岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/06/28

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今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
DMMオンラインサロンの岡田斗司夫ゼミ室では月に1回オフ会があり、ここで質問や相談を受け付けています。

今日はDMMオンラインサロン【岡田斗司夫ゼミ室通信】から、6月17日公開 特別講義をお届けします。

店に入ってきたハモンの視線に注目


(今までのお話)

まだホワイトベースを家出中のアムロ。
ホワイトベースから持ち出した缶詰食料も底をついたので、酒場で食事をとっている。固いパンと水の食事です。

そこへ13名のジオン兵がぞろぞろ入ってくる。
ぎょっとするアムロ。
初めて間近でジオン兵を見ることになります。


「ハモン様こちらへ」
と言う声に、アムロが「え?」と見てると一人の女の人が入ってきます。

この女の人が、まぁ、めっちゃ優雅にスカーフをはら〜っと取るんですけどね。

ガンダムって基本的に演技で見るもんなんです。

ここで注目すべきは、2コマ目、3コマ目、4コマ目の目線の動きです。

スカーフを取るときに、1コマ目は目を閉じているんですけど、2コマ目で目線は下、3コマ目で目を開けて、ななめ向こうを見てるんです。
で、4コマ目で、目線が下に戻ります。

単に、スカーフを取るのに目をつぶって目を開けただけじゃないんです。
3コマ目だけ、ななめ向こうをじっと見ている。

ハモンさんはスカーフを取ったときに、目を一瞬動かしてちらっとアムロを見る。
で、ハモンさんの視界がぎゅーっとアムロに寄っていって、アムロが「え?なんだろう?」と見返す。

これがもし、単に目をあけただけの演技だったら、1コマ目、2コマ目、3コマ目で終えていいんです。
でも、4コマ目で視線を戻している。
それは、ハモンさんが一瞬アムロをチラ見したというのを表わしたくて、わざわざ入れてるんですね。

じゃあ、ハモンさんは何をチラ見したのか。
これですね

ハモンさんが何を見ていたのかを、演出としては視聴者に印象付けたいから、次にこのシーンがきます。

テーブルの向こうにいるアムロに視線がぐっとより、次にアムロの顔、そして目に、すっと寄っていくのがわかります。

そこにいた汚いなりをしたうらぶれた15才の男の子、誰から見てもただの男の子に、ハモンさんだけは注目したということを表現しています。

(中略)

ハモンはメニューを見て
「何もないのね。できるものを14人分」
と言うと
「なんで14人分なんだ?」
とランバ・ラル。
「1人多いぞ、ハモン」

「あの少年にも同じものを」
とハモン。

ランバ・ラルが「ん?」と言う。

そこでようやっと全員が初めて、アムロの存在に気づくんです。
男の子がカウンターにいて、パンをかじって水を飲んでいるというのは、他の全員にも見えてるはずなんですけど、見てなかった。
ただの子供だから。

(中略)

アムロは、みんなに見られてメッチャ緊張します。

ランバ・ラルが言うように、ハモンはアムロみたいな子どもが欲しかった?

ランバ・ラルが横目でアムロを見て、
「ふふ、あんな子が欲しいのか?」
と尋ねます。

「ふ……そうね」
とハモンは答えます。

これも昔見た時、よくわからなかったシーンです。

(中略)

見てる人間は、セリフ通りに受け取ってしまうからです。

「あんな子がほしいのか?」
と言われた時の、ハモンの顔を見てください。

「ふ……そうね」と言ってから、一回、目線を下にはずします。で、また、ランバ・ラルを見るんですね。

わかりますか?
返事しているとき、ランバ・ラルを見ている。
一回目線をはずす。
また、ランバ・ラルを見る。

なぜ目線をはずすのか?
ウソをついているからですよね。

人間というのは、ウソをつくときに目線をはずします。
特にアニメ的な演技ではそうです。

ランバ・ラルから見たらアムロは子供なんですよ。
だからハモンが男の子を見ていると
(お前、あんな子供が欲しいのか。
 いやぁ、俺、戦争で忙しかったから、お前と子供作る時間もなかったよなぁ。ハモンちゃん、俺にベタぼれだよなぁ)
と考える。
これは本当にそう考えてるんです。

ところがハモンは
(あ、いい男、見つけた!)
と思っている。
だからランバラルに
「あんな子供が欲しいのか?」
と訊かれたときに、
「ふ……そうね。」
と答えながら、一瞬、目線をはずしてしまう。
本心が言えず、ウソを言ったから。

たぶん、ハモンという女は、これまで、よりいい男、より強い男を見つけると、そのたびに乗り換えて乗り換えて生きてきた女なんです。

で、ランバ・ラルと出会って、これがもう最後の男だろうと思ってついてきた。
前線にまで一緒についてきて、部下にも慕われるくらいになっている。
そういう意味で、したたかな女でもあるし、愛情深い女でもあるんですよ

でも、ランバ・ラルより強い男の可能性を見つけたら話は別になっちゃった。

天性のカンで
(この子は、ランバ・ラルより強い男になるかもしれない)
と思ったので、思わずアムロに目線がいっちゃった。

だから、「ふ……そうね」って答えてみたんですけど、一瞬目をそらしてしまったんです。

(第19話「ランバ・ラル特攻!」より)

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