇへんねんて。
 作家として、いさぎがいいよね。

 でも宮崎駿は “いさぎいい”とは真逆の人やから、言うし、コンテにまで書いて見せるねん(笑)。
 で、誰かにウケたら、それを目の前でゴミ箱に捨てるねん。
 成仏させるみたいな。

 面白いよね、こんなヤツがまだ生きてて、「引退する」って言うて、また復活するっていうのって。
 一秒でも長生きして、俺たちを楽しませて欲しいね(笑)。

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