岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/06/27

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/06/10配信「ひとりでもふたりでも楽しめるディズニーランド後編~現在のジャパニメーションの源流はディズニーランドにある!」の内容をご紹介します。
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2018/06/10の内容一覧

DAICON3でディズニーの背中を追い掛けた

 そもそもの話をすると、僕らがアメリカに行った理由は、翌年のSF大会の取材のためなんですよ。
 そして、ディズニーランドを見ていたら、「俺たちが来年やるDAICON3というSF大会は、これに勝たないと意味がない!」って思っちゃったんですよ。
 ボストンのSF大会を見た時は、「うーん、これは難敵だ。しかし、予算があれば。SF作家がいっぱい来れば」とか思えたんですけども。でも、ディズニーランドに勝つのは、メチャメチャ難しいんですよね(笑)。

 ガイナックスのアニメが、『オネアミスの翼』から、『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』に至るまで、とにかく世界観に凝っているのはなぜかというと、すべてあの夜、たった一度だけ行ったアナハイムのディズニーランドのせいなんですよ。
 まあ、「ディズニーランド体験」というよりは、僕にとっては「ディズニーランド・トラウマ」ですよね。
 あのトラウマがあったからこそ「これになんとか勝たなければ、俺達エンターテイメント業には明日はないぜ!」って思うようになったんです。
 だって、SF大会を主催するにしても、その後、東京に行ってアニメを作るにしても、「世の中のすべてのエンターテイメント産業のヤツに勝つ!」というふうに思っているから行くわけで、そういうことを思ってなかったら、大阪で細々と暮らしていりゃいいわけなんですよ(笑)。
 俺たちがわざわざ東京まで行ったのはなぜかといったら、本気で「勝つ!」と思っていたからなんですけども。
 ただ、その戦う相手として目の前に立ちはだかったのが、ディズニーランドだったわけですよ。
 なので、「何十年も前に造られてるというのに、なんだよ、この完成度! 恐ろしい!」というふうに考えました。

 ということで、「ディズニーに勝ちたい!」と思った僕は、1981年に第20回日本SF大会、DAICON3というのをやりました。
 その中で、『DAICON3オープニングアニメ』というアニメを作ったんですけど。……まあ、そこまでだったんですよね。
 ウォルト・ディズニーで例えると、いわば「デビュー作に近い『蒸気船ウィリー』なんとか作りました」と同じ程度。正直、これではディズニーに勝てないって思ったんですよ。

 そして、それから2年後の1983年に「DAICON4」をやると決心した時。
 当時、庵野くんや赤井くんたちは『マクロス』を手伝うために、東京に修行に行ってたんですけども。僕は「売るものはすべてオリジナル商品!」というSFショップを、大阪に開いたんですよ。
 同時に、映画も作りました。『愛国戦隊大日本』というのは、とにかく「自分たちだけで実写映画を作れるのか?」ということで集中して作りました。『帰ってきたウルトラマン』は、「ちゃんとした特撮やセットを使った映画が作れるのか?」というテーマで作りました。
 ここまでやった段階で、「これでようやくウォルト・ディズニーの背中が遥か向こうに見えたかな?」というふうに、その時にはチラッと思えたんです。なので、83年のDAICON4の前年の1982年に、フロリダのディズニーワールドに行ってきたんですね。

(中略)

 フロリダのディズニーワールドには「カルーセル・オブ・プログレス」(進歩の回転木馬)というアトラクションがあったんです。
 僕は、これを見ようと思って見に行ったんですけど、まあ、目立たないアトラクションなんですよ。いまだにフロリダのマジックキングダムにあるんですけども。
 これを見て、僕はものすごい衝撃を受けたんですよね。
 他人に物を伝える時、ある概念を理解させようという時に、このカルーセル・オブ・プログレス以上に面白くてうまい方法を、僕はいまだに思いつかないんです。
 僕は今、この「ニコ生ゼミ」というのを毎週毎週やっているんですけども。僕の中でのテーマは「このカルーセル・オブ・プログレスにどれだけ近づけるか?」ということなんです。
 だから、僕の中で「カルーセル・オブ・プログレスのやり方に、ちょっと近づけた」と思った時には、「ああ、今日はうまくやれた。いい感じに話せた」というふうに思っているんですけども。

 どんなアトラクションなのかというと、「20世紀に住んでいるジョンさん一家が、電気の力で豊かになる」という、それだけの話なんですよ。
(パネルを見せる)
 カルーセル・オブ・プログレスというのは、こういう構造で出来ています。
 舞台が円形になっていて、それぞれ壁に仕切られた1から4までのステージがあるんです。
 お客さんは、その円形の舞台の外側に座るんですよ。で、1つのステージでの出し物が終わる度に、真ん中の円形ステージではなく、周りの観客席自体が90度周って、ステージ2、ステージ3、ステージ4というふうに移動する。
 ステージ1が1901年、20世紀最初の年のバレンタイン。ステージ2が1920年という、第1次大戦が終わった頃の世界になっています。

 第1幕の幕が開くと、1901年のバレンタインのジョン一家の様子が描かれます。
 まだ電気がない世界です。台所には、手押し式の水出しポンプや、石油式のオーブンがあります。
 ジョンはすごく満足そうに、「見てくれ、これを! 20世紀ってすごいよ! とうとう俺の家にも「水道」ができた! もうこれで遠く離れた川まで水を組まなくても、あのポンプをいじるだけで、水がいくらでも出てくるんだ! いやあ、科学っていうのはすごいよな! おまけに、見てくれ! これは最新式の「石炭オーブン」だ! これでおふくろはうまいパイを作ってくれるし、いつでもコーヒーが飲めるぜ!」というようなことを言ってるんですね。

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