岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/05/21

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/05/13配信「あなたの隣人はなぜガンダムをあんなに見るのか?『パシフィック・リム』から「巨大ロボット学」を語る」の内容をご紹介します。
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2018/05/13の内容一覧

宮崎駿ですら手を出した巨大ロボットモノ

 よく言われるように、日本人というのは、なんかロボット好きなんですよ。
 今、流れているコメントからもわかる通り、ロボットの話をするだけで、みんな、やたらとマニア合戦になるんですよ。前回、ゲストにいらっしゃった大童さんが好きそうな話になっていくんです。

 日本人のこういうところについては、「西洋人のように、人の形や人みたいに動くものを人工的に作り出すということに、宗教的なタブーがないから」というふうに言われてます。
 それを象徴するように、一時期には「日本のアニメは、ほとんどがロボットモノだ」とか言われていたこともあったんです。
 まあ、もちろん、それは大げさなんですよ。でも、アニメのことをよく知らないと、とにかく目につくアニメ作品が、ほとんどロボットモノばかりだったことはあったんです。なので、特に1970年代の後半から80年代の前半は、そういう印象をもってしまうことも多かったと思います。
 宮崎駿さんも、『ナウシカ』作っていた当時、「ロボットは出でこないのか?」と言われていたという話も聞きますし、大体、名のあるアニメ作家というのは、ロボットモノに手を出したか「ロボットモノをやらないか?」と言われていました。高畑勲さん以外は、ほぼロボットモノをやっているって印象が、僕にはあるんですけども。
 この「ロボットモノがどれくらいリアルなのか?」ということに関して、僕が「高畑勲が手を出さないくらいだから、リアリティというのをあんまり追求すると、キツイことになる」と考えているというのは、前回の大童さんとの対談の時にも話しました。

 あの宮崎駿ですらも、巨大ロボットモノをやってるんですよ。
 まあ有名なロボットモノといえば、『天空の城ラピュタ』に出てくる「ロボット兵」であるとか、あとはルパンシリーズの最終回の『さらば愛しきルパンよ』に出てくるロボットの「ラムダ」というのがあるんですけども。
 今回ご紹介するのは、これ、僕も見逃していて、みなさんからの感想や意見を書いてもらう掲示板に寄せられた話なんですけど。「『風の谷のナウシカ』に巨大ロボットが出てくる」と言われたんですよ。「本当かな?」と思ったんですけど、本当だったんですよ。
 何かというと、ナウシカの1巻の15ページのこのシーンですね。本当に冒頭の方なんですけども。
(パネルを見せる)
 主人公のナウシカが腐海を探索している最中に、「外から気配がする。音がする」ということで、慌てて何かのドアを蹴破って、レバーとか操縦装置があるところに上がって行き、巨神兵の化石の目玉のところから顔を出すシーンです。
 つまり、ナウシカがいたのは、すでに化石化している大昔の巨神兵の死体の頭蓋骨だということなんですけど。
 他にもいっぱい描いてある巨神兵の頭蓋骨を見てもわかる通り、ここでは、巨神兵の首の後ろの頚椎の辺りに「乗り込み用のドア」があるんです。そして、そのドアを蹴飛ばして開けて中を通ると、ちゃんと操縦用のレバーとかスイッチ類が配置されている。つまり、人が乗り込んで操作するようになっているんですね。
 このナウシカの第1話を描いた頃の宮崎さんの案では、巨神兵というのは「人が乗り込んで操作する巨大ロボット」だったのではないか?
 つまり、「王蟲のような森の中にいる自然の生命と、人間が作ったテクノロジーとの対立が、最終戦争だった」みたいな初期設定で始めてたんだけど、連載を続けるうちに「生命を操作するタブー」というテーマに移ってしまった。その結果、「巨神兵=巨大ロボット」というのも、あっという間に幻の設定になってしまった、と。
 これに関しては、ペジテが巨神兵を復活させる辺りで、もう、頭蓋骨には操縦できそうな部分がなくなっているので、1巻の終わりを描いている時には、宮崎さんの中では、もう、この設定はなくなっちゃったんじゃないかと思います。

 というふうに、宮崎駿ですら、「人が乗って操作する巨大ロボット」を描いている。
 日本のアニメ作家というのは、みんな、ロボットとは無縁ではいられなかったという話ですね。

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