岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/03/16
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/02/18配信「シャーデンフロイデの謎とサイコパスのススメ!」の内容をご紹介します。
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2018/02/18の内容一覧
- 本日のお品書き
- シャーデン・フロイデとは何か?
- オマキザルを使った不公平実験
- サルは目の前の結果だけで怒る
- サルはズルいものが罰されても分からない
- レイク・ウォビゴン効果「うらやましい」を認めない
- 意地悪なオランダの心理実験の結果
- シャーデン・フロイデの仕組み
- オキシトシンが起こす脳内現象
- サンクションへの欲望 ざまあみろの心理学
- 人を見下げる喜び
- 高校生を対象にした恐怖の心理実験『THE WAVE』
- サードウェイブとミルグラム実験「「善き人」はもっとも残酷」
- 日本では、不安になりやすい人の方が生き残りやすかった?「SS型仮説」
- オキシトシンのダークサイドを明らかにした「サードウェイブ実験」
- 優しく立派な人ほど非人間的な命令に従うことを示した「ミルグラム実験」
- サンクションで得するもの
- オーバーロード仮説「君は人のために死ねるか?」
- 人間には4つの「性格基」がある
- まとめ サイコパスのすすめ
オーバーロード仮説「君は人のために死ねるか?」
では、なぜ、いじめや叩きなどのサンクションを引き受ける個体が発生するのか? なぜ加害者が発生するのか?
その理由は明らかで、「楽しいから」です。サンクションを実行したヤツには、莫大なオキシトシンやドーパミンが与えられるということが、実験でわかっています。
つまり、パチンコなどのギャンブルに行ってしまうのと同じ。得はないけど、楽しいから止められない。そして、楽しいから、いつの間にか、そこに行く理由を自分の中で正当化してしまうんですね。
なので、サンクションについても「自分の得にはならないけど、集団にとっては得になる。だから、俺がやるべきだ! なにより、やったら楽しい!」ということを思い込まされてしまうんです。実際には、やったら脳内麻薬物質が出るんですけども、現実的には何の得もないという。こういった構造になっています。
まとめると、まず、「集団の意思」が、自分たちのグループを守るために、個体に対して「サンクションをしてくれたら、気持ちよくしてあげるよ? 脳内物質を出してあげるよ?」というような取引を持ちかける。自らコストを支払い、リスクを引き受けて、サンクションを実行させるために、各個体に対して目には見えない誘惑を掛けるんですね。
すると、その誘惑に負けた個体がサンクションを実行する。弱い個体はその取り巻きになったりして騒動を起こすんですけども。でも、その結果、彼らは徐々に居場所を失ってしまう。
だけど、これも集団の意思が望んだことなんです。なぜなら、サンクションの実行者をグループの内部に置いておくと、その集団自体の価値を落としてしまうから。だから、徐々に徐々に、その集団の中で居場所をなくすように仕向けていく。
これが3月のライオン効果です。怖いですよね。
さて、不謹慎な人間や不道徳な人間に対してサンクションを与えることは、個人の利得ではなく集団の利得に繋がる行為であり、制裁の実行者には得がなく、リスクや損だけがあるという話をしました。
なので、サンクションの発起人というのは、集団から与えられた誘惑に負けた、弱い個体なんですけど。
これを集団とか誘惑とか言ってるとわかりにくいので、シンプルにするために「オーバーロード仮説」というのを考えてみました。
このオーバーロード仮説は、別に、昨日今日に思いついたわけではなくて、だいたい15年から20年前から僕が考えていることで、岡田斗司夫の考え方の基本になっているものなので、まあ、耳の穴をかっぽじってよく聞いてください(笑)。
あらゆる生物には「生存本能」というのがあります。それ故に、レミングみたいな例外を除いて、「自殺する生物は人間以外にいない」と、一般的には言われています。じゃあ、なぜ、人間には自殺ができちゃうのか? 生存本能がなくなったからなのか?
あるいは、「あらゆる生物には繁殖を求める本能がある」というふうにも言われています。子供を作って育てるのは本能のはずなんですけど、でも、今や日本人の半数は結婚してないし、子供を持っていなかったりします。なぜ、こういった本能に反する行動を取れてしまうのか?
これについて、よく「人間は特別な生物だから」とか、「本能が壊れてるから」とか言うんですけども。その程度のヌルい説明では、僕は納得しないんです(笑)。
そこで、この疑問にシンプルに答えるために、僕が考えたのがオーバーロード仮説です。
「オーバーロード」(上帝)というのは、アーサー・C ・クラークの『幼年期の終わり』という小説に出てくる宇宙人です。
……まあ、偶然にも、この『幼年期の終わり』とまったく同じタイトルのアニメがありますけど、アレは関係ないので、気にしないように(笑)。
オーバーロードというのは、地球人が発生するきっかけになった宇宙人なんですけども、そう言う関係上、地球人は、彼らのことを本能的に「自分たちの支配者だ」と思って逆らえない。そういう存在なんですね。
ひるがえって、僕らも自分達が所属している集団の意思に逆らえない。これはオーバーロードとまったく同じなんですよ。
例えば、「男性」という集団に属している以上、「女ばっかりが得をしやがって!」みたいな意思に逆らえない。だから、女性専用列車に突入しちゃうバカも出て来る。「日本人」という集団に所属しているから、竹島に無断上陸しちゃうバカもいるし、ヘイトスピーチしちゃうバカもいる。韓国人にもバカがいる。日本人にもバカがいるわけですね。
一方で、オリンピックになると、自分の力でもないのに、「頑張れニッポン!」というように、熱心に応援してしまう良い人もいるんですね。
このような行動というのは、国家や地域、家族などの、自分の仲間の繋がりを、自分よりも大事だと思うからこそできるんです。
こういった「自分よりも価値のある上位の存在」のことを、かつては神と呼びました。だけど、現代、科学の時代を経て、僕ら人類は、自分たちを創造した絶対存在である神様というものを信じられなくなってしまったんですね。
しかし、現に僕ら人間を利用して、自らの生存本能を満たそうとしている「集団」という概念があるわけです。これを、仮にオーバーロードと呼びましょう、というわけです。
僕がさっきから使っている、集団とか文化とかって言葉は、わかりにくいから、それを「オーバーロード」っていうふうに呼んでみましょう。別に、「神様」と言っても構いません。
オーバーロードとは、僕らが無意識に忠誠心を持ったり、ルールを勝手に作ったりして、それに反対する人間に戦ってしまうような、そういう自分より上の存在のことです。
「自分が損をしても、健康を損ねても、やりたいことを我慢しても、従うべきだ」と考えてしまうような、人類の上位概念。これがオーバーロードです。
オーバーロードは、人類の歴史上、最大の発明であると同時に、たぶん、人類が選んだ進化の方向性なんですね。
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